tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

安岡章太郎が逝く

2013年01月31日 | 日々是雑感
 ガラスの靴・悪い仲間 (講談社文芸文庫)
 安岡章太郎
 講談社

第三の新人、安岡章太郎が逝去した。もう92歳になっていたのだ。msn産経ニュース(1/29付)《作家の安岡章太郎さん死去 「第三の新人」、文壇をリード》によると、

「第三の新人」と呼ばれて活動をスタートさせ、戦後の文壇をリードした作家、安岡章太郎(やすおか・しょうたろう)氏が26日午前2時35分、老衰のため東京都の自宅で死去した。92歳だった。葬儀は近親者で済ませた。喪主は妻、光子(みつこ)さん。高知市出身。陸軍獣医の家に生まれた。慶大文学部予科に学び、同人誌に熱中。在学中の昭和19年に召集を受け、旧ソ連国境へ。胸部疾患で入院中、所属部隊がフィリピンに移動、レイテ島で全滅した。戦後、一家は窮乏し、自身も脊椎カリエスにかかるなど闘病を続けた。

 海辺の光景 (新潮文庫)
 安岡章太郎
 新潮社

26年、病床で執筆し「三田文学」に発表した「ガラスの靴」で芥川賞候補。28年、「悪い仲間」「陰気な愉しみ」で芥川賞を受賞した。吉行淳之介さん、遠藤周作さんらと並んで、戦後派に続く「第三の新人」と呼ばれた。軍隊生活の悲惨を描いた「遁走」に続き、母の死と主人公の自立を窮乏の回想に重ねた34年の「海辺(かいへん)の光景」で芸術選奨文部大臣賞と野間文芸賞を受賞。文壇での地位を確立した。

35年、ロックフェラー財団の招きでアメリカ南部に留学し、「アメリカ感情旅行」を発表。独特の目で見た文明批評が評判になった。「幕が下りてから」「走れトマホーク」などを発表した後、51年に日本芸術院会員。自在な語り口の「放屁抄」を経て、土佐の郷士だった安岡家の歴史を描くライフワーク「流離譚(りゅうりたん)」を6年の歳月をかけて完成させ、57年に日本文学大賞を受賞した。以降、同時代と歴史への関心を深め、63年「僕の昭和史」で野間文芸賞、平成3年には「伯父の墓地」で川端康成文学賞を受賞した。晩年になってカトリックに入信し、話題になった。13年、文化功労者。

 アメリカ感情旅行 (岩波新書)
 安岡章太郎
 岩波書店

私はこれまで、安岡章太郎の作品を愛読してきた。第三の新人は軒並み好きだったが、ピカイチが安岡だった。『悪い仲間』『ガラスの靴・愛玩』『海辺の光景』『花祭』『幕が下りてから』などの小説のほか、岩波新書の『アメリカ感情旅行』も、とても興味深く読んだ。独特の皮膚感覚を発揮して作り上げた作品は、私にはピッタリときた。村上春樹も、安岡章太郎を高く評価していて、村上の『若い読者のための短編小説案内』にも安岡作品が登場する 。

別のmsn産経ニュース(1/29付)《「僕は落第生」…挫折感から生まれた文学 病を押して書き続け》によると、

口癖は「僕は落第生」。自らの平凡さや卑小さへの自覚から生まれた滑稽さと深刻さがまじった一連の小説は、世代を超えて読者に読み継がれた。「文学というのは何らかの挫折感から生まれてくるんでね」。父方のルーツを追った大作「流離譚」での日本文学大賞受賞に合わせたインタビューでの言葉が、安岡さんの“原点”を言い表している。

 若い読者のための短編小説案内 (文春文庫)
 村上春樹
 文藝春秋

若き日の挫折体験は、芥川賞受賞作「悪い仲間」などに顕著な対象への低い目線と、老いや病気など人間が避けては通れない問題に向き合う作風をはぐくむ。病の母を看取る息子の心象風景を描く戦後文学の記念碑的作品「海辺の光景」は、母親の病への悲しみが昇華されたものだろう。

「病気のデパート」と自身が振り返るように30代ではリューマチ熱、50代末期からはメニエール病、60代半ばには胆嚢炎から心筋梗塞(こうそく)を併発。晩年のカトリックへの入信は、戦後の屈折を見つめ、描き続けた末の決断だった。文壇の重鎮だったが洒脱(しゃだつ)な語り口で常に周囲をなごませた。湿っぽさの少ない端正な文章は作家の村上春樹さんも敬意を表わすなど、後進にも影響を与えた。


 第三の新人名作選 (講談社文芸文庫)
 安岡章太郎ほか
 講談社

安岡の小説に、自分がナマケモノになったのは、幼少の頃から決まった時間に食事するのではなく、お腹が空いたら食事する習慣だったから、という一節があり、今でもよく思い出す。休日に1人でいる時など、ふと時計を見て「これはいけない。お腹は空いていないが、そろそろ食べなければ…」と自分に言い聞かせている。

それにしても第三の新人は、多くが鬼籍に入った。小島信夫、近藤啓太郎、庄野潤三、遠藤周作、吉行淳之介…。阿川佐和子(私と同年齢)のお父さん・阿川弘之と、曽野綾子のご主人・三浦朱門には、ぜひ頑張って書き続けていただきたい。安岡を偲びつつ、久しぶりに『花祭』でも読み返そう。
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なら瑠璃絵2013は、2月8日(金)~14日(木)まで!(Topic)

2013年01月30日 | お知らせ
今年(2013年)で4回目を迎える「しあわせ回廊 なら瑠璃絵」、2月8日(金)から14日(木)まで、奈良公園周辺で開催される。点灯時間は18:00~21:00である。大阪へ出ると、大阪難波駅(近鉄・阪神)はもちろん、地下鉄にもたくさんのポスターが貼ってあって、今回も盛り上がりが期待される。
近鉄の「イベント&ハイキング情報」によると 

◆瑠璃色の光がしあわせへ誘う◆
~しあわせ回廊~なら瑠璃絵は、早春の2月に奈良を代表する三社寺(春日大社、東大寺、興福寺)を幻想的な「光の回廊」でつなぎ、美しく神秘的な瑠璃絵の世界に皆様を誘います。それぞれの社寺で手を合わせて頂くことでしあわせが訪れ、そして小さな祈りの数々が大きな平和の祈りとなって世界に届くように…。いつまでも瑠璃色の星が美しく輝くようにと願いを込めて実施します。 いにしえの都奈良を訪れる人々の美しい姿を優しい光りでてらします。


今回も様々な関連イベントが催される。公式HPのイベント情報によると、しあわせココアの無料プレゼント(2/8のみ)、三社寺と国立博物館の夜間特別拝観(開館)、トークイベント(鼎談、講演)、夜参り提灯(ガイドツアー)、各種ライブなど。

奈良の深い闇と静けさが体感できるイベントである。多くの方のご参加をお待ちしています!

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なら青丹彩、6月末閉館(2013Topic)

2013年01月29日 | お知らせ
奈良三条通り工房「なら青丹彩(あおにさい)」(奈良市下三条町2番1)の地下1階にある「大和酒 Shop&Bar 酒商のより」の店長さん(店主の奥さんで、ハンドルネームはおたぬき)が1/24(木)、ご自身のブログ「おたぬきの酒壺 with 3時のオヤツ」に、自店がビルからの「立ち退き要求」を受けた旨の記事を掲載され、驚きの声が広がっている。

「6月末に、このビル閉めます」だから、出て行ってくれとの立ち退き要求!! おたぬき、ピーンチ!!! この寒空に、子だぬき抱えてどうしろって言うの!!!! 選択肢は明確に二つ。継続か、撤退か…場所、時間、資金。。。。さて、決断は?

この記事に対して同ブログの読者からは「三条の方ですよね? いい店見つけたと思ったのに残念。是非どこかで続けて下さい」「ピンチはチャンスです! 大きく伸びるときというのは必ず背景にピンチがあるように思います。お気に入りのお店なだけに、良い方向に進むことを祈ってます」という激励コメントが入っていた。翌日(1/25)には「継続で」として、



衝撃の通知から一夜明けて・・・と言うより、通知を受けてから 即 店主に電話し「やるか、辞めるか、どっち?」「やる」… おーい、即答はいいが、実際やるのはおたぬきだろうが…「それなら、まず不動産屋さんに連絡して空き物件当たってもらって」初日は水曜だったから、残念ながら不動産屋さんは休みだった。

一夜明けて…まだ行き先は決まらないものの、早めに税理士さんに免許移転のお願いをした。それから依頼はしないものの、内装、機材の配置等の依頼先を決めておいた。うー、不動産屋さんから連絡はまだ無い。もう本当なら自社ビルにしたいんだが資金も…なあ。どっかにいい物件ありませんか~~~~ぁ


そして1/27(日)の記事「酒蔵見学会のお知らせ」の末尾には

先日よりブログで『追い出し勧告』を受けた由、お知らせしましたら、あちこちより、励ましやお心遣いをいただきました。ありがとうございます。深く感謝し、頑張って行きたいと思います。



「なら青丹彩」とは、こんなビルだ。公式HPのコンセプトによると、

奈良三条通り工房「なら青丹彩」チャレンジショップは、ものづくりに情熱を持った出店者の方が集った施設です。施設の出店者の方は自ら商品を製作し販売を行います。この施設は出店者が将来きちんと自分一人で商売をし、且つ商売人として人として地域のリーダー足りえるスキルを得る為の様々な経験をして頂くいわゆる「実地体験型起業家育成事業」の施設です。

出店者の方が創り出したものは日々の努力の上、能力・資質を向上させ、必ず進歩・進化を遂げておりますので各お店に関心を持って頂ければと存じます。情熱を持った出店者の方が変わっていく様子を温かい目で見守り下さいます事をお願い申し上げます。


意欲的なコンセプトで2010年10月にスタートされたビルだ。地下には「酒商のより」と赤膚焼の「大塩正史 陶房」(製造・販売・実演)、1階には「奈良吉野いしい」(奈良の柿のみを使用したお菓子の販売)、2階には「えのもとおじさん木工教室」、3階には奈良佐保短期大学の「サテライトキャンパス」など、錚錚(そうそう)たるテナントが入居している。3階のイベントスペースでは、私も講演させていただいたことがある。しかし、改めてフロアガイドを見ると空きスペースも多く、不況が長引くなか、運営は難しいのだろうか。おたぬきさんの記事では完全閉鎖なのか、模様替えして再オープンするのかは定かではないが、コンセプトを変えてでも、ぜひ続投していただきたいものである。





今年に入って、1月3日には魚佐旅館が廃業し、20日には奈良ビブレが閉店した。2月28日には、コトモール奈良(東向商店街)の無印良品も撤退する。映画館(シネマデプト友楽)も、とっくになくなった。

中心市街地の活性化が叫ばれている折から、このような状況は何とも寂しい限りである。空洞化の進展に、歯止めはかけられないものだろうか。

※1/31追記
産経新聞奈良版(1/31付)に《「なら青丹彩」6月末閉館 奈良の起業家支援施設 跡地利用は未定》という記事が掲載されました。《平成22年にオープンし、市内の不動産会社「平井不動産」が運営。地上3階、地下1階建てで、店舗用の18区画や事務所、イベントスペースを備えている。オープン当初はカフェや雑貨店などが入居し、にぎわいをみせていた。同社によると、現在は店舗用区画の半数ほどが空いており、採算の見通しが立たず、6月末の閉館を決めたという。跡地利用について、同社の担当者は「何かには使っていきたいが、検討中。公表できる段階ではない」としている》。
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青の洞門(近鉄富雄駅前)

2013年01月28日 | グルメガイド
1/22(火)、妻と富雄の駅前(近鉄奈良線)で食事することにした。良い店を知らないかと、近くで勤務する同僚のTくんに電話すると「青の洞門がお薦めです。安くて美味しくてボリュームたっぷりなので、よく皆でくり出しますよ」との返事だったので、即座に決めた。「家庭料理と酒肴の店 青の洞門」は富雄駅の北口から徒歩1分、昭和レトロの雰囲気が残る「とみお北商店街」の一角にある。
※トップ写真は大分名物「とり天」550円。レモンではなくかぼすが添えてある


これら3枚の写真は、サッポロビールの同店紹介サイトから拝借

ぐるなびによると《青年期まで過ごした豊前市・中津市を想い、屋号は「青の洞門」としました。大分麦焼酎をはじめ芋・米・蕎麦・黒糖・泡盛等を揃えています。大分名物の「とり天」や豊前味噌等、日替わり大皿料理などは手作り・自家製にこだわっています。家族で運営のリーズナブルな家庭料理のお店です。学生さんに「さきいかの天ぷら」大盛りサービス!子供さんへは、1ドリンクサービス!》 。「さきいかの天ぷら」が大盛り!これで食指が動く学生も多いことだろう。





駅からスグのこざっぱりとしたお店である。火曜日なのでお客さんは少なかったが、金曜日などは大混雑するそうだ。ご主人と奥さん、娘さんで営んでおられる。メニューをざっと見ると、九州のものが多い。で、この日は日本酒ではなく焼酎のお湯割りにした。焼酎は九州・沖縄のものが計12種類もある(400円~550円)。紅乙女、久米仙などおなじみのもののほか、アサヒ、超不阿羅王(ちょうふあらおう)、青の洞門など、初めて目にするのものが多い。これが特大の湯飲みに入ってデンと出てくるのが、とても嬉しい。


名物「ふかの干物」(対馬産)。身が厚くて柔らかく、焼酎がすすむ

メニューのおしまいに「青の洞門ブログ 青の洞門草紙」とあり、URLが出ていた。当ブログと同じgooブログである。「私もブログを書いていますよ」と申し上げ、URLを書いた名刺をお渡しすると、娘さんがすぐにパソコンを開かれた。「以前、拝見したことがあります。吉田拓郎の記事でした」とご主人。聞けば私の1つ年上の拓郎世代だった。





自宅でじっくりと「青の洞門草紙」を拝見した。私がブログを始めて(05年11月)ちょうど3年後の2008年11月に、スタートされていた。お店は04年春に開店されたようである。ブログの「自己紹介」には《ゴールの見えたサラリーマン生活を卒業し、飲食の世界に突然転進しました》とある。


とてもヘルシーな「豆腐のステーキ」

スタート当初の記事に、お店の紹介が載っていた。《青の洞門は大分県中津市にある江戸時代に人の手で掘られた人工のトンネルです。今は昔の面影は僅かにしか残っていませんが、実際その前に立つと30年かかって掘られたという歴史の重みを感じます。ここは紅葉で有名な場所でもあり、その時季には多くの観光客で賑わいます。切り立った険しい崖や傍を流れる清流山国川は紅葉に映えて、自然のすばらしさを感じます。実家(福岡県豊前市)が近いこともあり、店をオープンする時に屋号として拝借しました。大分の麦焼酎や大分名物の「とり天」も揃えています》。


大きなカレイがデンと出てきた。肉厚でジューシーだ

記事を繰っていると、拓郎の「ある雨の日の情景」や「祭りのあと」がタイトルになっていたり、平城宮跡へのジョギングや奈良マラソン(フルマラソン)を完走された話が出ていて、親近感を覚える。私のブログのような理屈っぽいものではなく、日常の出来事をさらりとまとめておられ、読むと心がほのぼのとする。「ブログには、人間性が現れるのだな」と思い知った。

ご主人、ブログネタが溜まっていて掲載が遅れ、大変失礼しました。お薦めいただいたふかの干物も、とり天も絶品で、妻も大喜びでした。また帰宅途中にふらりとお邪魔いたします。ぜひ私にも「さきいかの天ぷら」を大盛りにしてください!

〒631-0076 奈良県奈良市富雄北1-3-9(近鉄奈良線富雄駅 東口 徒歩1分)
TEL 0742-41-9845 営業時間 15:00~23:00(ラストオーダー:22:30) 日曜休
(金曜日や、グループで訪れる場合は、予約がお薦め)

※追記(1月31日)
「青の洞門草紙」に当ブログのことを紹介していただき、恐縮しています。《「家庭料理と酒肴の店 青の洞門」の紹介記事が、「tetsudaブログ」に掲載されました。このブログは、奈良の歴史や古くからの行事等が勉強になる本格的なものです。興味のある方は、是非一読されることをお勧めします。tetsudaさんには、青の洞門の良いところばかり紹介頂いて感謝と敬服です。これからも、皆さまに愛される店作りに専念したいと思います。フルマラソンのようにけっして立ち止まらない、末長いお付き合いが出来るお店の営業に努めていきます》。
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市場流通の現状とこれから(講演会)、2月12日(火)開催!(2013Topic)

2013年01月27日 | お知らせ
東京青果株式会社副社長・大井溥之(ひろゆき)氏の講演会が、奈良県新公会堂で開催される(「大和の農業開発大会」の後半部分)。申し込みの締切は2月1日(金)で参加は無料だ。東京青果は、日本で最大の青果卸売会社である。概要を紹介すると、
※トップ写真は農林水産省の広報誌「aff(あふ)12年4月号」より拝借

第46回「大和の農業開発大会」

日時:平成25年2月12日(火)13:30~16:30
場所:奈良県新公会堂 能楽ホール(奈良市春日野町101 TEL:0742-27-2630)

【第1部】
●受付  13時00分~
●開会  13時30分~
●表彰式 奈良県農業賞、奈良県農業青年組織リーダー表彰

【第2部】
●講演会 15時00分~ 
「市場流通の現状とこれから:産地はどう対応すべきか~東京のマーケットで認められるために~」
 講師 東京青果株式会社 副社長 大井溥之(ひろゆき)氏


主催 : 奈良県・奈良県農業振興協議会・奈良県農業推進協議会・奈良県4Hクラブ連絡協議会・奈良県農村生活研究グループ協議会
※お問合わせ/奈良県農林部農業水産振興課総合振興係(0742-27-7431)


大井溥之氏は、農林水産省の「aff(あふ)12年4月号」のインタビュー欄に登場された。

東京都中央卸売市場大田市場内で、青果物やその加工品などの卸売を行っている東京青果株式会社は、青果物の取扱量と取扱総額において全国一の規模を誇る卸売会社である。同社の代表取締役副社長の大井溥之さんは、流通業界における新たな価値の創出やシステムの構築について、シンポジウムや講演会で積極的に提言し、卸売業界の活性化に尽力しているひとりだ。そんな大井さんが、卸売市場の現状や今後の方向性について語ってくれた。

「近年、国内の青果物の生産量は減少傾向にあります。農業就業人口は260万しかいない。しかも専業農家は少なくなっています。生産者が減り、農家の高齢化も顕著です。また高齢化に伴って、生産地の品目も変化しています。消費の動向も大きく変わりました。まず胃袋が小さくなった。つまり少子高齢化が進み、それが消費の減退を招いているということです。若い年齢層では果物離れも進んでいます。」

「消費者はおいしくて安いものを志向するようになり、そこに新鮮でなおかつ安全で健康にいいものという条件も加わりました。一方で簡便化を求め、惣菜や弁当といった中食が人気を集めています。こうしてますます青果物を素材で買うことが少なくなりました。」


このような厳しい状況を、どのようにして乗り越えるか。2010年9月25日に開催された「農業協同組合研究会 第5回現地研究会」で大井氏は《プロダクトアウトからマーケットインへ。生産した農産物を売るという時代は終わり、産地も契約による「納める農業」へと変わる必要がある》と発言されている。

産地と卸が連携し安定供給と適正な価格形成をめざすことが大切だ。卸売市場法の改正で取引自由化が進み競争は激化しているなかで果実の価格をどう上げ農家手取りの最大化を図るのか? その1つが取引方法を増やすことだ。

量販店、卸、産地が相談して数量と価格、納期を決める契約取引にし「納める取引」、「届ける取引」を増やすことで平均販売価格を上げる。卸からすれば従来の仕入れ代行取引から、販売代理型取引への転換ということになる。


結崎ネブカをはじめとする大和野菜、柿、イチゴなど、奈良県が誇る農産物は数多いが、ブランドとして全国展開するためには、やはり東京マーケットで認知される必要がある。東京青果の大井氏の話は、県産品の全国展開に、大きなヒントをいただけることだろう。多くの方にご参加いただきたい。
※お問合わせ・お申込みは、県農林部の農業水産振興課総合振興係(電話 0742-27-7431)へ。


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