(車齢は経ても麗しく…@秩父鉄道デキ105型)
またまた秩父にデキ貨物を見に行ってきました。何度かこのブログでも紹介しておりますので詳細は省きますけども、アタクシはこの秩父鉄道におけるデキ貨物ってのが好きなんですよねえ。JRの電気機関車みたいな華やかさはないけども、ちょっとやぼったいスカイブルーの色に塗られたいかにも私鉄らしいD級電機が、地味な鉱石貨車を連ねて黙々と秩父路を走る姿に魅了されます。この日のファーストショットは武川の駅の構内で始動の時を待つデキ105。いかつい台車が特徴の秩父デキシリーズの初期型で、昭和31年製。
武川駅遠望。ここ武川から太平洋セメント熊谷工場のある三ヶ尻駅を通り、熊谷貨物ターミナルへ向かう三ヶ尻線の分岐駅。秩父鉄道は埼玉を東西に走る地方私鉄にしちゃ長い路線ではあるけど、常時貨物が走ってるのは熊タ~武川~武州原谷~影森(三輪鉱山)の約45kmと全体の半分くらい。それにしても普通に訪れただけでこんだけ構内に電気機関車がゴロゴロしている駅と言うのも私鉄ではないだろうなあ。何気ない風景ですけど、めっちゃ贅沢だと思うんよ。
ホキ10000の石炭列車が武川の駅に入って来ました。三ヶ尻の工場でセメントの焼成をするための燃料として川崎は扇町の港から石炭を運んで来ます。JRの機関車が前の晩に熊タまで持って来た20両の貨車を、翌日の午前中に2回に分けて工場へ送り込む仕業です。三ヶ尻の工場へは武川側からしか入れない配線になっているため、熊タ→(三ヶ尻)→武川(機関車付け替え)→三ヶ尻と半往復するのですが、いつものヲキ車と比べて石炭を積んだ大柄なホキ10000の車体は迫力があります。
遠くで電機のホイッスルが何回か聞こえた後、付け替え作業が終了した石炭列車が再び三ヶ尻へ向けて出発。牽引するのは秩父デキ軍団の中でも最新鋭のデキ507(昭和55年製)。秩父の電気機関車と言うのはいつでも整備が行き届いていてキレイにされているのがとても好感が持てるんですけど、特に今回のデキ507のピカピカぶりはこのままお召しでも牽くんですかくらいのきれいさで、順光の朝の光の中でひときわ輝いて見えました。まったくカッコよすぎるぜ!
三ヶ尻線を行くデキ貨物。武川駅手前の大カーブにて。すっかり葉を散らしたニレの大木と、ちょっと乾いた埃っぽい風の中を走る貨物列車。大地の色のなさと、澄み切った青空と言うのは北関東らしい絵なのかなあと。埼玉は北関東じゃねえぞと言う人もいそうですが、個人的な認識としては熊谷より向こうは北関東です(笑)。
武川駅から明戸駅まで歩き、乗り込んだのは元都営三田線の6000型。三田線の6000は国内ではここ秩父と、熊本電気鉄道に譲渡された実績がありますが、一部はインドネシアにも輸出されて第二の人生を送っております。自分の生活圏内で三田線を使う事があまりなかったんで、どちらかと言えば秩父に来てからのほうがこの車両に乗っているような気がするなあ。ちなみに熊電では新車導入で余剰化する銀座線の01系を貰う話が決まったようですね…
乗った寄居行きは小前田で鉱石列車と交換するようなので、1つ手前の永田で下車して貨物を待ちます。デデデデン!デデデデン!と車長の短いヲキ車特有のジョイント音を立てて永田駅の構内を通過する積載の鉱石列車(7104レ)。「場内進行!」という機関士さんの声が聞こえて来そうなアングルでパチリ。
再び電車に乗り込み、次は樋口駅へ。近年投入された元東急の8090系。先ほど乗って来た都営6000と交換です。今でこそ東急は目黒線を介して都営三田線に乗り入れてますけど、都営6000は乗り入れ前に三田線から引退してしまったんで東急線を走る事はなかったんよね。そんな都営6000が、東横の本線筋で活躍していた8090系と秩父で邂逅をしているというのも大げさに言えば運命的な話。樋口駅のホームは、駅ホームに改札口が乗っかっているコンパクトな外観が特徴。
駅から歩いて5分程度の荒川に架かる白鳥橋の上から返空の7005レを。波久礼~樋口にかけては、大きく荒川が蛇行する狭隘な谷に沿って国道140号と秩父鉄道が走っており、車窓風景のよい区間でもあります。色をなくした渓谷に、デキのレトロなスカイブルーが冬枯れの林の中からチラリ、キラリ。
樋口駅からはこれも東急から導入された7800系に乗って波久礼へ。近年秩父鉄道の普通列車は3両ユニットが基本形でしたが、減少する末端区間の乗客や日中のオフピーク時間向けに導入された2両編成のグループ。東急8090系の中間車をサルベージし、田奈の工場でトンテンカンと運転台をくっつけた車両なので、若干前面のデザインにやっつけ感があるのが難ですね(笑)。しかも2両編成の1両電動車にしたら登坂力が下がっちゃって(従来は3両編成の2両電動車)、慌てて粘着力強化のための砂撒き装置を取り付けたりしたらしい。
秩父鉄道を訪れるたびに、何故か立ち寄ってしまう波久礼の駅。羽生から関東平野を延々と走って来た秩父鉄道が、いよいよ秩父盆地を囲む山懐に入って行くあたり。この路線には木造の品の良い駅舎がまだ数多く残っていますけど、その中でもこの波久礼の駅を包む里山の風景と、ほのぼのとした味わいは旅心をかきたてるものがあります。
それと「はぐれ」って語感がなんかいいよね。
都会にはぐれ、人にはぐれ、愛にはぐれ…何だかとっても演歌的。
♪ああ~ 夢はぐれ恋はぐれ~ ってのは堀内孝雄の「恋歌綴り」だったっけか。
とりとめもなく、次回へ続く。