青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

養老の 水は美酒にて かぐわしく。

2023年10月30日 17時00分00秒 | 養老鉄道

(威風堂々、養老の「顔」@養老駅)

養老鉄道の「養老」は、当然養老山を中心とした養老山地のこと、そして「養老伝説」で有名な「養老の滝」のこと、そして養老郡養老町のことなのですが、その養老の滝の最寄り駅であるのがこの養老駅。まっこと威風堂々とした木造駅舎。車寄せから母屋に繋がる造りとか、二段に構えた瓦屋根にちょっと猫耳っぽいドーマー窓なんかが付いているところが非常におしゃれ。この日は近くの養老公園で「肉フェス」なんてのがやっておりまして、公園へ向かう観光客でごった返しておりました。養老鉄道も2往復の臨時便とコラボきっぷなんかを発売して集客に努めていましたね。

風格ある養老駅の駅舎。駅名票の揮毫も非常に歴史を感じさせるものがあり。文献ではこの駅と駅舎の開業は大正年間と書いてありますが、岐阜県のHPだとこの駅舎が建設されたのは昭和初期と書いてあったり、その辺りの表記は定まっておりません。まあ、改装も改築もしているのでしょうし、このスタイルに落ち着いたのが昭和初期頃と言うことでいいんじゃあないでしょうか(笑)。

「養老の滝」にまつわる寓話でも出て来るアイテムの「ひょうたん」が吊り下げられたホーム。養老の滝のお話ってのは、お酒の好きな親を大事に真面目に暮らしていた農民の男が、薪を拾いに入った山で足を踏み外し、転げ落ちた先で美酒が滔々と流れる滝を見つけるという親孝行のお話なのだが、そこで男が滝の水を詰めて持ち帰ったのがこの「ひょうたん」なんですね。この話の凄いのは、その話が奈良の都に伝わり時の天皇に届いてしまったこと、このお話にいたく感動した時の天皇(元正天皇)が、男に山ほどの褒美と「それでは元号を霊亀から『養老』にしよう!」と元号まで変えてしまったことにある。そして、その滝は天皇により「養老の滝」と名付けられ、今に至る・・・という、そういうお話。

「肉フェス」臨時電車の養老行きが入線して来た。いつもは使わない3番ホームで大垣方面への折り返し待ち。養老鉄道はサンリオとのキャラクタートレインをよくやるんだけど、現在は「シナモロール」をラッピングした「シナモロールトレイン」が走っている。最近、阪急電車なんかでは「ちいかわ」トレインが超絶大人気らしいですね。大手私鉄はそういう旬のキャラクターを使ってイベント出来るけど、シナモロールって人気あんの? いま、養老鉄道でフリーきっぷを買うとそれもシナモロールなんだけど、いい歳こいたオッサンが持つには少し恥ずかしかったぞ。

「養老」という字面と、ことのほか合わないファンシーなキャラクターのコラボレーション(笑)。キャラクターと一緒に、沿線市町村の名前もアルファベットでプリントされていますね。ラッピング、と言うことになると、コルゲートのある東急7700は視認性的に難があって向かないので、近鉄600系の出番になるようですね。

あ、そうそう、「養老乃瀧」の「養老ビール」って、悪酔いしません??

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養老伊吹を仰ぎ見て。

2023年10月28日 10時00分00秒 | 養老鉄道

(養老線唯一の高架駅@烏江駅)

今回の養老線訪問、午前中は美濃高田周辺を中心に撮影したり、薩摩カイコウズ街道でお肉を買ったりしながらのんびりと。養老線は、基本的に養老山地に沿って西濃の山すそをタテ方向に移動していく路線ですが、美濃高田から烏江にかけて、ここだけ線路が東西に走って光線状態が良かったのと、大きく田園地帯が広がっていてアングルが組みやすかったのでねえ。養老線唯一の高架駅である烏江駅、駅下のパークアンドライド用の駐車場にクルマを止めて、ここからは養老線の電車に乗ってみます。既に全線完乗済みではあるのですが。

結構高い位置にある烏江の駅。濃尾平野の西部は、極めてフラットな低湿地帯平野が延々と続いていて、その中を木曽・揖斐・長良の木曽三川がほぼ併走するような形で伊勢湾に向かって流れています。その揖斐川に流れ込む牧田川と杭瀬川の合流点を、養老線は北から西へ進路を変えながら大きな高架線で越えています。高架化は、牧田川と杭瀬川の堤防の改修工事に伴って行われた線路のかさ上げなんでしょうが、駅の下に河川改修前の牧田川の鉄橋のトラスが残されていて、旧線と新線の高さの違いを実感することが出来ます。烏江駅は大垣市と養老町の境目にあり、海岸線からはおそらく30kmも40kmも離れていると思われますが、標高で言えばたったの3m程度。どんだけまっ平らなんだという濃尾平野なのだけれども、だからこそ伊勢湾台風で大きな被害を受けましたし、太古の昔から、この辺りの暮らしというのは水との闘いの歴史でもあります。

まあそれにしてもこの烏江駅からのパノラマ、周りに何にも高い建物のない田園地帯の高架駅からは、スッコーンと抜けた秋晴れの風景の向こうに、伊吹山地と養老山地の山々の連なりが望める。そして、伊吹養老の両山地の間で落ちくぼんだ境目にあるのが、天下分け目の関ヶ原ということか。・・・なんて遠来の旅の人間は思ってしまうのであるが、近くの高校から部活終わりで戻って来た地元のJKたちは、いつもの風景にはお構いなしにホームで駄弁るのであった。秋だけど、私たちは、いつだってアオハル。

お喋りに興じる地元JKを迎えに来た緑ラインの7700系。2連。養老鉄道は2連と3連の2タイプをごちゃ混ぜにして運用に入れており、両数は一定しません。トップライトで陰影が付いて渋いですね。7700系が走っていた高架駅と言うと大崎広小路って感じかな?

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ミノでアカフクとカイコウス。

2023年10月24日 17時00分00秒 | 養老鉄道

(養老秋の肉祭り@薩摩カイコウズ街道)

海津市(旧南濃町)の駒野から養老町を通り、関ヶ原町へ抜ける県道56号南濃関ヶ原線。鹿児島県と岐阜県が姉妹県になった縁で、鹿児島県の木である「カイコウズ」が街路樹として植えられているため、「薩摩カイコウズ街道」という愛称が付けられている。最初はこの「薩摩」も「カイコウズ」もよく分からなくて、何で岐阜に薩摩が?カイコウズって何?みたいな謎だらけの道だったのだけど、調べてみたら何のことはない理由で。と言うか、この道に関しては愛称の「薩摩カイコウズ街道」よりも、精肉店や焼肉店が立ち並ぶ「養老焼肉街道」として知る人ぞ知る存在なのである。美濃高田駅の北西2km程度、歩くとたぶん30分以上かかると思う。以前養老鉄道に乗りに来た際に、行ってみたかったんだけど少し駅から遠くて行けなかったんだよな。今回はクルマなんで遠慮なく行けたんだけれども。

三連休の初日。好天に恵まれ、どこの焼肉店も朝10時ごろから駐車場が埋まり始め、既に昼のランチの順番待ちが始まっていた。あいにく一人で家族連れだらけの焼肉ランチに並んで2時間も3時間も消費している暇はないのだが、この「焼肉街道」の特徴は、焼肉店と精肉店が併設されている店が多く、お店で焼肉を楽しむことも買って帰って家で楽しむことも出来るというのがありがたい。「岐阜県内で飼育された飛騨牛のほとんどが養老町に届けられ、ここで加工される(養老町産業振興課パンフレットより)」という理由でこの薩摩カイコウズ街道沿いに集まった焼肉・精肉店の並び。見事なサシの入った飛騨牛、さすがに美味そう。そしていいお値段(笑)。ロースのスライスが100g1,500円だが、自分の月給と体重を比べたら、確実に飛騨牛の方が高いのではないかとw

家族へのお土産用に、そこそこいいところの飛騨牛のすき焼き用肉を購入。いい肉を上納して家族を手懐けるのも、次回の遠征へ向けての父親としての嗜みである(笑)。そして自分は牛でも正肉ではなくやっぱりホルモンのほうに足が向いちゃいますねえ・・・いや、お値段もあるけどホルモン美味いっしょ。焼肉屋でもカルビとかロースばっか食ってるヤツは何が楽しくて焼肉食いに来てんだ?って思うもの(暴論)。普段はリーズナブルな豚ホルモンばかり食べているのだけど、折角だからと牛ホルモンを覗いてみたら、タン・ハツ(シンゾウ)・レバーの定番モノに加えてアカフク・ハチノス・ミノ・タテギモ・センマイ・グレンス・・・?さすがにマニアック過ぎて分からん部位もあるのだが、どれも捌きたてで新鮮そうだし、そのマニアックなところが楽しい。全部買って行く訳にもいかんので、タテギモ・ハチノス・アカフクをチョイス。アカフクって何だ?って知らんまま買ったのだが、ようはフワ(肺)のことらしい。船橋競馬の東西商会のフワの煮込み、大好きでしたのでね。しっかり氷を入れたクーラーボックスで持ち帰ります。

戦利品を収めて、ホクホク顔で戻る養老線は薩摩カイコウズ街道の踏切。秋を謳歌するコスモスの花が線路を彩っていました。桑名行きの東急7700系は隈取りがされたいわゆる「歌舞伎」デザインを。コスモスの前ボケでワンカット。実は自分が養老で一番好きなのは緑歌舞伎なんですが、この日は出て来なかったな。西大垣の車庫にもいなかったし、ひょっとしたら全般検査で塩浜とか行っちゃってるのか?

ちなみに帰宅してからタテギモはレバニラ炒め的に、アカフクとハチノスは煮込みにそれぞれ加工して美味しくいただきました。岐阜と三重の県境辺りをウロついて、アカフクを買って帰って来たよ!なんていえば普通の人はあの漉し餡の伊勢名物のアレを想像するのでしょうが、そうはいかないところが何でも食べる悪食のお土産と言うことになりましょうか。

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速いじゃないよ、ウサギだよ。

2023年10月22日 10時00分00秒 | 養老鉄道

(ジャガイモ畑、ウサギは跳ねる@美濃高田~烏江間)

稲作が中心かと思いきや、線路沿いはジャガイモの畑が目立つ養老線沿線。夏場の猛暑が9月以降も長引いたせいで、全般的に野菜の類が異常に高いですよね。そろそろ鍋物も週末のメニューに加わるところで、白菜や長ネギ、ニンジンが肌感覚で通常の1.5倍くらいの値段になっている。もちろん気候だけじゃなく、物流費や小売りにかかる人件費なんかも含めての相対的な値上げが要因なのもあるのでしょうけど。ただ、その中でもジャガイモに関しては比較的値段が安定しているように思う。ジャガイモは野菜・・・と言うよりはどっちかと言うと穀物寄りの食物だと思っているけれども、何にせよこの時代で価格が安定しているというのは素晴らしいことで。

かつて近鉄の南大阪線で走っていた「ラビットカー」。2両編成の両車にモーターを積み、当時としては最新鋭の強力な電気ブレーキを搭載。高加速高減速を両立させた車両です。デビュー当時は近鉄マルーンではなくオレンジに白帯を巻いた独特のカラーリングで走っていたそうで、それだけ近鉄にとっては特別な車両だった、と言うことなのでしょうね。養老鉄道への転換時に、元ラビットカーの6800系の一部が転籍した縁もあり、モ606を含む元ラビットカーの1編成が当時の塗装に復刻され、西濃の街を走っています。優等列車の邪魔にならないように素早く走り、待避駅まで逃げ込むという役割・・・なんて言うと、阪神のジェットカーこと青胴車の5000系なんかが有名ですよね。近鉄のラビットカーも同様の役割を持たされた車両ですが、駅間を飛び跳ねるように駆け回り、巣穴に逃げ込んで特急や急行列車をやり過ごす。そんな姿がウサギのようでもあるから「ラビットカー」なんでしょうか。朝の養老南線運用に入っていたラビットカー、ジャガイモ畑とヒガンバナの咲く土手を横目に、ピョンピョンピョンと駆けて行く。

車体に付けられたこのウサギが駆けて行くようなマーク、なんとも速さを具現化したようなピクトグラムでかっこよい。ちなみに私は「ラビットカー」のことを「Rabbit(=ウサギ)」じゃなくて、「Rapid(=速い)」から長年「ラピッドカー」だと思っていた。確かに車体にプリントされたマークを見ると「Rabbit」。ウサギで正解なのである。「何言うてけつかんねんワレ!ラビットじゃ!ウサギじゃ!」と河内のオッサンに怒られそうだ。まあ、だいたい意味は合ってるんだからいいじゃないですか(笑)。

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親のフトコロ、子の事情。

2023年10月20日 22時00分00秒 | 養老鉄道

(養老耕土を行く@烏江~美濃高田間)

今年は夏が暑かったせいか稲の生育が早く、それでいて9月も暑かったもんだから、あんまり暑い中で実った稲穂をそのままにしておくのも悪くなってしまうという判断からか、どこも稲刈りが早かった。揖斐川の流れによってもたらされた肥沃な耕土によって作られた西濃の田園地帯。最後の稲刈りシーズンに間に合ったようで、半分くらい刈り入れが終わった田園に、乾燥のためかきれいに収穫後の稲が並べられていた。無人のコンバインが置かれた西濃の朝、この三連休で今日はもう半分をやっつける感じのご様子。刈り入れの途中で広大な田園が魅せる一瞬の幾何学アートを横目に、東急生まれの7700系が通り過ぎます。

養老線整備機構によって導入された7700系。3連タイプと2連タイプがそれぞれ3編成ずつ、計15両が養老鉄道で活躍中。大近鉄の旧型車(50年落ち)だけが渋く行ったり来ていた養老線に近鉄じゃない車両が来るのも驚きでしたが、いくら地方私鉄に実績のある東急のステンレス車とはいえ、同じ50年落ちの骨董モノの車両が導入されると報道された時は「マジかよ!」ってひっくり返ってしまったものですが、今やすっかり三岐両県の通勤の足。養老山地の西側の風景にもすっかり馴染んで、これはこれで養老鉄道の車両のバリエーションの一つかな、と好意的に受け入れております。

というか、元々の親玉でもある近鉄電車自体が、特急車はともかく一般車両の新陳代謝がなかなか進まないんですよね。名古屋線や大阪線で、それこそ50年落ちの車両が改造を受けながらでも頑張っている姿を見ると、養老線管理機構が「こりゃいつまで経っても車両回って来んな」と思ったとしても仕方がないところがある。ない袖は振れぬ親のフトコロ、そしてどうにかしたい子の事情は、このような形で決着したのでありますが、いつかまたかつての古巣の近鉄から車両が供給されることがあるとするなら、何が来るのだろう。

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