tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

水源林を守れ!

2010年02月28日 | 林業・割り箸
日本の「水源地の森」が外資に狙われているという話がある。最初にこの話を報じたのは、昨年の産経新聞「土曜日に書く」(09.5.23付)だった。《「水盗人」に狙われる日本》として、東京特派員の湯浅博氏がレポートされた。


川上村(奈良県吉野郡)の人工美林(写真はすべて07.7.24撮影)

《グローバル時代になると、スケールも大きくなって国際間で「水盗み」が起きる。世界中で危機的な水不足が起きて、他国の水源地を丸ごと買い占める利権ビジネスが横行する。わが営林当局がもっとも警戒しているのは、人口増と砂漠化で枯渇が懸念される中国の企業動向である》。

《三重県大台町によると、以前から中国語なまりの声で山林買収の問い合わせがあり、3年前に役場に現れた人物が中国名の名刺を差し出した。その人物から、「立ち木と土地を買いたい」と持ちかけられたが、「水源林なので」と仲介することを断った》。

《林野庁には昨年6月から、「中国を中心とした外国勢が森林買収に動いている」との情報が寄せられていたという。ほかにも長野県、岡山県など豊かな水源地を持つ地方で中国人地上げ屋の影がちらついた》。

《国連報告書は2025年までに、「世界人口の半分が水不足に直面するおそれがある」という。水にかかわる国際的な利権ビジネスは増えることがあっても、減ることはないだろう。彼らは外国人であることを隠して、日本国内の企業やエージェントを使うことになる。これら国際間で行われる「水盗み」を防ぐため、水番なみの立法措置が必要になってきた》。


川上村の三之公(さんのこ)天然林(奈良検定体験学習プログラム「源流の森を歩く」で)
※参考:川上村・水源地の森ツアー(JanJanニュース)
http://www.news.janjan.jp/area/0707/0707290034/1.php

私も気になって吉野の林業関係者に尋ねてみると、「三重県で、不在山主の山を外資が買いに来ているという噂を聞いた」「そのうち手放す人もいるのではないか」とのことだった。

産経が書いたあと、これを追う報道もなかったが、先月になって「週刊エコノミスト」(1/26号)が《日本の水源林を守れ》のタイトルで4ページの「エコノミストリポート」にまとめた。筆者はいずれも東京財団の吉原祥子氏と平野秀樹氏である。同リポートは、こんな実態を報告している。



《日本の林業は長期的な停滞が続いている。木材価格の下落によって、林業採算性は悪化し、林業就業者の高齢化比率(65歳以上)は29%(2005年)にのぼり、林業現場は限界にある。「手放せるものなら山を手放したい。自分の代で林業は終えたい」。ある山林所有者は悲痛な思いで語る。林地価格が18年連続で下落し、山林の潜在的「売り圧力」も強まるなか、山林売買に新たな動きが出ている。林業関係者は「これまで森林に関心を示さなかったような人たちが買収に参入している」という》。

《埼玉県西部の有名林業地では、05年ごろから、山林に関心を示す外国人が商社を介して動いているという話が出てくるようになった。富士山の伏流水(河川水と地下滞水層の中間にある水)が流れる山梨県東部では08年初旬、地元不動産業者に対し「1平方キロ以上の広い山がかたまりで欲しい。立木はどうでもいいが、山(地面)が欲しい」と東京の同業者から依頼があったという》。

《過去に大規模売買などなかった地区に突然買い手が現れ、林業家から見れば採算がとれるとは思えない山を「売ってほしい」と持ちかけるから不思議がられる。北海道・道東地区、長野県天龍村、宮崎県・都城地区などでも類似の話が聞かれる。東京のある新興不動産会社は発足後5年間で、全国で計200平方キロの森林を所有するまでになった。東京都内のコンピュータソフト開発会社は06年だけで全国の森林計約43平方キロを取得した。また、日本のある大手商社は研究調査名目で2平方キロ以上のまとまった山を探しているとされる》。

東京財団は国交省所轄のシンクタンクで、もともと国際研究奨学財団として設立された財団法人である。同財団はHPに、この問題を「日本の水源林の危機~グローバル資本の参入から『森と水の循環』を守るには~」という政策提言としてまとめた。エコノミスト誌のリポートと同趣旨のものであり、以下、HPから引用する。
http://www.tkfd.or.jp/topics/detail.php?id=118



《グローバル資本による水資源事業への投資は着実に我が国にも及んでおり、自治体の水道事業への海外資本の参入や、海外の飲料水メーカーによる大量取水などの事例が各地で見られるようになってきました。日本の国土の67%を占める森林はそうした水資源の源であり、その売買については公共インフラ保全の観点から慎重な対応が必要です》。

《しかし、現行制度では、水資源管理と森林保全は切り分けて行われており、制度整備は極めて不十分です。東京財団では、森と水の循環メカニズムに基づく統合的な保全のための制度が緊急に必要と考え、地下水と水源林保全に関する重要論点と、早急に必要と考えられる具体策について政策提言をまとめました》。

政策提言の「全文」はPDFファイルにまとめられているが、A4版で50ページもあるので、同財団が要約した「提言書の骨子」の方を紹介する。
http://www.tkfd.or.jp/admin/files/2008-9.pdf



<背景:グローバル資本の参入>
日本の森林はいま「買い」の分野と目され、内外の様々な民間資本による林地購入が進みつつある。こうした動きはまだ表面化していないものの、関係者の間では様々な事例が話題に上っている。2008年には、例えば三重県などの大規模山林で海外資本からの買収交渉の話が聞かれた。

<問題点:ルールの不備>
我が国の林業は、国際的な価格競争にさらされ長期にわたって低迷が続いた結果、植林放棄や不当に安い林地価格が大きな問題となっている。森林法による現行の監督制度も自治体において十分機能していない点も多い。総合的な地下水のかん養と利用について規定した法律もない。

ルール整備が不十分な中で森林売買が進行すれば、国として自国の森林資源・水資源を管理することが困難となり、国土保全や国民生活の安定という安全保障面で、大きな影響を受けることが予想される。 

<提言:「重要水源林」の売買ルール整備>
国民の安全・安心のためには、市場経済における短期的利益の追求を前提としつつも、長期的な国益の視点に立った森林売買ルールの整備が不可欠である。
植林放棄是正を急ぐとともに、「重要水源林」の指定・売買ルールの見直しなどの、制度整備が早急に必要である。



引用は以上である。いかがだろう、誠に理にかなった提言である。最後の「重要水源林」を指定して管理する、という発想が良い。一律に売買に制限をかけると「手放せるものなら山を手放したい。自分の代で林業は終えたい」という山主が浮かばれないからだ。

かつて「20世紀はアブラ(石油)の取り合いで戦争が起きたが、21世紀は水の取り合いで戦争が起こる」と聞かされたことがある。水源の確保は、日本の安全保障上の問題でもある。最近も、ある著名シンクタンクの方に「水の問題は、日本人がノーマークなこと、今の山林所有の実態を都市のほとんどの人が知らないことなどから、リスク大きいです」とお聞きしたばかりだ。

地球上では毎年、日本の国土の1/3ほどの森林が消えている。国土の67%が森林というこの国は、例外的な存在なのである。森林は木材資源と水資源の供給源であると同時に、光合成によるCO2の固定化(吸収)により地球温暖化を防止する。国民の安全・安心のため、また国家の安全保障、国際的な温室効果ガス削減の観点からも、森林と水問題への一層の世論の高まりを期待する。
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紀州赤鶏の親子丼

2010年02月27日 | グルメガイド
2/22(月)、出張先で「紀州鶏の究極親子丼定食(赤だし付)」850円をいただいた。「旬菜 楽や」(和歌山県橋本市高野口町名倉81)という居酒屋さんのランチメニューである。
http://shunsairakuya.com/


土鍋マーボー豆腐定食(900円)

使用されている鶏は、赤鶏(あかどり)という品種で、味と食感を楽しめるように、もも肉とせせり(首の肉=歯ごたえがあり、うま味が濃い)を混ぜておられる。色の濃い卵は、同市内の上垣内(うえがいと)養鶏場のもので、これをたっぷり使っておられる。つゆだく(ツユたっぷり)の美味しい親子丼だった。


かに天ぷらとかにめし御膳(950円)

「うどんかそば(温)が、130円プラスでつきますよ」と教えていただいたが、これで十分満腹になる。お連れいただいたHさんは「土鍋マーボー豆腐定食」900円、Oさんは「かに天ぷらとかにめし御膳」950円、Tさんは「ビッグ海老フライとカキフライ定食」900円を注文された(わざわざ別のメニューを注文されて撮影にご協力いただき、有り難うございました)。ご飯は、無料で大盛りにできるそうだ。


ビッグ海老フライとカキフライ定食(900円)

ランチタイムとあって、お店は家族連れや周辺のサラリーマンで賑わっていた。メニューが多く値段もリーズナブルなので、気軽に利用できるお店である。HPを拝見すると、夜の居酒屋メニューも多い。もとは酒屋さんで、今のご店主(大家久典さん=和歌山の外食産業を盛り上げる会副会長)で3代目になるそうだ。JR高野口駅から南へ徒歩10分、国道24号線交差点の角にある。いちど、お試しいただきたい。
コメント (2)
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秘宝秘仏特別開帳(2)法隆寺 伝法堂の内陣諸仏など

2010年02月25日 | 平城遷都1300年祭
好評開催中の平城遷都1300年祭の目玉事業「祈りの回廊 奈良大和路 秘宝秘仏特別開帳」から、今回は法隆寺「伝法堂(でんぽうどう)」を紹介する。
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100208/trd1002082004005-n1.htm

伝法堂は、もと平城京にあった聖武天皇の夫人(ぶにん)である橘古那可智(たちばなのこなかち)の住居が、天平時代に移建奉納されたものである。天平時代の住宅建築を伝える唯一の遺例である。
http://www.nara-np.co.jp/20100209105331.html

法隆寺―入江泰吉写真集
入江 泰吉
小学館

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お堂の中には、なんと20体もの仏さまがお祀りされている。仏壇の奥に、奈良時代の乾漆の阿弥陀三尊像(阿弥陀、観音、勢至)が3つ(つまり9体=三尊×3)、手前には客仏の釈迦・薬師・阿弥陀・弥勒の如来坐像、梵天・帝釈天・四天王立像(以上、平安時代)および地蔵菩薩立像(室町時代)が安置されている。
http://www.1300.jp/event/roam/yamatoji/shaji/38.html

このお堂は毎年1回、7月24日夕刻(18時~20時頃)の「地蔵会(じぞうえ)」のときだけ公開される。地蔵会では、端っこに安置されていた地蔵菩薩(子安地蔵)がまん中(阿弥陀像の手前)に移されて法要が営まれる(今もお地蔵さんが阿弥陀さんの前に安置されている。何だか不思議だが、地蔵会のたびに仏さまを動かすのは大変なので、そのままにされているようだ)。だから伝法堂のことを「地蔵堂」と呼ぶ人がいる。
※初日(2/18)の様子を伝える同日の朝日新聞夕刊。向かって右に私の後ろ姿が写っている!
http://www.asahi.com/culture/update/0218/OSK201002180110.html

隠された十字架―法隆寺論 (新潮文庫)
梅原 猛
新潮社

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毎年1回・2時間、暗がりの中でしか拝めない仏さまが、外光に照らされているところを拝観できるので、今回の特別開帳は超人気である。私は初日(2/18)にまる1日、拝観者の誘導を担当したが(1000人ほどの方が来られた)、こないだの日曜日(2/21)などは3000人以上の方が拝まれたというから、すごい。
※参考:秘宝秘仏特別開帳(1)中宮寺 表御殿室内(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/e26ec7b308d885c45f573b7d2db148fe

この特別開帳は2/28までだが、お隣りの中宮寺「表御殿(おもてごてん)」の特別開帳も2/28まで。月末にかけて、この2つをセットで回られる方が増えると思うが、混雑を避けるため、また朝日がお堂の奥まで射し込んで仏さまのお顔がよく見える早朝の拝観をお薦めしたい(法隆寺は8時に開く。中宮寺は9時から)。

※トップ画像は、平城遷都1300年記念事業協会のパンフレットより拝借
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Topic 「学生の地域創造 IN NARA」からの提言

2010年02月23日 | お知らせ
奈良日日新聞(2/19付)に「若い視点を奈良観光に役立てて 宿泊観光へアイデア 県立大生ら奈良市に提言」という記事が載っていた。
http://www.naranichi.co.jp/20100219ne4302.html

《宿泊客増に向け、朝8時まで観光地の入場無料化を―。県立大学地域創造学部(奈良市船橋町)の学生らが地域活動に取り組む全国の大学生らに呼びかけて、奈良の観光産業の課題について議論し、若い視点からのアイデアをまとめて18日、奈良市に政策提言を行った》。
http://www.geocities.jp/npu_scor/

《この政策提言は、同大地域創造学部の学生らが中心となって立ち上げた同大SOCR実行委員会が、昨年12月に同大で初めて開いた「学生の地域創造 IN NARA」のワークショップで議論された内容を10項目にまとめたもの。ワークショップには全国の大学生ら約70人が参加し、宿泊客が少ないなどの課題がある奈良の観光産業について議論した》。
http://www3.pref.nara.jp/hodo/dd.aspx?itemid=32808

この提言の一部が、同紙面に紹介されていた。《奈良に宿泊してもらうために朝8時まで寺社の入場料など観光地を無料化し、宿泊客増の利益の一部を観光施設に回すという青森県で行われている政策や、ターゲットを高齢者に絞り込んでリピーターを増やすこと、平城遷都1300年祭のマスコット「せんとくん」を生かして全国の「きもキャラ」を集めたイベントを実施するなど、学生らのさまざまな若いアイデアを盛り込んだ》。
http://www.narapu.ac.jp/baseimg/banner/scor.pdf

もっと提言の詳しい内容を知りたいところだが、これ以上の情報はネットにも出ていない。提言書が市長に渡されたので、いずれ市から発表されるのだろうが、早く公開していただきたいものだ。
http://blogs.yahoo.co.jp/hu_guide2007/57307426.html

上記の記事に出ているものだけでも、早朝の拝観無料は面白いし、「きもキャラ」イベントはテレビが飛びつきそうだ。高齢者をリピーターにするのも、着眼点が良い。

私も以前から、寺社好きのお年寄りは奈良の良いお客になると考えていたが、介護タクシーによる観光事業をされている山本さんのお話によると、現状は「奈良はユニバーサルツーリズムに関しては、残念ながら遅れているとしか言いようがありません」ということなので、インフラ整備から取りかからなければならない。

それにしても、面白い仕組みを作られたものだ。宿泊場所は猿沢池畔の魚佐旅館で、全館貸し切りだったというからスゴい。金田さんでなければできない決断である。このイベントは、ぜひ継続開催していただきたいものだ。
http://blog.livedoor.jp/meister8/archives/51597108.html

※トップ写真は、奈良奥山ドライブウェイからの眺め(05.6.22撮影)
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奈良検定2~1級の合格発表

2010年02月21日 | 奈良検定
奈良まほろばソムリエ検定(奈良検定)2~1級の合格通知、そろそろ皆さんのお手元に届いただろうか。

主催の奈良商工会議所のHPには《「奈良通2級」・「奈良通1級」受験者の試験結果は、本日2月19日に発送致します。未着問い合わせ期間は、2月25日~26日です》とあったので、早い人なら昨日届いていると思うのだが。

当ブログ読者の銀とき子さんのブログには《やった~~!!! 自己採点では合格だったのですが、認定証が届いてやっと一安心です》とあった、祝!合格。自己採点では73点(合格ラインは70点)と書いておられたので、合格は約束されていたが、やはり認定証が届くまでは落ち着かない気分だったろう。
http://cherry.blog.eonet.jp/tokiko/2010/02/2-3552.html

銀さんは着物で受験されたそうだが、こんなきれいな人が近くに座っていると、気が散って満足な答案が書けなかった男性受験者もいたに違いないと、つい同情してしまう。
http://cherry.blog.eonet.jp/tokiko/2010/01/post-3bf2.html

それはともかく、銀さんが引用されていた2級の問題は、結構難しかった。例えば、

52.平成21年7月に国内最古のイスラム陶器が出土したのは、どの寺院の旧境内であるか
 → 西大寺

70.恭仁京に遷都した後に詠まれた、奈良の都の荒廃を嘆いた万葉歌はどれか
 → 世間を 常なきものと 今そ知る 奈良の都の うつろふ見れば

2級の受験会場では、たくさんの人が私の『ズバリ!奈良検定2級の要点整理』を持っておられたそうだが、上記内容は書いていない。2011年対策として、追記しておくことにしたい。

2ちゃんねるの「奈良検定スレ」が過去ログ倉庫に入ってしまったので、検定に関する情報が得にくくなった。合格された方は、ぜひご感想や、これから受験される方へのアドバイスなどをこの記事のコメント欄にお書きいただきたい。
※写真は、奈良市の追分梅林。奈良県の三大梅林には入っていないので、ご注意を(05.3.13撮影)
コメント (10)
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