tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

まろやか味のうどんが食べたい!(3)奈良のうどん事情

2009年06月30日 | グルメガイド
「まろやか味のうどんが食べたい!」シリーズ第3回は、地元・奈良県下のうどん屋さん事情である。ちなみに、これまでの2回では、「(1)ツユが辛くなった?」で、大阪と京都で立て続けにツユの辛い(塩味と醤油味が濃い)うどんを食べて閉口したこと、「(2)カップ麺・東西比較」で、東京でも関西風まろやか味のうどんが受け入れられていること、などを紹介した。
※(1)ツユが辛くなった?
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/aa196121a45bd3b1996339623e8936bf
※(2)カップ麺・東西比較
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/eecd30377782fdc97c23c252d433a25a

地元のうどんツユの味を確かめるため、今年の3月から、4か月かけて県内17軒(奈良市が15軒、生駒市と五條市が1軒ずつ)のうどん屋さんを回った。ほぼ週1回のペースだ。うどんは、できるだけベーシックな「きつねうどん」を選ぶように努めた。

結果、ツユが辛かったのは1軒だけだった。やや辛かった(ただし許容限度内)のが2軒(いずれも奈良市内)で、残り14軒はまろやか味だった。まろやか味輩出率は82%!という高率だ(許容味輩出率は94%)。これは嬉しい。


手打ちうどん処 伊賀(近鉄生駒駅の南西側)のうどん定食800円(高菜ご飯をチョイス)
※手打ちうどん処 伊賀(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/22bc94e7c0b92df1a1fa53752f5d4624

参考までに、許容範囲内だった16軒の店舗名を紹介すると「かきまぜ奈良うどん ふく徳」「田舎そば たかぎ」「うどん・そば 天馬」「麺闘庵」「うどん亭近鉄奈良駅前店」「ぜい六」「サガミJR奈良駅前店」「なか卯JR奈良駅前店」「手打ち釜あげうどん重乃井」「奈良県庁食堂」「奈良女子大学生協食堂」「奈良県文化会館グリル」「遊食菜館しゅう」「どん兆西大寺店」と、生駒市の「手打ちうどん処 伊賀」、五條市の「大和本陣」である(奈良市大安寺のうどん名店「初次郎」が店を閉めてしまったのは、かえすがえすも残念だ)。


立ち食いうどん「しゅう」のおかめうどん(すうどん)250円
冷凍さぬきうどん風の麺が美味しい(近鉄新大宮駅南口の「遊食菜館」内)

辛かった1軒は、行く前から「店主の代が変わって味が変わった」と聞いていた大衆食堂だった。やはり若いご店主だと、塩味が濃いめになるのだろう。

これらの店を回っている間に、いろんな発見があった。まず、最も薄味だったのが「かきまぜ奈良うどん ふく徳」だった。丼の底の醤油ダレと鰹節ととろろ昆布をかきまぜていただく仕組みだ。ここへ行かれたら、コメディアン志望だったというご店主に、ぜひ話しかけていただきたい。
※かきまぜ奈良うどん ふく徳(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/0fa9d232e3fa799c1af9fc54fd17682f

最も安かったのは、奈良女子大学生協食堂のきつねうどん(180円)だ。味は期待していなかったが、結構イケた。(私は先生と一緒だったので入れたが、誰でも入店できるかどうかは不詳。なお生協非組合員は1割アップ。)


奈良女子大生ご用達きつねうどん180円

私が最も気に入ったのは「手打ち釜あげうどん 重乃井(しげのい)」のきつねうどんだった(=トップ写真)。JR奈良駅から徒歩7~8分のところ(奈良市杉ケ町17の1)にあるこの店は、名前の通り釜揚げうどんの名店であるが、今回の取材のため初めていただいたきつねうどんが、とても美味しかったのである。鰹や煮干ダシの利いたツユは絶品だ(私はもともと煮干ダシが好み)。もちろん、モチモチのうどんも油揚げも良い。いつか当ブログできちんと紹介したいと思っている。
http://www.sigenoi.com/index.html



巨大な油揚げの載ったきつねうどんも発見した。「田舎そば たかぎ」である。ここはそばのほか、丼物やオムライスが有名だが、ぜひ、きつねうどんも味わっていただきたいと思う。
※田舎そば たかぎ(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/4eb47d60f03a95f072f0d925f09b624a


麺が隠れるほど油揚げが大きい「たかぎ」のきつねうどん(確か550円)

油揚げといえば、「麺闘庵(めんとうあん)」の「巾着きつね(逆きつね)」が有名だ。油揚げの中に閉じこめられたうどんはもっちりしていて、とても美味しい。
※麺闘庵の巾着きつね(逆きつね)(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/4e6ea780690ea178a0e9d447f9eba57c


ご店主おすすめ、新発売のミニ巾着セット680円

この麺闘庵は、5/11のエキサイトニュースに取り上げられた。それが検索サイト「エキサイト」のトップページ(トップニュース)に載ったので、つられて私のブログ記事にもアクセスが殺到した。いつもはアクセス数1日700人のペースが、5/11だけは、軽く1000人を超えた。「Yahoo!検索ランキング」でも「麺闘庵」が09年5月12日の「急上昇ワードランキング」に入った。
http://www.excite.co.jp/News/bit/E1241663967306.html

なお、辛い(およびやや辛い)うどんは、いずれもツユの色が飴色だった。これは薄口醤油ではなく(もちろん濃口醤油でもなく)、どうも白醤油の色のように思える。色が薄いからと安心して白醤油を使っているうちに、味が塩辛くなったのではないだろうか。

「やはり奈良のうどんは、昔ながらのまろやか味がほとんどだった。伝統を重んじる古き都は良いものだ。それに引きかえ、大阪や京都は…」と思い始めたが、よくよく考えてみると、16軒の中には、大手チェーン店が含まれている。なか卯とうどん亭(近鉄観光)は大阪、サガミは名古屋、といった具合である。


なか卯JR奈良駅前店のきつねうどん390円と牛丼ミニ290円

「これらのチェーン店は、もともとまろやか味なのか。はたまた奈良の店舗だけ、まろやか味に変えているのか」と、また分からなくなってきた。もしかすると案外、大阪でも京都でも、主流は「まろやか味」なのかも知れない。

それならもう少しうどんを食べ歩き、この問題に決着をつけることにしよう。皆さん、少しお待ちいただくが、この続きをお楽しみに。
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第14回 けいはんな市民雑学大学「ソナタってなーに?」

2009年06月28日 | 奈良にこだわる
「SNSけいはんな」という地域限定のSNSをご存知だろうか。「けいはんなのまちづくりを考える会」から生まれた「けいはんな地域SNS研究会」(代表:大阪市立大学大学院教授 藤田忍氏)が母体となって、07年にスタートした無料の会員制サービスである。なおSNS(Social Networking Service)とは、mixiのような会員制のWebサービス(日記、掲示板、メールなど)のことである。
※地域SNS「けいはんな」のご案内(PDF形式)
http://sns.keihanna-city.com/files/2008_03_09_01_annai.pdf


奈良女子大学の「百年ピアノ」(1909年購入のヤマハ製)。05年に修復された

SNSけいはんなのサイトには《古代より日本のみやこであった京都・大阪・奈良の三府県八市町からなる「けいはんな学研都市」を舞台に、市民をつなぎ、交流と連携を図るための信頼のネットワークサービスです》とある。実は私も、昨年からこのSNSのメンバーに入れてもらい、当ブログを(外部の)日記に設定している。
http://www.asahi.com/kansai/travel/ensen/OSK200902070006.html


ピアノの弦

同じく「けいはんなのまちづくりを考える会」から生まれたのが、「けいはんな市民雑学大学」(学長:奈良女子大学名誉教授・平安女学院大学教授 西村一朗氏)である。開学は08年3月で、その趣旨は《まちづくりに関心を持った有志が集い、平成14 年「けいはんなのまちづくりを考える会」を設立し、例会やワークショップ、講演会活動などを通じ、まちづくりに関係する今日的課題を多角的に話し合って参りました》。

《そうした活動の一環として地域に密着し、「けいはんな学研都市」の地に住み、勤務し、何らかの関心をもたれる各個人が、今までの人生で得た知識や技能、体験、現在研鑽している知見等を相互に交流し合える学習・研究機会の創設を意図し、この度、けいはんな市民雑学大学の開設を構想しました》。
http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000140904270001


脚部

《この大学では、けいはんな学研都市地域にお住まいの誰でもが市民教授になって頂きたいと思いますし、運営スタッフになっていただきたいと思います。運営に当たってはすべてボランティアで運営いたします。従って、講師料および受講料などは原則無償、無料でお願いいたします》。
※けいはんな市民雑学大学のサイト
http://academia.keihanna-city.com/

つまり、学研都市周辺の住民ボランティアが運営する定期講演会なのである。「SNSけいはんな」などで告知・募集を行っているので、SNSメンバーを中心にたくさんの方が参加されてる(原則として、毎月第4土曜日開催)。


奈良女子大学副学長・野口哲子氏の冒頭挨拶

「けいはんな市民雑学大学」の第14回講座が、6/27(土)奈良女子大学で開かれた。早くも、地域SNS研究会代表の藤田氏が、その模様を日記(「SNSけいはんな」内)にアップされているので、引用させていただく。《今日は、けいはんな 市民雑学大学第14回講座「ソナタってな~に?」だった。魅惑の!!!ピアニスト 上田賀代子さんによる奈良女「百年ピアノ」(1909年製)生演奏とお話だ》。


けいはんな市民雑学大学学長・西村一朗氏の挨拶

上田賀代子(うえだ・かよこ)さんは、生駒市鹿ノ台在住で、日独ピアノ芸術学院の院長さん(奈良日独協会会員、奈良音楽芸術協会会員、奈良モーツァルト会会員)。ご自宅に40人収容のサロンがあり、スタインウェイピアノを囲み、夜な夜なピアノとワインの会を開かれているとか。以前の「生駒牛(しゃぶしゃぶ鹿の子)が美味しい」との情報源も、この上田さんであった。
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/b298bdc67c70c7e758a7a61cc1e42565


上田賀代子さんの軽妙なトーク。まるで「題名のない音楽会」だ

《参加者は予想できなくて100人から300人の間と思っていたが、ふたを開けたら300人を軽く超えて、320~330人。立ち見が出た。企画が良かった。ピアニストが良かった。サプライズも素晴らしかった。皆聞き入っていた》。

曲目は《◇バッハ・プレリュード・パルティ-タ4番のオーバテューレ BWV828 (ニ長調)◇モーツァルト・ピアノソナタK545(ハ長調)◇ベートーベン・ロンドop15◇シューマン・組曲 子供の情景よりop15 6曲◇ショパン・ワルツop64(イ長調) 他》だった。



バッハのプレリュードのあと、西村氏から質問が入った。「百年ピアノを弾かれて、2年前(修理から出来上がってきたばかりの頃)と今日とで、感じは違いますか?」という質問だ。上田さんのお答えは「以前は、百年の眠りから覚めたばかりで『何すんねん』という感じでしたが、今回弾いてみて調子がいいので驚きました。ピアノも人間と同じで『いい音ね』とほめられると、どんどん良くなるのでしょう」。



「ソナタってな~に?」というタイトルの通り、楽しくてためになるお話もあった。ソナタ形式は「提示部」「展開部」「再現部」「終結部」で構成され、それはいわば「起承転結」なのだそうな。また、ベートーベンのロンドを演奏され、「主題のメロディが、何度繰り返されるでしょうか?」というクイズもあった。私が指折り数えると10回になったが、正解は6回だった、残念無念。



藤田氏の日記に、宇宙人Copernicusさんがコメントを寄せておられる。《どこか聴衆を意識した配慮と丁寧さを感じたような気がします。とても安心して拝聴させていただきました》。

《こういう音楽の楽しみは、また格別ですね。自分は弾けないまでも、話を聞いてから移る演奏には、その曲と一緒に、一体化してその音楽に乗れる、入り込める。その結果、自分も弾いているような感覚になれる気がして、とても面白い試みだと思った次第》。





最後に、サプライズ(特別ゲストの出演)があった。それは、なんと大阪フィルハーモニー交響楽団コンサートマスターの梅沢和人氏だった。上田さんのピアノ伴奏により、モーツァルトの「ヴァイオリンソナタ 第28番ホ短調」(K304)を、朗々と歌い上げるようにヴァイオリンを奏でられた。この曲は私も大好きなので(実は、私はモーツァルトのファン)、とても楽しく聞かせていただいた。
※この曲が無料で試聴できるサイト
http://www.on-air-music.com/artistdetail.php?i=00122


講演のあと、奈良女子大学生協食堂で開かれた懇親会(以下、同じ)
向かって右端が藤田氏、隣が西村氏、中央が梅沢氏

梅沢氏は、市民雑学大学学長の西村氏ともお親しいようで、ブログ「西村一朗の地域居住談義」でも紹介されていた。西村氏は《梅沢さんは、何か本を書かれているようだ。その本を読み、梅沢さんのヴァイオリンでモーツアルトを聞いてみたい》と書かれていたが、それがこの日、実現したのである。
http://blog.goo.ne.jp/in0626/e/08ad7b51a625f33c22c3e0d1102cbd90


上田さんは酒豪だそうだが、この日はお車なのでウーロン茶



さて、第15回「けいはんな市民雑学大学」は、7/25(土)午後2時から、近鉄奈良駅から徒歩5~10分の「もちいどのセンター街」にある「奈良マーチャントシードセンター」(奈良市橋本町3番地の1 :0742-27-9400)で開催される。
※奈良マーチャントシードセンターの地図
http://www.nmsc.or.jp/nmsc/info/pdf/NMSC_Parking.pdf

なんと!講師(市民雑学大学教授)はこの私で、お題は「奈良にうまいものあり」である。90分程度の講演のあとの懇親会は、ならまちで、奈良の美味しいものを食べる予定なので、ぜひ多くの方にご参加いただきたい。
(募集の詳細は、幹事さんが検討中。決まり次第、私のブログでも紹介させていただく予定である。)
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吉野山あじさいまつり

2009年06月26日 | 小さな旅
吉野山(奈良県吉野郡)といえば、まずは桜だが、新緑も秋の紅葉も良い。お正月(初詣)の雅やかな雰囲気も、ぜひ味わってほしい。それに加えて、アジサイも素晴らしい。麓(近鉄吉野駅)と吉野山を結ぶ「七曲り」という登山道に沿って、アジサイが咲くのである。
http://www.yoshinoyama-sakura.jp/top.htm



花の期間中、吉野山観光協会は「吉野山あじさいまつり」を開催している。

期間 6月13日(土)~7月7日(火)
場所 吉野山七曲りの「七曲りあじさい園」

期間中は、ライトアップされ、また6月27日(土)、28日(日)の午前11時から午後2時までの間は、以下のイベントもある。

・吉野山の手作り名産品の無料試食会
・吉野本葛を使った「くず餅」の実演販売(有料)
・吉野川桜鮎のを炭火焼実演販売(有料)
・「あじさいの鉢植え」や「吉野山の名産品」のプレゼント(抽選)
・「蛙のオリジナル手作りストラップ」のプレゼント(先着30名)
http://shokoiki.exblog.jp/8667532/


千本口駅近くのアジサイ

6/13(土)、当ブログで紹介した「第2回 さくらの学校」で吉野山を訪ねた帰り、このアジサイを楽しんできたので、以下に紹介する。なお、私は七曲りの坂道を降りながらアジサイを撮ってきたのだが、この坂は、やはり登りながらアジサイを鑑賞する方がピッタリくる。で、順序を逆(麓→山上)にしてご披露することにしたい。
※第2回 さくらの学校(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/67d32a07a726dc85647dfb2ea2f04e93



七曲りは、近鉄吉野駅で下車し、歩いてすぐのロープウェイ「千本口駅」の横から入る。Wikipedia(吉野ロープウェイ)によると《吉野大峯ケーブル自動車が運営する索道の名称である。現存する日本最古の索道路線でもある。吉野山ロープウェイともいう》。



《近鉄吉野線の前身である吉野鉄道が吉野駅までを開業させた翌年、1929年(昭和4年)3月12日に千本口~吉野山間を開通させた。搬器(ゴンドラ)は「かえで」「さくら」の2台で、現代では珍しく客室内が階段状になっている》。ゴンドラの車体は、近鉄特急と同じ色に塗られている。


桜に混じってモミジの木もたくさんある。紅葉の時期が楽しみだ



この「七曲り」については、山川出版社の『奈良県の歴史散歩(下)』に解説が出ている。《登り口には大峯山詣りの行場(ぎょうば)であった幣掛(しでかけ)神社がある。七曲りをのぼりつめた所で、吉野神宮方面からきた県道と合流するが、ここを攻(せめ)が辻という。1333(正慶2・元弘3)年、元弘の変のおりに北条勢が攻めあがってきたことからついた名である。攻が辻から左に行くと吉野山の中心に入る》。





七曲りは、新緑とアジサイのコントラストが素晴らしい。県下でアジサイの名所というと、柳生花しょうぶ園(奈良市)、矢田寺(大和郡山市)、馬見丘陵公園(北葛城郡河合町・広陵町)、久米寺(橿原市)といったところがすぐ思い浮かぶが、ここは山の中で山道に沿い、桜などの木々の間に咲いているところが特色である。





山道を登るにつれて視界がぱあっと開けてくるが、広がったパノラマの中に、色鮮やかなアジサイが点景として登場するところがいい。こういう景色には、なかなかお目にかかれない。







山上に着いて県道(土産物屋のある通り)を蔵王堂に向かうと、沿道にはまた違った種類のアジサイが咲いていて、これもぜひご覧いただきたい。





私が訪れたのは「あじさいまつり」の初日(6/13)だったので、花はまだ咲き始めだったが、今はもう見頃を迎えていることだろう。幸か不幸か、最近は梅雨とはいえお天気続きだし、この週末(6/27~28)にはイベントも開催されるので、ぜひお訪ねいただきたい。なお歩くには、やはりロープウェイで一旦山上へ行き、そこから麓へ向かって七曲りを降りる方がラクであるので、念のため。
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崩壊!日吉館

2009年06月24日 | 奈良にこだわる
昨日(6/23)の読売新聞に《日吉館よ さよなら 解体工事始まる》と言う記事が出ていた。《作業員5人が木造2階建ての建物の周囲に足場を設け、屋根から防音シートをつり下げた。通行人らは、シートで覆われる様子を名残惜しそうに見守りながら、カメラで撮影していた。解体工事は7月上旬に完了する》とのことだった。
うっかりしているうちに、もう解体工事が始まっていたのだ。

「事件は現場で起こっている」。早速、昨日の会社の帰り、現場に立ち寄ってみた。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nara/news/20090622-OYT8T01070.htm

隣の建物は、釜飯の志津香(しづか)

県庁側から坂を登っていくと、建物が見えてきた。すでに、すっぽりと防音シートで覆われていた。見るも無惨な姿である。建物の横には解体業者の表示も出ている。後ろの建物の解体は、これからのようだが、相当傷んでいるのが見て取れる。こうして日吉館は、なくなってしまうのだ。何とも無念なことである。

私が日吉館の取り壊しを知ったのは、5/13付の奈良新聞だった。見出しは《「日吉館」取り壊しへ-文化人が愛した宿》だ。引用すると…。
http://www.nara-np.co.jp/n_soc/090513/soc090513a.shtml

《会津八一ら多くの文化人に愛された奈良市登大路町の旅館「日吉館」が、老朽化のため取り壊されることが分かった。名勝奈良公園の一角で、所有者の申請を受けた文化庁が現状変更を許可した。店舗兼用住宅に生まれ変わる予定で、古都の名物旅館は多くの思い出とともに姿を消す》。

《日吉館は奈良国立博物館北側にあり、平成10年に88歳で亡くなった田村キヨノさんが切り盛りしてきた。延べ床面積約250平方メートルの木造2階建て。歌人で早稲田大学教授だった会津八一や「古寺巡礼」を著した和辻哲郎、評論家の小林秀雄ら多くの文化人が定宿とした》《学生にも愛されたが、田村さんの高齢化で平成7年に廃業、約80年の歴史に幕を閉じた。セミナーハウスとして活用する計画もあったが、立ち消えとなっていた》。


背後の建物は、まだ残っていた

地元有志の間から「セミナーハウスとして活用したい」という声が上がったのは3年前のことだが、彼らの話では「所有者の同意が得られなかった」のだそうだ。所有者間の「権利関係が複雑だった」という話も聞いた。決して、自然に「立ち消え」となったのではない。

私は日吉館に泊まったことはないが、宴会で使わせてもらったことがある。素朴な家庭料理が出てきたという記憶がある。帰り際には、奥に座っておられた田村キヨノさんに、挨拶させていただいた。ならまちの町家のような雰囲気の旅館だった。


ネットには出ていないが、奈良新聞(5/13付)の記事には続きがある。手元の切り抜きによると《今年に入って所有者が建物の解体を文化庁に申請。県教育委員会が建物を調べたところ、柱が傾くなど中に入るのも危険な状態で、報告を受けた同庁は再利用不可能と判断した》。
http://blogs.yahoo.co.jp/kazupon279/26696928.html

《周辺は第一種風致地区と歴史的風土特別保存地区。奈良市景観課にほぼ同面積の店舗付き住宅で申請が上がり、先月3日に許可された》。

《文化庁(文化財部)記念物課の担当者は「保存の動きをもう少し早く知っていれば」と残念がる。現在のままでは倒壊の危険もあり、所有者が県と協議することを前提に現状変更を許可したという》。

文化庁担当者のコメントが気になる。記者がつけ加えた「残念がる」は、本当なのか。「保存の動きをもう少し早く知っていれば」文化庁は動いてくれたというのだろうか。文化庁担当者の不勉強(情報不足)はさて置くとしても、霞ヶ関に対して、「地元でセミナーハウスの構想があるよ」と知らせるべきは、(現地調査担当の)奈良県教育委員会なのだろうか。県教育委員会が早い段階でそのことを報告してさえいれば、この文化遺産の解体は免れたというのか。


※解体前の日吉館:橋川紀夫氏のホームページ「奈良歴史漫歩」(No.067 日吉館の記憶)より拝借       
http://www5.kcn.ne.jp/~book-h/mm070.html

日吉館の常連客にはマスコミ関係者もいるが、早くに全国紙で報道されていれば、文化庁を動かすことができたのだろうか。また、われわれ県民が打つ手はなかったのだろうか…。考えれば考えるほど、疑問や後悔の念が浮かび上がってくる。

記念物とはいえ、私有財産の処分に文句をつけてはいけないのだろうが、権利関係が複雑で所有者が手放さないと聞いていた日吉館が、たった3年で方向転換し、手回しよく市の許可も得て、あっさり解体・新築されてしまうというのは、どうも後味が悪い。これは、新たな反省材料としなければならない。

近代奈良の貴重な文化遺産が、また1つ失われてしまった。文化庁が《正面外観を現状に近いものにすることや、使える部材の活用を所有者側に求めている》ということを、(強制力はないものの)せめてもの救いといなければならないのだろうか。
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第2回 さくらの学校

2009年06月23日 | 奈良にこだわる
6/13(土)、吉野山で開かれた「第2回 さくらの学校」(吉野町、吉野山保勝会主催、吉野の桜を守る会共催)という催しに参加してきた。桜の聖地・吉野山のシロヤマザクラ(約3万本)は全国に有名だが、近年は立ち枯れなど、衰退の兆候が目立ってきている。これを憂える人々が「どげんかせんといかん」と立ち上がり、桜を守る様々な活動に取り組んでおられるのだ。

この日、現地集合は午前9時半だったで、早朝に奈良市の自宅を出発した。近鉄電車の急行で橿原神宮前駅へ、そこから吉野行き特急に乗り換え、終点吉野駅へ。ここでロープウェイに乗り換える。




見下ろすと、農作業のおっちゃんたちが休憩中

このロープウェイ(吉野大峰ケーブル自動車の経営)は、国内で現役最古のロープウェイである。開業は1929年(昭和4年)だから、もう80歳なのだ。吉野山駅までの距離は346m、高低差は101mで、乗車時間は約3分間である。


銅(かね)の鳥居の傍らでは、アジサイが咲き始めていた


銅の鳥居を振り返ったところ。右は柿の葉寿司の名店「ひょうたろう」


金峯山寺・仁王門(国宝)


向こうに見えるのが蔵王堂(金峯山寺本堂)。仁王門は北向きだが、蔵王堂は南向き
蔵王堂は熊野からの参詣者を迎え、仁王門は吉野から熊野へ参詣する人を迎える

このイベントのことは、読売新聞(6/14付)に詳しく紹介されている。《奈良県吉野町の旧吉野山小学校の校庭などで13日、桜の歴史や保護育成の大切さを学ぶ「第2回さくらの学校」(吉野町、吉野山保勝会主催、吉野の桜を守る会共催)が開かれ、守る会に協力する南都銀行の行員家族や、授業で桜の苗を育てる県立吉野高生ら計約100人がサクランボ拾いや果肉取りを体験した》。
http://osaka.yomiuri.co.jp/sakura/yoshino/20090614kn05.htm


挨拶される吉野町長の北岡篤氏




吉野町教育長・芳水正博氏の説明

《さくらの学校は、同小で取り組んでいた「さくらの授業」を復活させようと、4月に開設。この日は町教育長の芳水正博さん(61)、向井英彌さん(67)、笹木育子さん(59)の3人の元同小教諭が講師を務めた。初めに、芳水さんが「桜は戦時中にまきに使われて減った。子どもに優しい心を育てようと、旧吉野山小でサクランボ拾いが始まった」と説明した》。





このあと参加者は3つのコースに別れ、さくらんぼの実を採取。私は「たくさんの人に来てほしい」という「五郎平茶屋」へ。上千本の絶景が楽しめ、桜の季節には有料の桟敷席になるそうだ。周辺にはたくさんの桜の木があって、さくらんぼが採りやすいのだ。





さくらんぼは、あとで実から種を採りやすいよう、できるだけ熟した紫色のものを選ぶ。木の上のものを摘んでもいいし、落ちているのを拾ってもよい。ちょうど紙コップ1杯分採ったところで、昼食休憩となった。



お弁当のあと、町内を抜けて集合場所に戻った。道の両側にはたくさんのお土産物屋さんが並ぶ。桜の季節にはごった返すのだろうが、今の時期は、新緑とアジサイを楽しむお客さんがちらほら。


焼酎ベースのリキュール「さくらさらさら」(北岡本店)。奈良だと「奈良の八重桜」なのだが

《参加者は中千本や上千本などに移動。向井さんや笹木さんらの指導で、熟した実を拾ったり、摘み取ったりし、水の中でもみほぐして種を取り出した。種は持ち帰って育てる》。



実をもみほぐして種を取り出す作業が、結構大変である。最後に種だけをネットに入れ、持ち帰って冷蔵庫で保存し、2~3月頃にプランターに植える。うまく芽が出れば、主催者に報告することになっている。芽はそのまま家でそだてても良いし、吉野山に持ってきても良い。



《奈良市押熊町、市立東登美ヶ丘小4年田原怜奈さん(9)は「実は初めて見たけれど、ブルーベリーみたい。育てるのが楽しみ」と喜び、藤井泰育・吉野山保勝会理事長は「多くの苦労をしなければ、桜は育たないということを感じてもらえたと思う」と話した。2004年に旧吉野山小と統合した町立吉野小でもサクランボ拾いの伝統が受け継がれており、今月3日、4年生33人が1人200~300粒ずつを集めた。今後、苗木を育てるという》。

吉野山のシロヤマザクラは、実生(みしょう)といって、接ぎ木や挿し木ではなく、種から芽を出させて育てなければならない。そこが挿し木で増やせるソメイヨシノなどとの違いである。また、こんなに苦労して取り出した種を植えても、発芽する確率は低いし、芽が出ても雑草に負けてしまうことも多い。



しかし、苦労してでも桜の苗を育てないと、吉野山の桜は壊滅してしまうかも知れない。それほど吉野の桜は老化し、コケや害虫に痛めつけられているのだ。

「吉野の桜を守る会」は昨年(08年)9月、地元の「さくらAID(エイド)実行委員会」(吉野山保勝会、吉野町観光協会、吉野山観光協会、金峯山寺)、「奈良県」、「吉野町」、「読売新聞大阪本社」の計4団体により設立された。
※活動内容は、以下のサイトに詳しい。
http://www.nantobank.co.jp/news/090417.htm

これまで、チャリティーコンサートやパネルディスカッション、ガイドブックの発刊、募金活動などを展開している。奈良県が、そして日本が誇る吉野山の桜を守る活動に、ぜひご理解とご支援をいただきたいと思う。
※「吉野の桜」を保護するため 支援をお願いします
http://www.osaka-event.com/event/08bokin/index.html
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