tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

創業50周年、株式会社櫻井(吉野町)の減圧乾燥無垢材「よし坊」

2023年10月24日 | 林業・割り箸
『ナント経済月報』2023年10月号の「企業訪問レポート」は、〈吉野材を用いた最高品質の無垢材製造を目指して 株式会社櫻井 奈良県吉野郡吉野町〉だった。ここは集成材の大手メーカーとしてよく知られているが、最近は「減圧乾燥」させた無垢材を手がけている。減圧することで沸点が低くなるため、低温での乾燥が可能なのだ。記事全文はこちら(PDF)に掲載されている。リード文には、

株式会社櫻井は、吉野町に本社を置く木材メーカーで、構造用集成材や減圧乾燥無垢材などの製造を手掛けており、日本全国に良質な木材を届けている。同社は仕入先や販売先をはじめとしたステークホルダーとの信頼関係を大切にしながら成長を続け、2023年9月に創業50周年の節目を迎えた。

また、地元である吉野の町と共に発展していきたいという強い思いから、2015年に吉野材を用いた減圧乾燥無垢材「よし坊」の製造を開始し、2022年4月、奈良県内の民間事業者として初めて無垢材での機械等級JAS(日本農林規格)認証を取得した。同社は、これからも良質な木材の提供を通じて、日本の木造建築物の発展や吉野の町の活性化に尽力していく。


話題の「減圧乾燥無垢材」については、『県民だより』2022年7月号でも大きく紹介されていた(PDFは、こちら)。『ナント経済月報』(企業訪問レポート)の〈減圧乾燥無垢材「よし坊」の誕生〉の一節を抜粋すると、


減圧乾燥機と吉野の無垢材。『ナント経済月報』(企業訪問レポート)から拝借した

吉野の本社工場でも2015年から吉野材を用いた減圧乾燥無垢材「よし坊」の製造という新たな挑戦に乗り出した。無垢材は集成材と異なり、1本の木から切り出され、他の素材を貼ったり塗ったりといった加工をしないため、木そのものの美しい木目や目の詰まった年輪、色つやなどが優れているという特長がある。一方で生産コストが高く、乾燥させることが難しいという不利な面もある。

特に吉野材として有名な杉は含水率が高く、心材部と辺材部の含水率の差が大きいため、乾燥させることが困難な材質である。また、無垢材は色つやが重視されるため、ただ乾燥させればよいというわけでなく、色つやを保ったまま乾燥させる技術が求められる。

乾燥の難しい吉野杉を通常の手法で乾燥させると表面が焦げた色合いとなり、見た目が重視される無垢材としては利用価値が下がるが、色つやを残そうとすると乾燥が足りず強度の不足した製品となる。そこで同社は減圧乾燥機を導入し、乾燥機内の圧力を下げて沸点を低くすることによって、より低温での乾燥を可能にした。

乾燥機の操作プログラムの研究開発や実際の乾燥作業など、減圧乾燥無垢材の製造には多大な労力を伴うが、吉野材の魅力を広めていきたいという強い思いから、最高品質を追求するために試行錯誤を重ねながら、不断の努力を続けている。こうした努力が実を結び、2022年4月、一般的に無垢材での取得は難しいとされる機械等級JAS認証を奈良県内の民間事業者として初めて取得した。

機械等級JAS認証という公的な品質保証を得たことで、取引先からも同社製の無垢材はその風合いを残しながら安心して使用できると好評を得ており、まだ発展途上ではあるが、順調に販売実績を伸ばしている。


「企業訪問レポート」の末尾には、櫻井社長のこんなコメントが紹介されていた。

「木材の製造・販売を手掛ける我々の頑張りが、吉野の山を守ることにつながり、これからも山や町と共に成長していきたい。吉野材を使用している旅館などに宿泊した観光客などにもその良さに触れてもらい、世界中に吉野材の魅力を広めていきたい」。

無垢材の「減圧乾燥」という新たな分野にチャレンジされ、機械等級JAS認証をお受けになったとは、素晴らしい。吉野材の新たなマーケットを開拓していただけることを、大いに期待している。

『ナント経済月報』(2023年10月号)の「企業訪問レポート」




『県民だより』(2022年7月号)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

川上村、樹齢100年以上の杉で校舎を建設!

2020年08月31日 | 林業・割り箸
毎日新聞奈良版(2020.8.27付)に「先人のスギ未来へバトン 樹齢105年 校舎用に」という記事が出ていた。川上村は保育園・小学校・中学校の校舎に使う杉を村有林から切り出し、建設の準備を進めているという。しかもこの村有林は、日本が誇る造林王・土倉(どぐら)庄三郎翁が植林したものだというから、スゴい。以下、記事全文を紹介する。
※トップ画像は、川上村が建設を進める義務教育学校のイメージ図

村、24年義務教育学校開校へ 児童・生徒ら伐採見学
川上村は、2024年4月開校を目指す小中一貫の義務教育学校と保育園の校舎・園舎に使う建材の伐採を8月から進めている。26日、村の児童生徒らが同村高原の村有林で、樹齢105年のスギの伐採作業を見学した。高原の村有林は、「日本の造林王」と呼ばれた同村出身の林業家、土倉(どぐら)庄三郎(1840~1917年)が村長時代に植林を進めた人工林。地元の偉人による植樹が100年以上を経て子どもたちの学び舎(や)に生まれ変わる。【萱原健一】

土倉は同村大滝の山林地主の家に生まれ、スギやヒノキを密植して間伐を繰り返し、良材を育てる吉野伝来の造林法を確立した。1900年に村長に就任し、将来の村の財産となるよう高原地区で植樹を進めた。また、自由民権運動を支援して板垣退助(1837~1919年)らと交流し、同志社大や日本女子大の設立資金を出すなど、教育の普及にも尽力した。

村は現在、村立の川上小と川上中を一貫教育にする義務教育学校の建設を進めている。同小の児童が2021年9月に同中内の仮校舎に移った後、同小で22年9月ごろ着工し、新しい校舎・園舎を建てる。村のスギやヒノキをふんだんに使った木造3階建てとする予定。村は既に約2000本の選木を終え、8月から伐採を始めた。

この日、同小の全児童22人と同中の生徒9人が伐採作業を見守った。村の林業従事者が電動のこぎりで太い幹を切り出し、バキバキと大きな音を立てて倒れると、子どもたちは拍手喝采。伐採された2本のスギは高さ約45メートル、幹直径は約50センチ。同小5年の三宅叶恵さん(11)は「こういう作業が昔から続いているのがすごいと思った。木の校舎が楽しみ。村の子どもでよかった」と話した。

村によると、村の人口は減少を続ける一方、15歳までの子どもの人口は57人(2015年)から71人(20年)に増えているという。栗山忠昭村長は、教育・仕事・住まいなどをワンセットにして取り組んできた成果といい、「村は吉野林業と共に発展してきた。先人が何百年にもわたって育んできた歴史が今日、子どもたちに引き継がれる」と話した。


川上村で子どもの人口が増えているというのは、とても良いことだし、子どもたちが村の杉を使った校舎で学べるというのは、郷土愛を育てる絶好の機会である。郷土の偉人・土倉庄三郎のことも強く印象に残ることだろう(土倉はNHKの朝ドラ「あさが来た」にも登場していた)。完成の暁には、ぜひ私も見学させていただこう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イムラが今日から、登美ヶ丘住宅公園にモデルハウスを出展!

2016年03月19日 | 林業・割り箸
昨日(3/18)の奈良新聞に《吉野杉使用の住宅展示 県の制度融資を活用 木造住宅の「イムラ」》という記事が出ていた。吉野材で家を建てる地元ハウスメーカー・株式会社イムラ(奈良市三条大路三丁目2-7-1 代表取締役社長:井村義嗣)が、「ABCハウジング 奈良・登美ヶ丘住宅公園」内にモデルハウス(株式会社イムラ登美ヶ丘展示場)をオープンするのである。同社のニュースリリースによると、
※トップ画像は同社HPから拝借。他の写真は3/5撮影(工事中のため完成部分のみ撮影)


1階から2階を見上げると…

株式会社イムラ 登美ヶ丘に吉野杉を使用した展示場を出展!
~県制度融資「チャレンジ応援資金」を活用した住宅総合展示場への出展は初!~

株式会社イムラが、住宅総合展示場に地元奈良県川上村産の吉野杉をふんだんに使用した展示場を出展します。総合展示場では珍しく、吉野杉を随所に取り入れた展示場になっており、たくさんのお客様に当社の展示場をご覧いただくことで、家づくりで吉野林業再生に取り組むことを目的としています。

また、奈良県制度融資「チャレンジ応援資金(奈良の木利用認定枠)」を活用して、住宅総合展示場内で展示場を建築することは、県内初めてのこととなります。



和室の天井は網代(あじろ)


障子の桟(さん)は、こんなにきれいなデザインだった

1.目的:家づくりで多くの吉野杉を使うことで、吉野林業再生に取り組む。(「500年の吉野林業を住まいづくりで守る!川上村との官民一体の取り組み」のビジネスモデルが2015年度グッドデザイン賞を受賞)
2.日時:プレスプレビュー 平成28年3月18日(金)15:00~ オープン 平成28年3月19日(土) 10:00~
3.場所:ABCハウジング 奈良・登美ヶ丘住宅公園内 株式会社イムラ登美ヶ丘展示場(奈良県奈良市中登美ヶ丘5-14-1)


2階に上がる



4.内容:地元奈良の木(川上村産吉野杉)をふんだんに使った住宅展示場の公開。ゼロエネルギーハウスにも対応できる高性能住宅。延床面積:204.04m2
5.主催:株式会社イムラ
6.これまでの実績・今後の目標 吉野杉を使った家づくりスタート(平成12年)から約700棟の完工。昨年度 年間50棟の完工。今年度目標 年間65棟の完工。今後の目標 年間100棟の完工。



外部の屋根の下にも吉野杉!

なお文中の県制度融資「チャレンジ応援資金」[正式名称:「チャレンジ応援資金(奈良の木利用認定枠)」]については《県制度融資とは、融資条件(融資利率・融資限度額・保証料率など)を県が定め、奈良県信用保証協会が保証を行い、金融機関が融資を行う制度です。「チャレンジ応援資金(奈良の木利用認定枠)」のメニューでは、奈良県内事業所等への奈良県産木材の利用拡大を図り、人の目に触れる機会を増やすため、県内で新築・増改築する事業所等に一定量以上の奈良県産木材を使用し、創業や事業拡大等をする者を対象に、運転資金・設備資金を無利子・無保証料で融資するものです》(同社のニュースリリース)。



ゼロエネルギーハウスとは《高断熱外皮、高性能設備と制御機構等を組み合わせ、住宅の年間の一次エネルギー消費量がゼロとなる住宅のことです》(同)。

株式会社イムラは昨年度、グッドデザイン賞を受賞した。《当社はこれまで、室町時代以来約500年続く「吉野林業」(吉野式の林業施業方式)を家づくりという面から再生しようと、2000年から吉野杉を使った家づくりに特化し、約700棟の「吉野杉の家」を供給しました。この実績を踏まえ、川上村および林業4団体(川上村森林組合・川上郷木材林産協同組合・吉野木材協同組合連合会・川上産吉野材販売促進協同組合)で構成される「吉野かわかみ社中」(2015年6月28日発足)が当社への安定供給支援と連携強化を表明し、官民一体の取り組みへと発展。こうしたビジネスモデルが、2015年度グッドデザイン賞受賞につながりました》(同)。



県(農林部奈良の木ブランド課)は、懸命に「奈良の木」を売り込もうとしているが、奈良県を代表的する木材といえば何といっても「吉野杉」である。イムラはこれに徹底的にこだわり、川上さぷり(川上産吉野材販売促進協同組合)から良材の提供を受けて、ホンモノの吉野杉の家づくりに取り組んでいる。今回のABCハウジングへの出展は、新たな第一歩である。モデルハウスに足を運ぶお客さんは、きっとその素晴らしさを実感されることだろう。

イムラさん、ぜひ「年間100棟」の吉野杉の家をご提供ください!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鳥居由佳さんの「林業キャッツアイ参上」(産経新聞夕刊「談」)

2016年03月15日 | 林業・割り箸
昨日(3/14)から、鳥居由佳さん(川上村地域おこし協力隊員)へのインタビュー記事の連載が始まった。産経新聞夕刊(大阪本社版)の「談」コーナーで、通しタイトルは「林業キャッツアイ参上」、3/18まで5回掲載される。聞き手は同紙の美人記者・石川有紀さんだ。初回の見出しは「美しい海は山がつくる 林業に惹かれ過疎地へ」。少し抜粋すると、
※写真はすべて鳥居さんのFacebookから拝借

―女怪盗が予告状を出して美術品を狙う人気漫画と同じレオタード姿の「林業キャッッアイ」。何者なんでしょう?

自分にできることは「外からの視点で先人が紡いできた吉野杉や林業のすばらしさを広く伝えることだ」と思いました。林業への興味から吉野町に移住した20代の女性デザイナーと出会い、2人で26年10月に林業のPRのために結成しました。



林業に興味を持ってもらうため県内外のイベントで原木から箸をつくるワークショップを開いたり、オリジナルの割りばし販売をしたりしています。

いまは木の家を建てる人が減り、暮らしのなかでも木の製品が少なくなって国産材の消費が減少しています。使用されないから価格が下がります。割に合わないから木を伐採しなくなり、加工業者で必要な木材が足りなくなる悪循環が起きていることも分かってきました。なんとかしたいと思いました。




これは面白い記事になりそうだ。今回の連載に先立ち、鳥居さんはラジオに出演し、石川記者のインタビューに応じた。聞き逃した方は、今もYouTubeで聞ける。連載全体の「あらすじ」のような番組なので、ぜひお聞きいただきたい(約15分)。

お杉を買ったあの鳥居由佳がラジオに出た(ラジオ大阪 2016.3.12)


鳥居さんのことは当ブログで「肉食系川上村地域おこし協力隊女子!」として紹介したし、また南都銀行の「林業・木材産業座談会」にもご登場いただいた。常人の及びもつかないアングルから林業振興をバックアップする「肉食系林業女子」、これからの活動を大いに期待(および心配)しながら注目していきたい。ガンバレ、鳥居さん!


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

奈良の森と木と家のフェスタ(第3回)、好評開催!

2016年02月22日 | 林業・割り箸
2月20日(土)~21日(日)、イオンモール橿原で「第3回 奈良の森と木と家のフェスタ」が開催された。「奈良の木」マーケティング協議会のHPに詳しい情報が出ていた。今朝(2/22)の産経新聞奈良版では「県産木材の良さ触って体感 橿原でフェスタ 子ども向けコーナーも」の見出しで紹介されている。全文を引用すると、





杉や桧(ひのき)などの県産木材に直接触れ、その良さを体感できるイベント「奈良の森と木と家のフェスタ」が21日、橿原市のイオンモール橿原で開かれた。良質な県産の木材について広く知ってもらおうと、県や木材産業、建築業団体などでつくる「『奈良の木』マーケティング協議会」が主催し、今回で3回目。





会場には、県産材を使用した住宅構造模型が展示されたほか、杉材や桧材で作られた積み木や輪投げ、大量のかんなくずが入ったプールが楽しめるコーナーもあり、子供たちはさわやかな木の香りに包まれながら楽しんでいた。父親(37)と訪れた橿原市の久保朋也君(5)は「積み木でたくさん遊んで楽しかった」と笑顔で話していた。




同僚のIくん

私は土曜日(2/20)に訪ねた。ウチの会社も協力していて、Iくんがハッピ姿で忙しく接客していた。子どもは木の感触が大好きだ。以前あるイベントで、吉野杉・吉野ヒノキの白木(しらき=素木)のフローリングを用意し、靴を脱いで上がれるようにしたところ、たくさんの子どもたちが載り、ごろごろと転がって木の感触を楽しんでいて、驚いたことがある。人間は本能的に、木の感触が心地よいことを知っているのである。



木の家を建ててもらうには、木の良さを知っていただくことから始めなければならない。長い道のりではあるが、入口としては、まずこのようなイベントが必要だ。「奈良の木」マーケティング協議会さん、地道でロングランの活動をお願いします!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする