(見上げて桜@甲斐大和駅)
明治36年に中央本線が甲府まで開通する以前は、甲州街道は、笹子側の最後の宿場である黒野田宿から、笹子峠の頂上までを長く険しい山道で越えていました。昔人が苦労に喘いだ郡内と甲州を分かつ笹子峠の下を、長い長い笹子トンネルでくぐり抜けた出口に位置するのが甲斐大和の駅。ここもこの時期、勝沼ぶどう郷ほどではありませんが、駅の周りを桜が彩ります。ホームから見上げると、勝沼と比べてなお標高の高い場所だけに、咲いている桜もあればまだつぼみのものもありますね。列車に一時間程度の余裕があったので、駅の周りで食事でもしようかと思ったのだが、気の利いた店は開いておらず。近くのコンビニで弁当と乾き物を買って、駅のホームで軽く花見酒と洒落込むことに。
ホームは片面式1線・島式2線の2面3線。典型的な中線ありの国鉄型配線の駅。利用者の数は少ないもののダイヤ上は重要な位置を占めており、かなりの数の普通列車がこの駅で特急の通過待ちをします。18きっぷシーズン、高尾から中央東線の普通列車に乗って出掛けると、通過待ちのバカ停ってのはだいたい四方津か甲斐大和か日野春かと相場が決まっている。
甲斐大和という名前になる前は、この駅は初鹿野(はじかの)という名前であった。この付近は、武田一族が織田・徳川連合軍と激戦の末に最後を遂げたと言われる地。初鹿野という名前も、武田氏の家臣を務めた一族の名前であったと聞く。ホームの跨線橋から駅を見守る桜を眺める。跨線橋には、かなり年季の入った「のりば案内」の看板。
人っ子一人いないホームにチャイムが鳴り響いて、特急列車が通過して行った。今や中央東線の車両は、特急がE353系、普通列車が211系に統一されてしまいましたが、少し前まではスーパーあずさのE351系、主にかいじに起用のE257系、増発臨時にトタの189系、普通列車も山スカ115系と長野色の115系がそれぞれ運用を持ち合うなど、バラエティ豊かな布陣が敷かれておりました。あ、ホリデー快速ビューやまなしで入って来るコツの215系とかもありましたねえ。
青空の陽の光、暖かな春の空気を吸い込んで、今や遅しと咲くを待つのは甲斐大和の桜。またぞろこの駅で特急の通過待ちを行うのか、のっそりと中線に211系の普通列車が入線して来ました。およそ10分の通過待ちも、この時期であれば苦にはならずの花見の時間。甲州の入口にて、昼に暫し長閑な時間を過ごすのも、豊かな旅の一ページでありましょう。