青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

黒部、夜更けの大屋根の下で。

2022年03月26日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(黒部の大屋根の下で@電鉄黒部駅)

夜も更け、ネオンの店に酔客の声。
一本、また一本とやって来る、
黒部止まりの終列車。
寒空の下、大屋根に包まれて、 明日の朝まで暫しの憩い。

電鉄黒部の駅の構造は、3面3線という贅沢なもの。そして、ホームを覆う大屋根がシンボル。ホームを覆う大屋根は、滞泊する列車を雪から守るためのスノーシェルター的な意味合いがあるのかもしれない。ただし、終電一本前の電鉄黒部止まりでやって来た60形は、屋根のかかっていない一番駅舎寄りの2番線で滞泊していました。そもそも、一番奥の番線に列車が入る事ってあるんでしたっけね。ホームも狭いですし。

時刻は23:15。この日最後の駅前踏切の音を鳴らして、ゆっくりと気怠く車体を揺らして電鉄黒部駅に入線して来る当駅止まりの止まりの終列車。この日はかぼちゃ京阪。僅かながらの乗客を降ろした後は、乗務員が車内の片付けと翌朝の準備に余念がありません。駅から出て来た乗客も、迎えに来ていた家族の車に乗り込み、何処ともなく消え、この夜更けにカメラを持つだけの私一人、大屋根の前で佇むのみ。

夜更けの黒部。また明日の始発電車で、かたや宇奈月、かたや富山へ。
ふたみに別れ行く朝までの、かりそめの一つ屋根の下。
約一ヶ月半に亘ってお送りして参りました、冬の富山地鉄探訪。これにて大団円。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

立山、雪のカタパルト。

2022年03月24日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(雪のカタパルト@立山駅)

立山名物、ホームに積もった雪の大谷。
乗客の姿さえ見えぬ、夜の立山。
雪に紛れて潜むは、雷鳥のカタパルト。

アルペンルートが閉ざされた冬の立山駅、観光客目当ての旅館やホテル以外には定住している住民は相当に少ないと思われる地域。僅かに鉄道を利用するスキーヤーも引き上げた様子の駅周辺には人の姿は見えず・・・時刻は夜の7時を過ぎ、この時間に鉄道が運ぶ乗客の流動はおそらく皆無に近いものと思われます。それでも、鉄道員は折り返しの準備を時間通りにテキパキと済ませ、電鉄富山行きの運転台に腰を下ろしました。

飛び立つ雷鳥の、一瞬の瞬き。
前照灯が暗闇に輝いて、凍て付く道を照らします。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

寺田、富山の商売栄枯盛衰。

2022年03月22日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(ベンチが語る、お出掛け事情@寺田駅)

寺田の駅、電鉄富山駅方面ホームに置いてある古びたベンチには、富山市内の一番の繁華街、総曲輪にある「大和」の広告が入っている。富山の人に言わせると、やはり「総曲輪の大和」ってのは昔からの伝統ある百貨店でして、 古びたこのベンチも、総曲輪へ出掛けるたくさんの家族連れが行き交う光景を見ていたんでしょう。家族親子が手を繋ぎ、地鉄電車に乗って電鉄富山へ。市内線に乗り継いで、中町の電停から総曲輪のアーケードを歩いて行く。たくさんの買い物、誕生日やクリスマスのプレゼント、デパートのレストランで楽しい食事。そんな昭和のお出掛け事情を思い出す光景。駅のベンチにこんなのが置いてあったら、モチーフにしたくなってしまうのが道理というものでして・・・

夕暮れ迫る寺田の駅。どこの地方都市も駅周辺の繁華街がだんだんと衰退する中で、富山の商圏も速星に出来た「ファボーレ」のような郊外型の大型駐車場完備の複合テナントが商業の新しい中心地に取って代わるようになっています。この辺りをつつくと、どうしても旧市街の空洞化と衰退が・・・というお決まりの都市計画論になってしまうんですけども、いわゆる「ハレの日」の買い物や集まりごとに鉄道が介在する余地って、昔に比べると相当に少なくはなっておるのだろうな。

一枚、また一枚。寺田の駅で、夕暮れ迄の戯曲を奏でてみる。番線を表示する行燈に明かりが灯ると、夜がやって来ます。夕方のラッシュ時は、三方向からひっきりなしに電車が入って来ますが、乗客の出入りは少なく淡々としたもの。列車が通り過ぎた後は、ひとときの静寂に包まれて、そして足元からしんしんと冷えて来る。思わず自動販売機で缶のコーンポタージュを買い、悴む手を温めながらシャッターを切っていた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

立山線、妖艶な夕日に暮れて。

2022年03月20日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(半面光に茜差す@下段駅)

太陽は富山平野の西に傾き、水平線にどんどんと近付いていく。岩峅寺折り返しの17480形、第一次導入された大井町線組ではなく、田園都市線からやって来たサークルKの後期組。このKのマークって何だったんだっけ?確か半蔵門直通は出来ても東武は入線できないとか、なんかそんな意味のマークだったような・・・三面折妻の半面光、 淡い陰影を愛でる。どちらかと言えば、地鉄では被写体としてはノーセンキュー!みたいになっていた東急8590だけど、このカットで、地鉄の東急悪くないじゃん!って初めて思ったかもしれない。光線って大事だ。

富山平野の夕まづめ。 大地に呑まれ消えゆく光が、 振り絞るように劒を染めて。翳りと灯りのコントラスト。とろけるような紅色差すこの日最後の劒の姿。これと合わせるかぼちゃ京阪。ビビッドなボディも、妖艶な劒には流石に負けてしまうか。富山平野に陽が落ちると、辺りを冬らしい冴えた空気が一気に包む。広大な雪の平原も、夜の帳に沈んで行きます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

下段、空と水は碧に染み入り。

2022年03月18日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(雪融け水は、空を映す鏡@下段~釜ヶ淵間)

午后の日射しが、立山連峰に降り注ぐ。
雲間から覗く、山並みの美しさ。
融雪用の水を湛える下段の田んぼ、 空と雪の青さを溶かして。

新塗色が、立山線の冬を行く。 内山で出会った「富山もようトレイン」、電鉄富山から午後は立山線に展開していました。広い広い雪原と赤い列車の取り合わせ。最初見た時は正直「?」ってなったけど、赤を基調とした塗装は目論見通り雪映えして、なかなか良いものです。午後になって雲が取れて来た立山連峰、あともう少しなんだけどなあ。

散居、雪原、斜光を浴びて。こぶのように折り重なる雪原の下に眠る、豊穣の富山の大地。春をまだかと待ち侘びる散居の風景、それでも、都会から来た人間の我儘は、もうちょっと冬のままでいてくれてもいいんじゃない、こんなに美しい冬景色なのだから・・・と思ったりしないでもない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする