青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

復旧の 槌音響け 奥会津

2018年06月15日 17時00分00秒 | 只見線

(茜空の宮川橋梁@会津高田~会津本郷間)

奥会津の渓谷に架かる橋とは違って、何の変哲もないガーター橋。南会津に聳える博士山を源流に、会津耕土を潤して流れる宮川。宮川の「宮」とは、会津美里町の鎮守様である伊佐須美神社の事でしょうか。伊佐須美神社と言えばイザナギノミコト・イザナミノミコトをお祀りする、由緒正しき岩代の国の一之宮。茜色の空の下を、若松の街に向かって432D。日の長い時期でも、走行シーンを撮影出来るのはこの列車辺りまででしょうか…


432Dが足早に宮川の鉄橋を渡って行ったと同時に、会津盆地を囲む山々の向こうに日が暮れて行きました。あとは夜に会津川口まで1往復半の運転がありますが、どうしよっかな。どっかの駅でバルブやるのも面白そうだけど、さすがに夜通し走って来ての撮影で少々体は疲れ気味…この優しい夕暮れに感謝して帰るとしましょうか。


去年の年末に、子供と二人で食べに来た芦ノ牧温泉の牛乳屋食堂でささやかに奥会津撮影行の締めを。あん時は列車の時間がなくて死ぬ気で急いで食ったラーメンだったけど、平日の夜の芦ノ牧には人っ子一人おらず。食堂へ入っても一人静かに会津ラーメンを啜る。撮り鉄やってる時間はね、あんまりマトモに食事をすることもないもんだからゆっくりメシを食うのなんか久し振りだよ。幅広のモチモチ麺にすっきり醤油スープがしみじみと美味い。こっから400kmくらい走ってまた帰んなきゃなあ!


暮れて行く会津平を後に。会津はやっぱりもう一つ遠い。真っ暗な会津西街道を下り、鬼怒川を抜け、下道で一生懸命帰りました(笑)。使った有料道路は日光宇都宮道路だけ。おかげで新4号の宇都宮市街のコンビニで力尽きて爆睡してしまった。これならバルブやって寝てから帰ってもあんまり変わんなかったかもしれん。時間の使い方を反省。梅雨前の緑色濃い奥会津、出来れば泊まって二日間くらい愉しみたかったよね。今度は小出側から攻めてみたいところです。


6月15日、このブログがアップされるその日が、只見線の復旧工事の起工式なのだそうです。
錆び付いた駅名標、草生した線路に、車輪の音が響くその日まで。
あの水害から7年。いよいよ復旧の槌音が響く、奥会津の初夏でした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

家路

2018年06月14日 17時00分00秒 | 只見線

(お帰り列車@根岸~新鶴間)

夕方に433D→432Dで走る若松~坂下の機織り運用。時間的にはそれぞれ若松の街からの退勤便と、坂下や高田の街にある高校生の部活帰り便と言った感じでしょうか。キハ40系列ってだいたい行先幕には「普通」だの「快速」だの列車種別しか出さないイメージがありますけど、郡山の只見キハは昔っから律義に行先を出しますよね。「会津坂下」幕は一日一回。鉄道趣味の中も細分化されておりまして、レアな行き先表示を好む向きの方もいらっしゃいますが、そういう方にはたまらない(?)行き先かもしれません。


整然と早苗の並ぶ田んぼと、会津の夕焼け空。スカッと抜けた空じゃないけれど、雲があるのが空に表情がついていい感じ。只見線は、朝の422Dとこの夕方の坂下シャトルだけが4連での運用。家路を急ぐ会津っぽ達の思いを乗せた4つのエンジンが、唸りを上げて佐賀瀬川の築堤を登って行きました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

瑞穂の国を行く

2018年06月13日 17時00分00秒 | 只見線

(磐梯遥か@蓋沼森林公園展望台より)

郷戸から広域農道を抜け、会津盆地に戻って来ました。向かうは盆地を俯瞰する蓋沼森林公園の展望台。会津盆地を囲む山の中腹にある展望台からは、豊饒な瑞穂の国たるニッポンの田園風景を見る事が出来ます。遠く磐梯山を見晴るかす…はずなのですが、この日はかなり霞み気味。しかしながら、麓に広がる会津盆地の田園風景は期待に違わず美しく、水が張られた田んぼが見事なパッチワーク。ただ、もうちょっと見通しが効くのかなと思ったのですが、磐梯方面は意外に手前に森が被るのですね。昔と比べて木が伸びているという事なんでしょうか。


色々と構図を練ったものの、磐梯山アングルはちょい撮りにくいので、足元を狙います。大川の堤防の向こうに広がる若松の市街。眼下に広がるのは、田んぼの条里制ともいうべきシンメトリーの世界。ここからの俯瞰は光線的には午後の方がよく、もう少し遅い時間であればもっと光線が寝て来ていい感じの写真が撮れるのかもしれません。が、一応公園のゲートは17:00に閉鎖しますと書いてあるので、その後の立ち入りはどんなもんなんですかね。


列車は会津平の田園地帯を抜け、会津高田の街へ。田んぼの海に浮かび上がるように連なる家並みは、島のようにも見えまず。現在は会津高田町は周辺の町村と合併して会津美里町を名乗りますが、まさに美里の名に相応しい風景です。ここから見ると、会津盆地の南側を周遊するようにぐるりと回って行く只見線の線形が実に良く分かりますね。これだけの風景が保たれているのも、農家の方々が一つ一つの田んぼをしっかり管理しているからこそ。休耕田がほぼない、というのが素晴らしい。

食糧生産だけでなく、景観の保持者としての農家の方々の働きにも感謝です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

美麗的風景、超国境

2018年06月12日 17時00分00秒 | 只見線

(水際に浮かぶ@会津中川~会津川口間)

只見川に突き出た大志の集落を後に、灌木と水辺の間を緩やかにカーブしていく428D。もう会津川口は指呼の間。そういえば、いつの間にかこのアングルの国道沿いに展望台が出来て、とても撮影がしやすくなっていました。R252はドライブルートとしても非常に素晴らしい道で、何回もドライブしているけど飽きる事はないですね。今回は六十里越を通らなかったんだけど、今度来るときは久々に新潟側から入ってみようかな。


午後の薄日にゆっくりと時が流れる会津川口の駅。この水辺の駅は、列車の駅と言うよりも何となく船着き場と言うか…只見川を周遊しているヒトやモノたちの集積する港のような、そんな雰囲気を感じます。この日は平日だったんでそこそこ人の流れがありましたが、駅に来る人よりは併設された農協でお金を出し入れしている人が圧倒的に多かったのはご愛敬。まあヒト、モノが集まればカネとなるのは経済の流れとしては自明の理である。


会津川口の駅は金山町の観光案内所も兼ねていて、只見線の立派なパンフレットが置かれていた。置かれていた、のだが、日本語版がなくて中国語版と英語版…?聞けば、最近はジャパンツーリズムの一つとして、日本の原風景のような奥会津の景色と、風光明媚な只見線の沿線風景はインバウンド需要が急上昇しているそうだ。


沼沢湖を抜けて、返しの430Dを宮下ダムの旧道から。さっきは天狗岩のスノーシェッドから覗き込んでいた辺りです。森の嵐気と、只見グリーンと言えばいいのか、神秘的な色を湛える水面。連続するロックシェッドを抜けて来るこの感じ、いかにも幽谷の趣があります。


天狗岩では降っていた驟雨も上がり、午後の遅い日差しが三島谷に差し込んで来た。短編成のキハが眩しいほどの緑に囲まれて、宮下ダムの湖面も輝きます。四季折々に美しい景観を見せる只見線の車窓風景ですが、海外勢でも特に中国・台湾・香港からの観光客に人気となっているようです。中華圏のツィッターで只見線の雪景色が紹介されたものが拡散されたらしく、特にネイチャー系に関心のある向きがフツーに一眼担ぎーの、スノーシュー履きーので真冬の一橋俯瞰に臨んだりするようになったそうな。日本勢顔負けやん(笑)。

川口の駅に置いてあった中国版のパンフレットには、「誠激悠加入只見線之旅、邂逅未曾發學的風景」とあります。「只見線の旅に行くと見た事もないような風景に会えますよ」みたいな意味なのかな。外国人に大人気の日光、そして会津西街道から戊辰戦争白虎隊の歴史の街会津若松、そしてもういっちょ足を伸ばして只見線沿線まで、どこまでインバウンド需要を引っ張り込めるか。AIZUマウントエクスプレスが会津川口辺りまで乗り入れれば面白いかもしれないね。昔の名鉄北アルプスの立山直通みたいに。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

驟雨

2018年06月11日 17時00分00秒 | 只見線

(カメレオン・グリーン@会津宮下~早戸間)

濃厚な緑のカラーリングを纏った只見ユネスコエコパークラッピング。圧倒的な緑に支配された深緑の三島谷、只見川も森の色が溶け出したかのような濃厚な緑色をしている。天狗岩のスノーシェッドから睥睨する目くるめくビリジアンの世界、水面と森の境目をヘつりながら走る列車が、その姿を緑に隠して。


午前中は青空が広がっていた奥会津、午後になってにわかに空が掻き曇り、降り出した驟雨が水鏡を乱します。朝とは全く違う表情を見せるしっとりとした第三橋梁の景色、これも三島谷の顔の一つ。この静謐な三島谷の雰囲気を壊さぬように、ゆっくりと宮下ダムを渡り、滝原のトンネルに向かう427D。鞭聲粛々…から始まる頼山陽の詩を思い出してしまいそうな、そんなシチュエーション。ラッピング車両も、しっかり奥会津の風景に溶け込んでいるように思えます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする