(刻まれた年輪@ED452)
三岐鉄道における貨物輸送の重責を担うのが、電気機関車ED45。このED45シリーズは451~459の9両が在籍していますが、何とも雰囲気の良い茶色にイエローベースの帯をキリリと締め、オレンジに塗られた銘板とナンバープレートが車体に施されています。茶色ベースに黄色の帯は何となくカステラ的なカラーリングですが、銘板のオレンジでで三岐カラーをあしらったという事なのかな。三岐鉄道の社紋ってのは、よく見るとひらがなの「き」が三つ丸く合わさったようなデザインになっているのですが、「3つの『き』」=「三岐」っつうダジャレ的なモノになっているんですね(笑)。
ED45はいかにも私鉄らしい40トン級の電機。三岐ではこの機関車を重連総括で運用する事を基本としており、連結されてニコイチで稼働します。オデコの2灯シールドは、兄弟分(?)の秩父のデキによく似たブタ鼻スタイル。デッキに付いた尾灯がカニの目のように赤く縁取られていて、ここが愛嬌かなと。秩父のデキは暑いと前の貫通路を開けて風を通したりしていますが、三岐のデキは貫通路の窓が開閉出来るようになっていて、通風対策もバッチリです。
藤原岳の雄大な姿を見晴るかす東藤原駅のホーム。タキを積み込み線に押し込んで、暫し待機中のデキがホームに据え付けられています。機関士氏と操車係の皆さんが詰所に引き上げた後は、デキの心地よいコンプレッサーの音だけが静かにホームに響いていました。この時間は普通電車も1時間に1本の間隔のため、自分の他に誰もいないホームで古豪の姿を余すことなく堪能。夏の日差しに煌めくデキの黄金のナンバープレートに、歴戦の輝きを見る。
マスコンハンドルがバッグに包まれて丁寧に置かれていたデキ452の運転台。機関車の運転台なんて、飛行機のコックピットのごとく機器類がひしめき合っているのかと思いきや、思った以上にシンプル。ブレーキ弁1つとマスコン1つで2両の電気機関車を総括制御しているんですね・・・このED452・453はED45シリーズの初期ロットで、1954年(昭和29年)の製造。台車こそ東武の電気機関車の廃車発生品に取り換えられてはいるものの、その他の見てくれは往時のまま。ちなみに御年66歳の電気機関車ですが、今でもバリバリの主力機で、後継機の噂は全く聞こえて来ません。運転台周りだけでなく、床下機器や屋根上の設えも簡単に作られていて、全体的に非常にシンプルな作り。シンプルな作りは裏を返せば保守管理の容易さであって、そこが長生きの要因なのかもしれません。
西藤原からやって来た三岐リバイバルと並ぶED452。現在鉄道貨物を続けている私鉄は、貨物専業や一部の臨海鉄道系を除けば実質ここ三岐鉄道と秩父鉄道しかありません。出自は秩父が秩父セメント系、三岐が小野田セメント系と違いますが、今では同じ太平洋セメントのグループに属し、それぞれが相当車歴を重ねたレトロな電気機関車と決して新しくはない貨車で貨物輸送を続けています。いずれ近い将来、どちらの会社もカマか、貨車か、それともその両方が限界を迎える事は想像に難くないんですけど、親会社として今後も鉄道貨物に設備投資を行うつもりがあるのかどうか。企業として、将来的な鉄道貨物の価値をどう見定めているのか、というのは非常に気になるところです。貨物輸送の存廃の是非なんてものは、荷主かつ親会社である同社の意向次第で決定してしまうものであって、旅客のように反対運動がおこる訳でもありませんからねえ。