昨日(2020.6.29)の毎日新聞奈良版に、《「川上宣言」知らせる 水源地の森保全 モニュメント設置》という記事が出ていた。宣言文を刻んだモニュメントを村内3ヵ所に設置したという。川上村らしいSDGs(エス・ディー・ジーズ)への取り組みだ。「川上宣言」の全文は、こちらに出ている。
川上宣言は、同村とつながりのある早稲田大学名誉教授・宮口侗廸(としみち)氏が書きあげた。2018年12月に奈良新聞に掲載された「川上宣言企画特集」で、宮口氏は川上宣言を書き上げた当時の心境を以下のように語った。
地理学者である筆者には、都市には都市の価値があり、山村には山村の価値があるはずだという持論があるが、都市経済の急成長は、都市以外の価値が育ちにくく見えにくい世の中をつくってしまった。吉野林業の発祥の地として栄えた林業も低迷の時代を迎えていたが、平野部に価値ある水を供給するダムの建設のさなかにあって、なお奥地に清らかな水を持つ村が、水源地の村づくりを高らかに宣言しようという発想はまさに自然の価値の再認識の時代にふさわしくこの上なく嬉しく思った。
コロナ禍で都市集中の弊害が浮き彫りになるなか、「自然の価値」を再認識する契機として、川上宣言の意義はますます高まっている。では、最後に記事全文を紹介する。
「水源地の森」を守り、<下流にはいつもきれいな水を流します>などと誓った「川上宣言」(1996年)を村内外で広く共有してもらおうと、川上村は今春、宣言文を刻んだモニュメントを国道169号沿いの村内3カ所に設置した。吉野川(紀の川)の源流に位置する村が「持続可能な暮らし」を目指す際の「憲章」として発信している。【萱原健一】
モニュメントは3月に設置されたが、新型コロナウイルスの影響で村は広報を控えていた。5項目の宣言文が刻まれ、「宣言ひとつひとつの実現に向けて歩みを続けます」と誓っている。村は99年度から約10億円を投じて約740ヘクタールの森を購入し、「水源地の森」として保全活動をしている。2007年度からは毎年、県内の小学校50校で「森林環境教育」の出前授業に取り組み、<子供たちが、自然の生命の躍動にすなおに感動できるような場>を作ってきた。
<都市や平野部の人たちにも、川上の豊かな自然の価値にふれあってもらえるような仕組みづくりに励みます>。下流域でも村の森林保全活動をアピールし、近年、和歌山市などでも取り組みが高く評価されている。また、<都市にはない豊かな生活>の実現は、吉野林業の再生に取り組む一般社団法人「吉野かわかみ社中」や移動販売で村民の生活を支える同法人「かわかみらいふ」が担っている。
村外の若い世代にも宣言の意義をアピールしている。今年度、村は大阪工業大(大阪市)と連携し、正規授業として「源流学」を開講した。講義は5月から計7回。当初は大阪・梅田キャンパスで行う予定だったが、新型コロナの影響でオンライン授業に。今月15日、講師を務めた「森と水の源流館」(同村迫)事務局長の尾上忠大さん(55)は学生たちに「私は『川上宣言』があったから、川上村に来たんです」と語った。
源流館が開館した02年当時、大阪市内の会社に勤めていた尾上さんは運営サポートとして同館に携わり、05年には退職して源流館の事務局に入った。「宣言を一つ一つ具現化するのが自分の仕事。守ってきた自然を村の資源としてどう生かしていけるか」。源流館が主催する「水源地の森ツアー」をさらに充実させていく考えだ。
同じく「源流学」で講師を務めた村水源地課主事の加藤満さん(31)は「モニュメントを見て、村の目指している方向性を村民に感じてもらい、応援してくれる村外の人との新しいつながりを生むツールになれば」と話す。
川上宣言は、同村とつながりのある早稲田大学名誉教授・宮口侗廸(としみち)氏が書きあげた。2018年12月に奈良新聞に掲載された「川上宣言企画特集」で、宮口氏は川上宣言を書き上げた当時の心境を以下のように語った。
地理学者である筆者には、都市には都市の価値があり、山村には山村の価値があるはずだという持論があるが、都市経済の急成長は、都市以外の価値が育ちにくく見えにくい世の中をつくってしまった。吉野林業の発祥の地として栄えた林業も低迷の時代を迎えていたが、平野部に価値ある水を供給するダムの建設のさなかにあって、なお奥地に清らかな水を持つ村が、水源地の村づくりを高らかに宣言しようという発想はまさに自然の価値の再認識の時代にふさわしくこの上なく嬉しく思った。
コロナ禍で都市集中の弊害が浮き彫りになるなか、「自然の価値」を再認識する契機として、川上宣言の意義はますます高まっている。では、最後に記事全文を紹介する。
「水源地の森」を守り、<下流にはいつもきれいな水を流します>などと誓った「川上宣言」(1996年)を村内外で広く共有してもらおうと、川上村は今春、宣言文を刻んだモニュメントを国道169号沿いの村内3カ所に設置した。吉野川(紀の川)の源流に位置する村が「持続可能な暮らし」を目指す際の「憲章」として発信している。【萱原健一】
モニュメントは3月に設置されたが、新型コロナウイルスの影響で村は広報を控えていた。5項目の宣言文が刻まれ、「宣言ひとつひとつの実現に向けて歩みを続けます」と誓っている。村は99年度から約10億円を投じて約740ヘクタールの森を購入し、「水源地の森」として保全活動をしている。2007年度からは毎年、県内の小学校50校で「森林環境教育」の出前授業に取り組み、<子供たちが、自然の生命の躍動にすなおに感動できるような場>を作ってきた。
<都市や平野部の人たちにも、川上の豊かな自然の価値にふれあってもらえるような仕組みづくりに励みます>。下流域でも村の森林保全活動をアピールし、近年、和歌山市などでも取り組みが高く評価されている。また、<都市にはない豊かな生活>の実現は、吉野林業の再生に取り組む一般社団法人「吉野かわかみ社中」や移動販売で村民の生活を支える同法人「かわかみらいふ」が担っている。
村外の若い世代にも宣言の意義をアピールしている。今年度、村は大阪工業大(大阪市)と連携し、正規授業として「源流学」を開講した。講義は5月から計7回。当初は大阪・梅田キャンパスで行う予定だったが、新型コロナの影響でオンライン授業に。今月15日、講師を務めた「森と水の源流館」(同村迫)事務局長の尾上忠大さん(55)は学生たちに「私は『川上宣言』があったから、川上村に来たんです」と語った。
源流館が開館した02年当時、大阪市内の会社に勤めていた尾上さんは運営サポートとして同館に携わり、05年には退職して源流館の事務局に入った。「宣言を一つ一つ具現化するのが自分の仕事。守ってきた自然を村の資源としてどう生かしていけるか」。源流館が主催する「水源地の森ツアー」をさらに充実させていく考えだ。
同じく「源流学」で講師を務めた村水源地課主事の加藤満さん(31)は「モニュメントを見て、村の目指している方向性を村民に感じてもらい、応援してくれる村外の人との新しいつながりを生むツールになれば」と話す。