tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

興福寺南円堂の藤 of 南都八景

2015年04月30日 | 写真
昨日(4/29)、興福寺南円堂にお参りすると、藤棚の藤が見頃を迎えていて、たくさんの人がシャッターを切っていた。「南円堂の藤」は、南都八景の1つとして知られる。南都八景とは何か。Wikipedia「南都八景」によると、
※写真はすべて、4/29に撮影


藤棚は2つ、南円堂の左右にある。これは向かって右の藤棚。他の写真は全て左の藤棚



南都八景(なんと はっけい)は、奈良市の東大寺・興福寺周辺にみられる優れた風景から、「八景」の様式にならって8つを選んだ風景評価の一つ。佐保川蛍、東大寺鐘、三笠山雪、春日野鹿、南円堂藤、猿沢池月、雲居坂(くもいざか)雨、轟橋(とどろきばし)旅人、の8つをいう。室町時代に京都相国寺鹿苑院の僧、蔭涼軒主が記した 『蔭涼軒日録』寛正6年(1456年)9月26日の条に、蔭涼軒真蘂が将軍足利義政に付き添って春日社に詣でた時の記事として初めて登場する。その後、江戸時代の各種の絵図に南都八景の説明が入っている。



南円堂藤 - 興福寺 (こうふくじ)境内にある重要文化財の南円堂(なんえんどう)の横に藤棚があり、今も藤の花を咲かせる。堂は西国三十三所の九番札所として参詣人が絶えないが、本尊の不空羂索観音は特別な開扉日以外は閉じられている。




しかし奈良市内で現在、最も有名な藤は、春日大社の「砂ずりの藤」である。今朝(4/30)の奈良新聞「風にゆらり、式年造替の春 春日大社フジ見頃」によると、

藤原氏ゆかりの奈良市春日野町の春日大社で、境内のフジが見頃を迎えた。フジは春日大社の社紋でもあり、境内をかれんに彩る。西回廊の慶賀門を入ったところにある樹齢700年以上の「砂ずりの藤」はノダフジ変種といわれ、花房が地面に届くほど長く伸びることからその名がついた。

平年より3日ほど早く今年中頃から開花。今が見頃で「連休いっぱいは楽しめそう」と同大社。同大社では20年に1度社殿などを修理する第60次式年造替(ぞうたい)が本格化しており、修理に先立つ本殿の一般公開が5月31日まで行われている。問い合わせは同大社、電話0742-22-7788。


この連休中は、ぜひ興福寺南円堂と春日大社の藤をご観賞いただきたい。
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NHK Eテレの奈良関連番組 再放送のお知らせ(2015Topic)

2015年04月29日 | お知らせ
奈良好きの皆さん、以下の番組(すべてNHK Eテレ)が再放送されます。見逃された方、放送エリアの関係で視聴できなかった方は、ぜひこの機会にご覧ください。
※トップ写真は田中利典師(「こころの時代」)。師のブログ「山人のあるがままに」から拝借

1.「能 春日龍神 KASUGA RYUJIN ~幽玄×デジタル~」
[チャンネル] Eテレ
[再放送日時] 2015年5月3日(日)午後3:00~午後3:45(45分)
能楽発祥の地とされる奈良で、最新デジタル技術を組み合わせて“幽玄の世界”を映像化。演目は奈良・春日野にまつわる「春日龍神」。伝統芸能の新しい鑑賞体験を提供します。より詳しい内容は、こちら

2.「こころの時代~宗教・人生~『花に祈る 山に祈る』」
[チャンネル] Eテレ
[再放送日時] 2015年5月2日(土)午後1:00~午後2:00(60分)
「吉野の桜は仏の慈悲の象徴。自然の中に生かされていることを忘れないで」と語る田中利典さんは金峯山寺の修験僧。吉野の山を駆け巡る厳しい修行で開けた祈りの世界とは?より詳しい情報は、こちら

3.趣味ドキッ!火曜放送シリーズ第5回「東大寺・金剛力士像」
[チャンネル] Eテレ
[再放送日時] 2015年5月5日(火)午前11:30~11:55(25分)
圧倒的な迫力に満ちた東大寺南大門の金剛力士像。筋骨隆々、独特の決めポーズから覇気が沸き立つ。その肉体美は、どのように生み出されたのか。天才仏師、運慶・快慶による高さ8mに及ぶ巨像には、「南都焼き討ち」からの復興への強い願いがあふれている。また興福寺北円堂の弥勒如来と無著・世親像にも出会う。より詳しい情報は、こちら

奈良とは直接関係ありませんが、興味深い番組が再放送されますので、あわせてお知らせします。青木新門さんの著書『納棺夫日記』をもとに、映画「おくりびと」が制作されました。初回放送は、2014年7月13日でした。

4.「こころの時代~宗教・人生~ アンコール『生死を生きる』」
[チャンネル] Eテレ
[再放送日時] 2015年5月3日(日)午前5:00~6:00(60分)
青木新門さんは遺体を棺に納める「納棺夫」として3千もの死を見つめてきた。生と死が交差する現場で青木さんが実感した新たな人生とは。より詳しい情報は、こちら

ゴールデンウィークも、ウチのテレビ(ビデオデッキ)は大忙しです。行楽のシーズン、皆さんもタイマー録画をお忘れなく!
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奈良県立美術館で、無料講演会「飛鳥の不思議な石造物」を4/29(水)開催!(2015Topic)

2015年04月28日 | お知らせ
現在、奈良県立美術館では特別展「狩野芳崖・横山大観・菱田春草… 奈良礼賛 ~岡倉天心、フェノロサが愛した近代美術と奈良の美~」を開催中です(5月24日まで)。この期間中、NPO法人「奈良まほろばソムソリエの会」は、1階ギャラリーで、これまでの活動状況の写真展示と、奈良検定クイズ大会(土日祝に1日2回程度)を開催するとともに、1階レクチャールームで無料の講演会(約1時間)を実施しています。
※写真は前川光正さんの講演風景。「楽・元気プラザ」(近鉄学園前駅の駅前)で3/22撮影。

明日の4月29日(水・祝)は、午後2時から「飛鳥の不思議な石造物」の演題で、奈良まほろばソムリエの前川光正(まえかわ・みつまさ)さんが講演します。内容は《奈良まほろばソムリエとして、また明日香村の村民として、亀石、猿石、酒船石、須弥山石はじめ斉明天皇の時代に造られたといわれる不思議な石造物の数々と、明日香村のおすすめめ探訪スポットを紹介します》。講演の参加と1階ギャラリーの観覧、クイズ大会への参加は無料です(観覧券なしでご入場できます)。4/29以降の予定をチラシから拾いますと、



奈良の歴史・文化に関する特別講演(各1時間)
1階入口横の「レクチャールーム」で 奈良のエキスパートが講演!
無料・予約不要。下記時間にお越しください!所要時間:約1時間(観覧券不要)

5月 2日(土) PM3:30~ 雑賀耕三郎    十一面観音菩薩と聖林寺
5月 3日(日) PM2:00~ 大山 恵功   奈良県の世界遺産
5月 4日(月) PM2:00~ 石田 一雄   奈良公園・ならまちの魅力
5月 6日(水) PM2:00~ 大山 恵功   奈良県の世界遺産
5月17日(日) PM2:00~ 石田 一雄   奈良公園・ならまちの魅力
5月23日(土) PM3:30~ 岡田 充弘   日本の国のはじまり 奈良



NPO法人奈良まほろばソムリエの会に所属する奈良の歴史・文化に関するエキスパートである「奈良まほろばソムリエ」(※)が、分かりやすい語り口で、奥深い奈良の魅力を紹介します。参加は無料で、お申し込みも不要です。観覧の合間に、ぜひ1階「レクチャールーム」をお訪ねください!

※「奈良まほろばソムリエ」とは
奈良のご当地検定「奈良まほろばソムリエ検定」の最上級資格「奈良まほろばソムリエ」の有資格者です。うち約7割の約300人がNPO法人奈良まほろばソムリエの会に所属し、観光ガイド、セミナー講師、バスツアーの企画、文化財の保存・継承などの活動を行っています。


このゴールデンウィークは、恒例の平城京天平祭(5/3~5)のほか、奈良公園周辺でも春日大社の本殿特別公開、史跡頭塔・不空院・珹寺などの特別御開帳など、たくさんの催しが開催されます。ぜひ、奈良県立美術館の楽しい催しにも、ご参加ください!
コメント (4)
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まほろばソムリエの深イイ奈良講座in東京「春日大社と式年御造替」は5月11日(月)!(2015Topic)

2015年04月27日 | お知らせ
東京・日本橋三越前の「奈良まほろば館」で開催し、毎回ご好評いただいている「まほろばソムリエの深イイ奈良講座」、記念すべき第10回は、とてもタイムリーな「春日大社と式年御造替」の演題で、5月11日(月)に開催します。講師は、NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」の徳南毅一(とくなん・きいち)さん。徳南さんは、中小企業診断士・社会保険労務士。同館のHPによりますと、
※当記事の写真は、すべて「楽・元気プラザ」(近鉄学園前駅の駅前)で3/22に撮影

まほろばソムリエの深イイ奈良講座
平成27年5月11日(月) 11時00分~12時30分

NPO法人奈良まほろばソムリエの会より講師にお出でいただき、奈良の魅力を色々な切り口で楽しく語っていただきます。20年に一度行われる春日大社の式年ご造替を祝し、奈良の歴史と文化のすばらしさを語ります。「春日大社の縁起」「式年ご造替の行事」「神が伝える共生の心」「日本人と神」「春日大社と藤原氏」などについて紹介します。



1.日時・演題
  平成27年5月11日(月)  11時00分~(1時間半程度)
  「春日大社と式年ご造替」
2.講師 徳南 毅一 氏 NPO法人奈良まほろばソムリエの会会員
  中小企業診断士 社会保険労務士
3.会  場 奈良まほろば館2階
4.資料代等 500円(※当日受付にて申し受けます)
5.定  員 70名(先着順)



6.申込方法
 ・ハガキまたはFAX 必要事項(講演名・講演日・住所・氏名(ふりがな)・電話番号・
年齢)を明記いただき、奈良まほろば館までお送りください。
 ・ホームページ 「申込フォーム」からお申し込みください。
お問い合わせ先 奈良まほろば館 【開館時間】10:30~19:00
 〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-6-2 奈良まほろば館2F
 電話03-3516-3931 / FAX03-3516-3932
※聴講券等の発行はいたしません。定員に達し、お断りする場合のみご連絡いたします。キャンセルされる場合は事前にお知らせください。


徳南さんはこの日に備えて、春日大社の「仮殿遷座祭(かりでんせんざさい)」(下遷宮[げせんぐう])にも参列されました。神社建築を説明するための模型も手作りされ、準備は万端です。東京の皆さん。これは見逃せませんよ。ぜひご参加くださ~い!
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県民の自虐思考を廃す 観光地奈良の勝ち残り戦略(90)

2015年04月26日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
 別冊歴史読本 奈良歴史読本
 『歴史読本』編集部
 KADOKAWA

とんでもないテレビ番組が放送されたと思ったら、それが週刊東洋経済のWebサイトに飛び火した。テレビだと消えていくが、Webに転載されると消えずに拡散されるし、載ったのが経済専門誌のサイトなので、いくら中身がデタラメでも信憑性を帯びてしまう。これは早いめに正しておかねば…、というわけで90回目の「観光地奈良の勝ち残り戦略」で、この話題を取り上げる。

きっかけは、当ブログの「再検証!暗~い奈良の夜 花街で照らせ」に寄せられた「よそもん」さんのコメント(3月9日)だった。

TBSの番組『世にも不思議なランキング なんで?なんで?なんで?』の中で奈良が「日本一ホテルが少ない町」と取り上げられ、前半が偏った放送内容になっていました。例えば、奈良公園周辺は3~4時間あれば名所巡りが可能、週末の夜8時、近鉄奈良駅周辺(もちいどのセンター街、下御門商店街など)は観光地なのに店が早く閉まる、食べる店が少ない、(鹿がいるので夜は)人があまりいない所には観光客は行かない方がいい、映画館の数が奈良市は0軒 などと取り上げられ、今回は商店街の関係者や県民自ら大仏商法などと発言していることが問題だと感じました。

「奈良公園周辺は3~4時間あれば名所巡りが可能」という誤解は、どうやら蔓延しているようだ。先日(4/21)も私が午後2時過ぎに近鉄奈良駅構内の観光案内所に立ち寄ると、初老の男性が「朝から奈良公園に行ったがもう皆、見てしまった。他に見どころはないの?なければ京都へ帰ろうと思って」と言っていた。アクセントは関西弁ではないので、京都を拠点にして観光しているのだろう。「春日大社、興福寺、東大寺だけでまる1日かかるというのに、この人は一体どこを見てきたのだろう」と、疑問に思った。

「映画館の数が奈良市は0軒」は単純ミスだし(高の原イオンの奈良市側に「ワーナー・マイカル・シネマズ高の原」がある)、「(鹿がいるので夜は)人があまりいない所には観光客は行かない方がいい」は、言語道断だ。夜は鹿が人を襲うとでもいうのか?! 鹿は、夜は寝ているのだ。「日本一ホテルが少ない町」は、噴飯ものだ。全国の市町村では「ホテルのない町」の方が多いはず。このような雑駁な報道の仕方が、そもそも問題だ。

この番組は関西でも4月4日に放送されたそうだ。そればかりか同番組の取材班が、東洋経済ONLINE(4/23付)にこんな記事を書いたと金田充史さんから教えていただいた。全文は当記事の末尾に転載しておくとして、先に私が気になった部分を取り上げてみる。

●現地で外国人観光客にインタビューした。「あなたの宿泊地は?」 すると口々に出てきたのが大阪、京都。お隣の観光地の名前だ。なんと奈良に泊まる外国人観光客は約1割だった。ランキングを裏付けるような結果が、さっそく立証された。では、なぜ奈良に泊まらないのか?理由として考えられるのは、観光地の集積だ。奈良市の場合、狭いエリアに見所が固まっており、奈良公園周辺なら3~4時間もあれば回れるし、半日かければ市内の多くの名所を満喫できてしまう。「あくまで奈良はおまけ」。もっと見る場所の多い京都や大阪に滞在拠点を置くというのだ。

この記事では、冒頭に国宝建造物の数が日本一、世界遺産の数も日本一、と思い切り持ち上げておいて、そのあとに「半日かければ市内の多くの名所を満喫できてしまう」と矛盾したことを堂々と書いている。奈良市内には春日大社、興福寺、東大寺などの奈良公園エリアに加え、奈良町、新薬師寺、平城宮跡、薬師寺、唐招提寺…と、見どころが満載だ。これをどうやって半日で回るというのか。

以前、産経新聞が「奈良は外国のガイドブックには『3時間で十分』と書かれ、通過する観光地になっている」と報じたので、「暗~い奈良の夜 花街で照らせ(産経新聞夕刊)を考える」というブログ記事で反論した。結局、今日になってもそのような「外国のガイドブック」は見つからず、それどころか最も広く読まれている『lonely planet』(ロンリー・プラネット)を開くと、真逆のことが書かれていた。

《Nara's best feature is its small size: it's quite possible to pack the most worthwhile sight into one full day.》《Of course, it's preferable to spend two days here if you can. 》(奈良市の最も素晴らしい特徴は、そのサイズが小さいこと。最も価値のある観光地を、まる1日にまとめることができる。(中略) 可能であれば2日間を費やすことが、もちろん望ましい)(2011年版)。3時間どころか、まる1日から2日間の滞在が推奨されていたのだ。

●奈良に滞在客が少ない理由(1)早すぎる店じまい!お客さん待ちの“大仏商法”
近鉄奈良駅の周辺は、商店街が充実しており、お土産目当ての観光客や、地元の買い物客で連日大賑わい。しかし、夜7時をすぎたあたりから様子は一変。次々とシャッターを閉めるお店が。8時にもなると、商店街のほとんどが店じまいしてしまうのである。


これが間違いだということは、「再検証!暗~い奈良の夜 花街で照らせ」で検証した。近鉄奈良駅前の東向商店街の飲食店40店中、午後8時までに閉まる店は7店だけ(7店の内訳は喫茶店が4店、うどん屋が3店)。他の飲食店は煌々(こうこう)と灯りがついている。

 近鉄奈良線 街と駅の1世紀
 藤原浩
 彩流社

●奈良に滞在客が少ない理由(2)奈良にうまいものなし!?頼みの名産品も…
地元民が口をそろえるのが「奈良にうまいものなし」という自虐。実際に、奈良の飲食店数は全国39位。居酒屋登録数ランキングでも、全国43位と、笑ってはいられない状況である。さらに関西のご当地グルメ雑誌を調査してみたが奈良の紹介ページは、ごくわずかだった。この原因について、奈良では、かつて都が奈良から京都に移った際、うまいものも根こそぎ持っていかれた、なんてまことしやかにつぶやかれているのだが、真偽のほどは謎のままである。


「都が奈良から京都に移った際、うまいものも根こそぎ持っていかれた」など、聞いたことがない。誹謗中傷のたぐいであろう。奈良県は県外就業率(県外で働く人)の数が約3割で全国一だ。しかもその8割以上が大阪府で働いている。もともと奈良県民は堅実で、あまり外食しない(家でご馳走を食べる)ので飲食店が流行らない。また大阪で働くサラリーマンやOLは、大阪で飲み食いして帰る。そのような理由で飲食店の数が少ないのだ。飲食店の絶対数が少ないから「グルメ雑誌を調査してみたが奈良の紹介ページは、ごくわずかだった」となるだけである。なお「飲食店の数が少ない」ことと「うまいものがない」は、論理的に結びつかない。奈良に美味しいものは、たくさんある。

●奈良に滞在客が少ない理由(3)建造物の高さ制限に加え、遺跡出土でホテル建設が進まない
少ないとはいえ、奈良に宿泊施設があるのは事実。実際のところ、ホテル経営は大丈夫なのか?余計なお世話だとは知りつつ、市内にある某ホテルを取材させてもらった。取材は2月だったが、なんと全175室の内、空室が135。さらに厳しいときは、空室155という日もあったとか。

テレビではこのホテルがJR奈良駅前のビジネスホテル「サンホテル奈良」であると紹介されていたそうだ。「空室が135。さらに厳しいときは、空室155という日もあった」とはにわかには信じがたい話だ。しかし、よく読むと「取材は2月」とあるだけで「2月の1ヵ月平均」とは書いていない。2月は観光閑散期なので、そんな日もあったのだろう。他のホテル関係者によると「年明けから外国人観光客が増加し、客室稼働率は高止まりしている」という話だ。

また高さ制限や発掘調査(施主が負担)はその通りだが、この「高さ制限」を緩和してしまうと景観が損なわれる(逆に観光客が来なくなる)し、ホテルではなく「高層マンションの建設ラッシュになる」と懸念する声もあるから、単純な話ではない。

以上、ざっと気のついた点を指摘したが、気になるのは「よそもん」さんの「今回は商店街の関係者や県民自ら大仏商法などと発言していることが問題だと感じました」および東洋経済記事の「地元民が口をそろえるのが『奈良にうまいものなし』という自虐」というくだりだ。私はいつも「奈良県民は、自虐思考を捨てよう」と申し上げているが、なかなか改まっていないようだ。

しかも地元で飲食する機会が少ないから、いまだに店が早く閉まると誤解しているし、地元のことをよく知らない人が多いから(「お水取り」に行ったことのない奈良市民がたくさんいる)、「奈良公園周辺なら3~4時間もあれば回れるし、半日かければ市内の多くの名所を満喫できてしまう」と言われてもマトモに反論できない。それを良いことにテレビやWebサイトがツッコミを入れ、煽(あお)る、という悪循環である。

この悪循環を断ち切るためには、県民がもっと地元のことを知らなければいけないし、誤解・曲解には堂々と反論すべきである。故河合隼雄氏曰く「大仏よ、立ち上がれ!」。

【4/27 追記】
私のFacebookにたくさんの応援コメントをいただいたので、以下に抜粋します。

Mさん 産経新聞の記事然り、彼らは扇情的で視聴者が振り向いてくれることしか頭にありません。彼らの正義・真実とは視聴率であり、世間が目をむけてくれることなんですから。その論理に従って都合の良い情報源を取捨選択しているだけです。それもできるだけ手間をかけず安易な方法で、そんなやからに乗ってさわぐのは彼らの思うツボ。tetsudaさんのいわれるように奈良に住んでいる人たちが立ち上がるしかないと思います。

Sさん 先月、京都のゲストハウスの居間で出会った台湾人の女の子が、関西をいろいろ巡ったなかで、鹿がいる春日大社の風景が一番印象に残り、忘れられないといって、絵の具で一生懸命鹿の絵を描いてました。決めつけた評価をしないでほしいですね

【4/27 追記】
私がシェアした東洋経済のFacebookにも、たくさんのコメントをいただいたので、以下に抜粋します。

Jさん ビジネス客が少ないせいもあるのでは。宿泊地を中和や南和にするよう誘導するアピールも必要と思います。南部地域の魅力を県北部の人にアピールしてクチコミを拡げることもいいかも。

Mさん 今のままが良い。外から奈良を見ると良い。このまま何百年と変わらないで欲しい。それが古都奈良の魅力。

Jさん 「空いている奈良」というのも奈良の魅力の一つでしょう。2月の奈良公園はすがすがしい空気に包まれています。高畑町界隈を散歩して志賀直哉邸あたりを散歩してみる。鹿寄せのホルンが鳴り響くのもこの季節じゃなかったですか。私は混雑したところが嫌いです。都会の喧騒に嫌気がさしたときに、奈良のホテルや旅館に予約の電話をすると「空いてますよ」とすぐ答えが返ってくる。町家民宿や農家民宿も頼みやすくしておけば、そういう利用も増えるのでは。そうなれば、奈良町の朝食屋や夕食屋も繁盛する。人が来過ぎない奈良がいちばんの魅力です。爆買いなんてしてほしくないです。

では最後に「東洋経済ONLINE」の記事全文を紹介する。

 芸妓 菊乃のかわいい奈良 (コンペイトウ書房)
 菊乃
 実業之日本社

観光名所・奈良のホテル数が全国最下位の謎
あの大仏でも宿泊客を引きとめられない?

TBSテレビ『世にも不思議なランキング なんで?なんで?なんで?』取材班

世の中にあふれるさまざまな統計やデータ。これをもとにしていろいろなランキングが作られるワケだが、中にはなぜそうなるのかの理由が、すぐにはわからないような“世にも不思議なランキング”がある。TBSテレビ『世にも不思議なランキング なんで?なんで?なんで?』(次回は4月27日よる8時~)は、そんなランキングデータの謎を解き明かす番組だ。「なんで△△が○位にランクインしているのか?」。その裏側を探ると、驚きの事実が次々に明らかになってくる。まずは、取材班が直面したこのランキングをご覧いただきたい。

■宿泊施設の客室数ランキング(都道府県別)
1位 東京都 14万2065室
2位 北海道 11万1005室
3位 大阪府 7万6311室
   :
45位 徳島県 9947室
46位 佐賀県 9922室
47位 奈良県 9055室
(出所)2013年厚生労働省衛生行政報告例

えっ!? 日本を代表する観光地・奈良がホテルの数、全国最下位!?「奈良の大仏」はあまりにも有名だし、東大寺や法隆寺など、国宝の建造物の数は、京都を抑えて全国1位。さらに日本における都道府県別、世界遺産の数もまた、日本一なのに……。実際、奈良を訪れる人は年間約3500万人に上る。修学旅行生は全国各地から集まるし、世界各国から観光客が日本文化を堪能しようと奈良にやってくる。これほど多くの人が訪れるのだから宿も繁盛するはず。なのに奈良のホテルの数が、全国で最も少ないとはいったいどういうことなのか。

「ついでに」「日帰りで」来れちゃう奈良
取材班はさっそく奈良を訪れ、現地で外国人観光客にインタビューした。「あなたの宿泊地は?」 すると口々に出てきたのが大阪、京都。お隣の観光地の名前だ。なんと奈良に泊まる外国人観光客は約1割だった。ランキングを裏付けるような結果が、さっそく立証された。

では、なぜ奈良に泊まらないのか?理由として考えられるのは、観光地の集積だ。奈良市の場合、狭いエリアに見所が固まっており、奈良公園周辺なら3~4時間もあれば回れるし、半日かければ市内の多くの名所を満喫できてしまう。「あくまで奈良はおまけ」。もっと見る場所の多い京都や大阪に滞在拠点を置くというのだ。

日本人観光客の場合は、また別の理由がある。話を聞くと、なんと多くの人が日帰り旅行だったのである。奈良には大阪、京都、兵庫などの近畿エリアからの観光客が多い。日帰りが多く、そもそも泊まる必要がない。実に奈良を訪れる観光客の8割近くが日帰り客だった。

■奈良の観光 出発地ランキング
 <2013年 奈良県観光局>
1位 近畿圏 79.2%(京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山)
2位 中部圏 12.2%(静岡 愛知 三重 その他中部)
3位 東京圏  6.4%(東京 神奈川 埼玉 千葉)

とはいえ、ホテルの数が全国最下位とはあまりにも極端ではないか。日本人だけならまだしも、はるばる海外からやってきた外国人は滞在してもいいではないか。そこで取材班がさらに調査を進めると、奈良の観光地としての致命的な3つのポイントを発見した。

奈良に滞在客が少ない3つの理由
■奈良に滞在客が少ない理由①
早すぎる店じまい!お客さん待ちの“大仏商法”
近鉄奈良駅の周辺は、商店街が充実しており、お土産目当ての観光客や、地元の買い物客で連日大賑わい。しかし、夜7時をすぎたあたりから様子は一変。次々とシャッターを閉めるお店が。8時にもなると、商店街のほとんどが店じまいしてしまうのである。お隣の観光地や大阪、京都だったらこうはいくまい。

なぜなのか?お店の人々に話を聞いてみると、気になるワードが飛び出してきた。それが「大仏商法」だ。デジタル大辞泉によれば「奈良の大仏に参詣する客が立ち寄るのを待つだけで、進んで客を集める努力をしない奈良商人の消極性をいう語」。そう。つまり、奈良に宿泊する人が少ないのは、奈良の観光業者や地元の商売人が、あまり熱心にお客さんを集める努力をしていないのではないかというのだ。

■奈良に滞在客が少ない理由②
奈良にうまいものなし!?頼みの名産品も…
地元民が口をそろえるのが「奈良にうまいものなし」という自虐。実際に、奈良の飲食店数は全国39位。居酒屋登録数ランキングでも、全国43位と、笑ってはいられない状況である。さらに関西のご当地グルメ雑誌を調査してみたが奈良の紹介ページは、ごくわずかだった。この原因について、奈良では、かつて都が奈良から京都に移った際、うまいものも根こそぎ持っていかれた、なんてまことしやかにつぶやかれているのだが、真偽のほどは謎のままである。

■奈良に滞在客が少ない理由③
建造物の高さ制限に加え、遺跡出土でホテル建設が進まない
少ないとはいえ、奈良に宿泊施設があるのは事実。実際のところ、ホテル経営は大丈夫なのか?余計なお世話だとは知りつつ、市内にある某ホテルを取材させてもらった。取材は2月だったが、なんと全175室の内、空室が135。さらに厳しいときは、空室155という日もあったとか。

実際、データによると、奈良は宿泊施設が少ないだけでなく、客室稼働率でも全国39位と苦戦気味。いったいなぜこんなことになってしまっているのか、取材班は奈良で30年以上ホテル経営をされている「ホテルサンルート奈良」の中野さんに話を聞いてみた。中野さんによると、奈良の市街地には建造物の厳しい高さ制限がある。宿泊施設の場合、建物の高さは部屋数に影響するため、高さ制限によって、経営が成り立たなくなってしまうこともあるという。

ちなみに、県内でいちばん高いビルは「ホテル日航奈良」でたったの46メートル。また、調べてみると、奈良でビルの建設工事中に地中から遺跡が発見され、工事が中断したという事例も。これらのことから、奈良の市街地に新たなホテルを建設することに二の足を踏む建設業者もいるという。と、ここまで奈良の残念なポイントを伝えてきたが、奈良県もそんな状況に手をこまねいているばかりではない!

奈良に一筋の光!滞在客を増やすため奮闘中
奈良県は、観光客が夜にも食事や買い物をするために便利なガイドマップを作成!さらにホテル不足解消のため、国際級ホテルの誘致が決定しており、2020年の東京オリンピックまでにオープンする予定だという。朗報は、東京〜大阪間を結ぶ予定のリニア中央新幹線が奈良を通ることがほぼ決定したこと。これは、観光客を見込める大チャンスである。ただし、開業予定は2045年!……あと30年ある。
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