tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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田中利典師の「蔵王供正行/第48日 また会う日まで!吉野山」

2024年07月03日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、〈蔵王供正行48日目「たなかりてんと吉野山」〉(師のブログ 2015.6.17 付)。師は25歳から35年間勤務された金峯山寺を離れ、故郷の林南院に戻られた。
※トップ写真は、吉野山の桜(2024.4.5撮影)

吉野時代は、吉野大峯の世界遺産登録を始め、様々な大きな仕事をこなされた。今は修行に打ち込みながら、来し方行く末に思いを馳せている。このお行も残すところあと2日である。なお末尾の画像は、「月刊奈良」2024年7月号に掲載された、師のご講演会(6/9開催)の記事である。では、以下に全文を紹介する。

「たなかりてんと吉野山」
蔵王供正行48日目(6月17日)。晴れ時々曇り。今日の一日。
5時に起床。
5時40分、第95座目蔵王権現供養法修法 於脳天堂
7時、本堂法楽・法華懺法         於本堂 
9時10分、第96座目蔵王権現供養法修法 於脳天堂
10時20分、本堂法楽・例時作法     於本堂
12時半、水行              於風呂場
13時、法楽護摩供修法          於脳天堂
13時45分、法楽勤行          於本堂
参拝者4名。今日は朝カル大阪教室でファンになられた大阪の米山さんと、近鉄の西中さん親子。それから高野山の僧侶Uさんが突然の来山。終わりかけて、予告なしの参拝ラッシュである。

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「たなかりてんと吉野山」
私は吉野山という場所は特別な場所だと思っている。歴史上でも、大海人皇子に始まって、藤原道長、西行、源義経、後醍醐天皇、豊臣秀吉、芭蕉、本居宣長…などなど、枚挙に暇なく、日本史上の希人たちが足跡を残し、日本の歴史の重要な役割を果たしてきた。私は15歳で吉野での僧侶生活に入り、25歳からこの春まで金峯山寺に奉職してきたが、つねに、

「吉野山という場所が日本の歴史の中で重要な意味を持つとすれば、私がこの地でなにかことを行うことが、日本にとっても意味をなすことになる。日本が世界の中で、意味があるとすれば、私が吉野でことをなすことは世界にとっても意味がある。地球が宇宙の中で意味があるとすれば、私が吉野でことをなすことは宇宙全体にとって意味があることである」。

…というまあ、独りよがりと言えば一人よがりなのではあるが、ある種、そういう大きな信念で仕事に関わってきた。いま、山を下りてみて、その思い自体が間違っていたとは思っていない。やってきたこと、成し遂げてきたことを振り返っても、いまなお、その信念は揺らがないが、さてさて、でもこれからの私の信条の持ちどころをどうするか。

もちろん、吉野とは縁が切れたわけではなく、金峯山一山宝勝院住職の立場は変わらないし、6月からは長臈(ちょうろう)職にも就いたから、今までとは少し立場を替えて、寺門の興隆と修験道の発展、吉野の発展にも力を尽くすことにはなる。

ただ、どうやら、もっと、なにか、更なるモノを持たなければならない時を迎えたようだ。まあ、私が思うほどは、吉野山から思ってもらってもいないようだし・・・(^_^;)。ともかく、いよいよあと2日。黙して語らぬ権現様であるが、修行のひとときを過ごす中で、今までを振り返り、未来をさぐる時間を持たせていただいていることは極めて至福だと思っている。感謝あるのみである…。


「月刊奈良」2024年7月号
コメント
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