tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

喜光寺(奈良市)、浄願寺(葛城市)でハスが見頃。ぜひ午前中に!(2012Topic)

2012年06月30日 | お知らせ
喜光寺(奈良市)と浄願寺(葛城市)で、ハスが見頃を迎えている。朝日新聞奈良版(6/29付)「大輪 涼やか」によると《白や赤、ピンクなどのハスの花が、奈良市菅原町の喜光寺で見ごろを迎えている。226鉢に約40種類。8月上旬までの午前中が見ごろ。小林澤應(たくおう)副住職(45)は「種類によって開花時期が違う。何度か足を運んで色々な表情を見てほしい」。拝観時間は午前9時からだが、7月の週末に限り午前7時から。拝観料は大人500円、小中学生300円。問い合わせは寺(0742・45・4630)へ》。
※写真はすべて、喜光寺で撮影(05.6.25)





奈良新聞(6/28付)「現世の極楽 喜光寺・ハス」には《行基ゆかりの古刹として知られる奈良市菅原町の喜光寺で、境内のハスが見頃を迎えている。古代の種から再生した「大賀ハス」や白く美しい「白光蓮」など、約30種、200鉢が本堂の周囲を彩る。同寺は東大寺の大仏造立に奔走した僧、行基が建立したことで知られ、本堂(重要文化財)は「試みの大仏殿」と呼ばれている。同寺によると、7月末ごろまで楽しめそう》。



浄願寺では、バラやアジサイも楽しめる。奈良新聞(6/30付)「癒しの庭に彩り 葛城・浄願寺でハス見頃」に《行基菩薩が開基した葛城市寺口の浄願寺(鷲尾隆継住職)でハスの花が見頃を迎えた。「癒しの庭」をテーマに、仏教の根幹を成す教え「六道輪廻」を中心に設計された庭園の中央で開花。30種、30鉢のハスの花が次々と開いている》。



《開園3年目となるこの庭は「都会で疲れた心を癒して社会に戻ってもらいたい」との思いで造られたもの。四季を通じて花が楽しめ、現在はバラやアジサイも見頃に。ハスの花は例年より少し早く今月23日ごろ開花。見頃は7月10日ごろまで、と同寺。「ハスの花をめでるなら なるべく午前中に」とも話している》。



順序としては、先に浄願寺を訪ね、喜光寺は7月末までにゆっくり訪ねれば良いことになる。「ええ古都なら」(南都銀行の観光サイト)によれば、ほかにも6ヵ所ほど、県下のハス名所が紹介されている。梅雨は鬱陶(うっとう)しいが、そぼ降る雨に打たれるハスは、風情がある。ぜひお訪ねいただきたい。
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川上村で 大滝ダム試験湛水完了記念物産展、6/30(土)開催!(2012Topic)

2012年06月29日 | お知らせ
明日(6/30)川上村で村主催の物産展が開かれる。奈良新聞(6/28付)「ダム完成間近 川上に来て! 柿の葉ずしや木工品 30日に物産展」によると《川上村の大滝ダムの試験湛水が完了したのを記念する物産展(同村主催)が30日午前9時から午後4時まで、同村迫(さこ)の村役場周辺で開かれる》。
※写真は平寿夫さん(写真家)からいただいた(川上村で6/6に撮影されたもの)

《大滝ダムの完成が近づいているのをPRするとともに昨年の台風被害、その後の風評被害で激減した観光客を誘致するのが目的。村特産の柿の葉ずし、木工製品などを販売するほか、ダム下流域の和歌山市の協力による海産物の販売、岡山県蒜山高原の乳製品の販売も行われる。問い合わせは、村地域振興課、電話0746(52)0111》。村のHPでも紹介されていた。

大滝ダム試験湛水完了記念物産展

大滝ダム試験湛水完了記念式典の同日に 吉野川(紀の川)源流部の川上村で物産展を開催します。川上村の特産品の柿の葉寿司、こんにゃく、木工製品、かきもち等の販売や観光PR、和歌山市の海産物販売、岡山県蒜山高原の乳製品販売もあります。

イベント名 大滝ダム試験湛水完了記念物産展
日  時 平成24年6月30日(土)午前9:00~午後4:00(雨天決行)
開催場所 道の駅杉の湯川上及び役場前駐車場周辺
主  催 川上村
後  援 川上村商工会・川上村観光協会・川上村ふるさと市場
協  力 和歌山市



長年の村の悲願であった試験湛水がやっと完了し、この日に記念式典が行われるのである。大谷村長も、これを機に引退される。msn.産経ニュース(6/5付)「全国最高齢、88歳の首長 奈良・川上村の大谷村長が引退表明」によると《全国最高齢首長の奈良県川上村の大谷一二(いちじ)村長(88)が5日、任期満了の7月24日で引退すると発表した。大谷村長は昭和55年に初当選し、現在8期目。大谷村長は「就任当初から始まった大滝ダムの建設が一段落し、30日に試験湛水が完了するので、1つの区切りだと考えた」と引退の理由を説明した。全国町村会などによると、大谷村長が引退すれば、香川県綾川町の藤井賢町長(83)が全国最高齢首長になる》。

村長が引退の契機にするほど、大きな事業の区切りなのである。なお88歳(大正生まれ)というご高齢であるが、村長はいつも矍鑠(かくしゃく)とされていて、イベントなどでは心のこもった挨拶をされるし、動作も機敏で肌もツヤツヤされていて、全くトシを感じさせない。美味しい空気と美味しい水、自然の恩恵や脅威との共生、濃密な人間関係、便利すぎない生活などが幸いしているのだろう。川上村が高齢化している、限界集落になった、などというが、都市部の前期高齢者(65~74歳)などより、よほど元気に満ちている。

明日は曇り(降水確率40%)の予報だが、雨天決行である。ぜひ川上村を訪ね、元気をもらってきていただきたい。
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壷阪寺のラベンダーが、咲き始めました!(2012Topic)

2012年06月28日 | お知らせ
壷阪寺(高市郡高取町壷阪)は、西国33ヵ所第6番札所で眼病平癒の寺として知られているが、春のヤマブキ、秋の紅葉、冬の雪景色も見事である。これからの季節は、甘い香りのラベンダーである。お寺に問い合わせると「そろそろ咲き始めていまして、7月初旬までが見頃です」という。土日でいうと、6/30(土)・7/1(日)~7/7(土)・7/8(日)ということになる。このお寺、『奈良まほろばソムリエ検定 公式テキストブック』(山と渓谷社刊)によると、
※ラベンダーの写真は、お寺のホームページから拝借。今年の写真ではないので、ご注意を



正式には南法華寺、俗には壷阪観音という。大宝三年(七〇三)に佐伯姫足子入道尼(善心)が高市郡に建てた、あるいは大宝三年に元興寺の僧、弁基大徳が建立したともいう。境内から出土する白鳳期の瓦は両説の年代と一致する。平安時代には長谷寺とともに定額寺に列せられ、『枕草子』『今昔物語集』などの王朝文学にも名のあがる著名な寺になった。

嘉保三年(一〇九六)に本堂、礼堂、五大堂、弥勒堂、宝蔵、船形房、客房、小板敷などが焼失したが、これらはその後再建。南北朝時代以降は高取城を拠点とする越智氏の寺になったものの、その滅亡とともに寺も衰微した。



慶長年間(一五九六~一六一五)に高取城主の本多氏によって修復がなされ、寛永年間(一六二四~四四)以後は高取城主植村氏の庇護により栄えた。明応六年(一四九七)に建立された三重塔と室町時代中期の礼堂、絹本著色一字金輪曼荼羅図や鳳凰文塼が重要文化財。

盲目の沢市と、その眼を治そうと壷阪寺の千手観音に通い詰めた献身的な妻お里の人情話を描いた世話物浄瑠璃「壺坂霊験記」でも知られ、眼病平癒の祈願に訪れる参詣者も多い。西国三十三ヶ所の第六番札所。


この写真は、4/29に撮影(「ナント・なら応援団」のガイドの様子)

Wikipediaで初めて知ったのだが、ラベンダーはシソ科の植物なのだそうだ。どうりで香りが高いはずである。《ラベンダーは、シソ科の背丈の低い常緑樹である。原産は地中海沿岸とされる。主に、ポプリ・ハーブティー・アロマセラピー・観賞用などに利用され、春に紫や白、ピンク色の花を咲かせる様々な品種がある。中でも紫色の花が最もポピュラー》。

《ラベンダーには鎮痛や精神安定、防虫、殺菌などに効果があるとされる。属名の Lavandula は「洗う」という意味のラテン語に由来する。これはローマ人達が入浴や洗濯の際にラベンダーを湯や水に入れることを好んだためとされる。主に、芳香剤(香料)・観賞用として利用されるが、葉のみならず花も食用》。「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)によると《俗に「精神を鎮静させる」といわれており、ドイツのコミッションE (薬用植物の評価委員会) では、不眠症や神経性胃炎に対する使用が承認されている》ということなので、いわば「癒し」の花である。ぜひいちど、お訪ねいただきたい。
※近鉄の「花だより」(ラベンダー)は、こちら
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飯豊天皇埴口丘陵と柿本神社(葛城市新庄)

2012年06月27日 | 記紀・万葉
6/18(月)、出張で新庄(葛城市)へ出かけた。近鉄新庄駅で降りると、駅前にこんな看板が立っていた。「飯豊(いいとよ)天皇埴口(はにくち)古墳 踏切西(銀行前)左折(徒歩12分)」「柿本神社 近鉄新庄駅すぐ西(徒歩2分)」とある。これはぜひ、帰りに立ち寄って見なければ…。




沿道には、こんなきれいな花が咲いていた



飯豊天皇は、正式の天皇ではない。だから宮内庁のサイトの「天皇一覧」(大正時代に歴代天皇として確定され、現在広く知られている歴代天皇の一覧)には載っていない。Wikipedia「天皇の一覧」には「一説に天皇とされる者の一覧」という欄に《飯豊青皇女(いいとよあおのひめみこ) 履中天皇の娘(異説あり)。22代清寧天皇の崩御後、23代顕宗天皇・24代仁賢天皇が皇位を譲り合っている間、天皇としての政務を行っていた。『扶桑略記』などに「飯豊天皇」とある》と出ている。


駅から徒歩7~8分で、御陵が見えてきた





ネットで百科(平凡社『世界大百科事典』)には「飯豊青皇女 5 世紀末の皇女。 飯豊女王,忍海部女王などともいう。 履中天皇の女で市辺押羽皇子の妹にあたり, 母は葦田宿衝 (損城襲津彦の子) の女黒媛とも, 市辺押羽皇子の女で,母は蟻臣 (葦田宿衝) の女藻(はえ) 媛とも伝える。 《日本書紀》の顕宗即位前紀によれば, 清寧天皇が没したあと皇位継承者が定まらず久しく空位が続くので, 飯豊青皇女が忍海角刺宮でみずから〈忍海飯豊青尊〉と称して〈臨時秉政 (みかどまつりごと) 〉したとあり, 一時天皇に準ずる地位にあった可能性を伝える」。



「《日本書紀》では皇女の兄弟にあたる億計 (おけ)・弘計 (おけ) の 2 王が皇位を譲り合ったためとし, 《古事記》の清寧段では,姨の皇女がその後に播磨に 2 王をさがさせたとし, 諸伝に混乱がみられる。 皇女を《日本書紀》では天皇としていないが, 《扶桑略記》では〈飯豊天皇〉とし, 中継ぎの女帝としての即位を認めている。 《日本書紀》では清寧 5 年 11 月に没し損城埴口陵に葬られたとされ, 《本朝皇胤紹運録》などでは 45 歳であったと伝える」。




「飯豊天皇埴口丘陵」の文字が見える

葛城市のHPには「飯豊天皇埴口丘陵(いいとよてんのうはにくちのおかのみささぎ)」の項目があって、《歴史の表舞台から立ち去った最初の女帝と言われる飯豊天皇の墓です。「古事記」・「日本書紀」によると、角刺神社(つのさしじんじゃ、葛城市歴史博物館南隣)で政務を執り行ったことが伝えられています。所在地 葛城市北花内》と、ごく簡単に紹介されている。御陵には、宮内庁の「飯豊天皇埴口丘陵」という標識があった。



もう1つの史跡、柿本神社(かきのもとじんじゃ)は駅前にあった。「柿本山 影現寺」というお寺と同じ敷地内にある。葛城市のHP「柿本神社」によると《祭神は「万葉集」第一級の歌人と称される柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)です。石見国(島根県益田市)で没した人麻呂を770年に改葬して、かたわらに社殿を建てたのが始まりといわれています》。





《隣接する影現寺(ようげんじ)と共に、人麻呂の命日に毎年4月18日にはチンポンカンポン祭が行われます。人麻呂による葛城をしのぶ歌としては、「春楊(はるやなぎ) 葛木山に たつ雲の 立ちても坐ても 妹をしそ思ふ」があります。所在地 葛城市柿本187-1 電話 0745-69-2804 アクセス 近鉄御所線近鉄新庄駅より徒歩すぐ》。



「チンポンカンポン祭り」とは面白いネーミングである。市の「葛城の観光情報」によると

Q:チンポンカンポンの由来は?
A:鐘や太鼓の音と言われています。

Q:チンポンカンポン祭りの開催日は?
A:4月18日です。

Q:チンポンカンポン祭りの開催場所は?
A:柿本神社、影現寺(葛城市柿本)です。

Q:チンポンカンポン祭りの開催時間は?
A:14:00~影現寺で法要
  15:00~柿本神社で法要
  16:00~御供(もち)まき

Q:チンポンカンポン祭りに参加したい
A:法要は外からの見学になります。
  御供(もち)まきは参加できます。


なるほど。こんなお祭りがあったのだ。近鉄新庄駅の次の「忍海(おしみ)駅」の近くには「角刺(つのさし)神社」があり、この地に飯豊青皇女の「忍海角刺宮(おしぬみのつのさしのみや)」があったとされる。次はぜひ、こちらも訪ねてみたい。
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観光客の満足度をアップする「現地サプライズ」 観光地奈良の勝ち残り戦略(61)

2012年06月26日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
「とーりまかし」という情報誌をご存じだろうか。リクルートの「じゃらんリサーチセンター」(JRC)が発行する「心を動かす、日本を元気にする 観光・レジャーのプロデューサー応援情報誌」で、「一般個人の方への送付は行っておりませんのであらかじめご了承ください 」というレア物(非売品)である。
同誌のHPから6月号の中身を拾うと、

・【プロジェクトレポート】 パンフ充実、仲居さんのクチコミetc…
 リピーター増に効く 着地での情報提供

・【第2特集】全国89カ所のゲレンデが19歳無料!いま取り組むべき課題と先進事例を検証
 スノーエリア再活性化のための若者需要創出プロジェクト
 雪マジ! 19~SNOW MAGIC~
     
 
      
・【第3特集】地域が継続的に成長し続けるために…
 地域の構成要素とつながりを探り、強みと課題を可視化!
 検証!じゃらん流・地域活性化フレーム


「(第1特集の)リピーター増に効く 着地での情報提供が面白いよ」と長岡光彦さん(奈良市観光協会事務局長)がこのレア物を見せてくださった。確かに、これは目からウロコが落ちた。インターネットによる全国調査がベースになっていて、きちんと分析もできている。ぜひ皆さんに紹介したいので、少し長くなるが全8ページのこの特集の勘所を、以下に列挙してみる。まずは結論「とーりまかし的考察」(P11)の全文を紹介する(以下、引用文中の下線は、すべて私がつけた)。

とーりまかし的考察
近年、地域主体で地域資源を発掘し磨いて、旅行商品を造成・発信する「着地型観光」の動きが各地で生まれている。それぞれ地域の魅力が詰まった内容と推察されるが、まだまだ旅行者への認知・流通には課題を感じている地域も多いのではないだろうか。今や、日本人の国内旅行市場の約9割を、個人で宿泊施設や交通を手配する旅行が占める時代となっている。着地型観光の流通を考えるときには、団体ツアーヘの組み込みだけではなく、約9割を占める個人旅行者にどのようにPRしていくかが鍵となるのは間違いない。一方、宿泊も交通もネットで手配して目的地に到着したのはいいが、旅先で今日をどう過ごせばいいか分からない人がいる。

今回の調査では、旅の満足度を飛躍的に高め、リピーターを生むことに、旅先(着地)での想定外の体験や、その土地ならではの経験が寄与している との結果となった。地域で次々と生まれている着地型観光の情報が、着地にて、旅行者が欲するタイミングにて提供され「思い立って参加」することができる受け皿があれば、旅行者に「想定外」で「地域ならでは」の旬な体験をもたらす可能性を生む。着地型観光というコンテンツと、旅行者の情報接触タイミングにあわせた情報発信の両輪が実現すれば、結果として、地域滞在時間が増え、満足度は上がりリピート意向も高まるという好循環が生まれていくのではないか。(文責:JRC研究員加藤史子)


以下、P4から、記載順に抜粋して紹介する。

Step1.着地での情報収集の充実度が旅の満足度を左右する

旅の情報への接触度合いと、その旅の満足度の間にはどんな関係があるのか?出発前と到着後、各タイミングでの情報収集に関するデータを見てみると、地域を訪れた旅行者への情報提供の大切さが浮き彫りとなった


まずは各旅行者が実際に行った直近の旅について、情報への接触状況と満足度がどんな関係にあったかを見てみよう。なおここでいう情報とは、「観光する」「体験する」「遊ぶ」「食べる」「買い物する」など、着地(旅先)での行動を決めるための情報であり、新幹線や飛行機など着地までの移動手段や、宿泊施設についての情報は含まない。
 
「綿密に計画した」(出発前)、「追加変更がたくさん」(着地で)で「非常に満足した」と答えた率が高いということは、出発前、到着後にかかわらず、より多くの情報に触れた人ほど旅の満足度が上がることを示している。綿密な計画も追加変更も、情報なしにはできないからだ。出発前の情報収集について、着地側でコントロールできることには限界がある。しかし、地域を訪れてくれた人に向けた情報なら比較的発信しやすい。着地で情報を得て計画の追加変更をしている人が「非常に満足した」と感じているというこの結果は、着地での情報提供も十分効果的であることを物語っている。

7割の旅行者が着地でも情報収集して予定を追加・変更
「現地で人手した情報をもとに予定を追加したり、変更することがたくさんある/いくつかある」と答えた人は7割を超え、着地での情報提供の重要性を感じさせる結果となった。とろこで、着地で情報収集や計画変更をするのは、出発前の情報収集が不十分なせいかというと、決してそうではないようだ。

基本情報は十分押さえた上で計画変更をする旅行者に必要なのは、出発前には得られない、現地ならではのプラスαの情報ではないだろうか。

Step2.「非常に満足」と言わせる情報提供とは? すきま時間の活用、旬な体験、想定外の楽しみが差をつける

「非常に満足」な旅をした人は、他の人とは違うどんな体験をしたのか?どんな体験が旅行者の満足度アップにつながるのかが分かれば、着地で提供すべき情報の内容も見えてくる

「非常に満足」な旅には想定外の体験が多い

ここまでのデータにより、旅行者が着地で計画を追加・変更できるよう情報を提供することが、「非常に満足」と感じてもらい、ひいてはリピートしたいと感じてもらうための有効な手段になり得る、ということが見えてきた。では、どのような情報を提供すれば、満足度アップにつなげることができるのだろうか。これを知るために、まずは旅行者が旅の間に実際に体験したことと、その旅の満足度の関係を見てみよう。

今回探りたいのはあくまで、強いリピート意向につながる「非常に満足」を実現するためのポイントだ。そこで注目したいのが「非常に満足」した人と、単に「満足」した人で体験率に差のある項目。

「出発前に予定していなかったレジャー・観光スポット・食事処・お店などで想定外の良い体験をすることができた」については、「非常に満足」した人の68%が体験しているのに対し、「満足」した人は47%とその差20ポイント以上。予定外・想定外の体験は、より強い満足度につながると言えるだろう。同様に、その土地・その季節ならではの旬な体験や、すき間時間の有効活用なども「非常に満足」と「満足」を分ける重要な項目。体験率そのものは低いが、「地元の人とのふれあい」も大きな差の付くポイントとなった。

着地での情報提供によって、重要項目の体験率を上げる
旅を終えて「非常に満足」と感じてもらうためには、とくにこれらの項目についての体験率を上げていくことが有効と考えられる。そしてそのために欠かせないのが、その体験に関する情報提供だ。たとえば、地元の人しか知らない現地情報は、出発前の計画にはなかった「想定外」の体験を生むだろう。「今日は地元でお祭がある」「市場には出回らないこんなおいしい魚がある」といった情報は、その土地、その季節ならではの「旬」な体験につながる。電車の待ち時間や急な天気の変化によって生まれる「すきま時間」は旅につきものだが、そのような手持ち無沙汰な時間を予測して、短時間で行ける近隣の観光スポット情報を提供したり、手軽にできる体験メニューを紹介したりするのも喜ばれるだろう。地元の人と旅行者をつなぐ情報も、地域だから提供できるものの一つ。こういった情報の一つひとつが、リピート意向を生か強い満足につながるのだ。

Step3.効果的な情報提供方法は? 有効なツールは「紙」と「人」。勝負タイムは「ついで」のひととき

旅行者に情報を提供するには、いつ、どんな方法で行うのがよいのか。旅行者が実際に参考にした情報源、情報を得たタイミングを尋ねたデータから、着地での情報提供に最適な方法を探ってみた

地元発の情報誌やチラシ クチコミ情報が活用度大

図6は、旅行者が目的地に着いてから利用し、「参考になった」と感じた情報源は何かを挙げてもらった結果だ。目立つのは、チラシ、小冊子、割引チケット、地図、旅行情報誌といった「紙」メディアの活用度の高さ。自ら持参したとみられる旅行専門雑誌や旅行ガイドブックよりも、現地で入手したメディアのほうが活用されている点も見逃せない。

もう一つ注目すべきは「人」への依存度の高さだ。中でもとくに多いのは、「ホテル・旅館など宿泊施設の従業員」を情報源としたケース。このことは、情報を入手するタイミングとも深い関わりがある。情報を人手したタイミングで最も多いのは、「宿泊施設でチェックインした際に」で、着地で情報を得た人の3割以上。宿へのチェックインという、必ず発生する手続きのついでに情報収集している人が多いのだ。同じ「人」でも、観光案内所のスタッフ以上に宿泊施設の従業員に頼る例が多いのは、情報収集がこのような「ついで」のタイミングで行われていることの証とも言えるだろう。

目的地で情報源に接触し、それを活用した人のうちでは、紙メディア利用者は約4割、人に頼った人は約3割。しかし、真の最多回答は「情報には接触していない・覚えていない・わからない」で、全体の3割以上を占めることにも気をつけたい。これまで見てきた情報提供の重要性を考えると、改善すべき事態だといえるだろう。ちなみに、現地の紙メディアや人は、「想定外の体験」や「すきま時間の活用」「地元の人とのふれあい」など、「非常に満足」につながる体験の情報源としての利用率が高いという結果も出ている。これから取り組むなら、まずはここから着手してみるとよいのではないだろうか。

ITよりクチコミに軍配 ただし若年層はITも活用
今すぐIT環境を整えるの難しくても、まずは人が積極的に情報提供をするこ
とで満足度アップは図れるということだ。同時に、IT環境を整え、旅行者の主体性に任せて情報収集してもらうだけでなく、着地側から働きかける情報提供も求められているのだということを肝に銘じておきたい。


金沢ニューグランドホテル(じゃらんnetより)


事例 着地で伝えて満足度アップ! 技アリ情報伝達事例
いざ着地から情報発信するとなると、誰が主役となって進めるのか、どのように情報を集め、どのように形にすればよいのかと悩みは多い。すでに情報発信に取り組んでいる事例をもとに、その解決方法を学んでみよう

技アリ情報伝達事例①
地元出身スタッフの手書きマップを宿泊プラン予約者の分だけコピー配付
金沢ニューグランドホテル 客室数/215室 従業員数/100名

金沢ニューグランドホテルの技アリ

内容 想定外の体験
金沢っ子であるスタッフが選ぶ、ガイドブックには載らない情報が、旅行者にとっては計画の変更に役立ち、「想定外」の体験を生む

伝えたツール A4用紙1枚のマップ(6種類)
旅行者が手に持って歩きやすい1枚もののマップ。スタッフ自ら手描きしたものなので、コストもほとんどかからない

伝えたタイミング チェックイン時または部屋への案内時
できる限りチェックイン時のフロントで作成者自身が説明を添えて手渡すが、難しい場合は客室への案内係が案内時に手渡す

技アリ情報伝達事例②
クーポン付き地元観光情報誌を制作し 組合加盟宿の全4000室に配置
河口湖温泉旅館協同組合 加盟宿/23施設

河口湖温泉旅館協同組合の技アリ

内容 想定外の体験、お得な情報
目指すのは一般ガイドに載らない地域ならではの情報の紹介。割引等のサービスを設け、本誌を手にした人にだけのお得感も演出

伝えたツール フリーペーパー(B5版28ページ)
持ち歩きやすさを考えたサイズで発行。実制作は広告代理店に依頼するため費用はかかるが、広告収入でプラスになっている

伝えたタイミング 客室で過ごす時間、食事時など
組合加盟宿の全客室に配置。さらにあらゆる「ついで」の機会に手にしてもらうため、飲食店や立ち寄り施設にも置いた


引用は、以上である。冒頭に掲げた「着地型観光というコンテンツと、旅行者の情報接触タイミングにあわせた情報発信の両輪が実現すれば、結果として、地域滞在時間が増え、満足度は上がり リピート意向も高まる」(とーりまかし的考察)の意味が、よくお分かりいただけたのではないだろうか。織田裕二の「事件は現場で起きている」ではないが、「お客の満足度を左右する行為は、現場で起きている」のである。

私にも、こういう経験はよくある。最近では「ホテルのせ川」(野迫川村)、「吉野荘 湯川屋」(吉野町)、「ホテルかみきた」(上北山村=現在閉鎖中)などでこのような体験をしたが、ダントツは、やはり7年前(2005年)に泊めていただいた「民宿あおば」(天川村)である。当時、県が「『もてなしの心』に触れた提言・体験談」を募集していたので、私はこんな体験談を書いて応募し、思いがけず「もてなし賞」をいただいた。

「民宿あおば」の外観(楽天トラベルのホームページより)

「もてなしの心に触れた事例」と聞かれて、まず思い出すのは天川村での体験である。今年(05年)8月末近く、遅い夏休みを取ってこの村を訪ねた。家族との日程調整がつかず、思いがけない3日間の気ままな一人旅となった。村ではずいぶん多くの方のご厄介になった。総合案内所の職員さん、「栃尾観音堂」のご近所さん、「みずはの湯」の常連さん……。

なかでも特筆すべきは、3日間お世話になった「民宿あおば」(吉野郡天川村北小原24)だ。浪花っ子のご主人は、都会人の目線で、この世界遺産の村の素晴らしさを語って下さった。地元出身の女将さんの手料理は、とても美味しかった。アマゴの塩焼き、名水豆腐に刺身こんにゃく、それに地場の野菜を使った郷土料理の数々。自家製のトウモロコシやスイカは、とろけるように甘かった。



「民宿あおば」の洋室(同民宿のホームページより)

夜、ご主人から「星を見ませんか」と誘われた。表に出ると、澄みわたった満天の星空に天の川、そこに幾筋もの流れ星。夜風に乗って、川のせせらぎと虫の声が聞こえて来る。いつまで見ていても見飽きなかった。あんなに長い時間、星空を眺めたのは何年ぶりのことだったろう。翌日はご主人の薦めに従って、観音峰という山に登ることにした。女将さんは昼食のおにぎりに、名水のペットボトルとおやつの「ゴマせんべい」まで持たせてくれた。頂上では、開き始めたススキの穂が風にゆらゆら揺れていた。涼風に吹かれながら食べたおにぎりの味は、格別だった。



同民宿名物・朴の葉寿司(同)

訪れた土地の生活文化を体験するのが旅行の醍醐味だとは常々思っていたが、今回の旅は、まさに目的にかなったものとなった。思えば最近は、宿泊といえばマニュアル対応のリゾートホテルや会話がなくてすむビジネスホテルばかりだった。久々に心のこもった歓待を受け、どこかに置いてきた忘れ物を突然思い出したような気持ちになった。今度は家族を連れて再びこの村を訪れよう、そして「民宿あおば」に泊めていただこう、と今から楽しみにしている


栃尾観音堂(天川村大字栃尾)に4体の円空仏があることや、観音峰がこんなに登りやすい山であることは、ガイドブックを読んでいてもなかなか分からない。ましてや、こんなに星がきれいだったとは…。

私はわりと調べてから旅に出るタイプであるが、現地情報も大事にする。「とーりまかし」に出ていたように、現地のパンフレットや、女将さんやご主人からのクチコミは、とても有り難い情報源であるし、こうして地元の方と話すこと自体が「旅行の醍醐味」なのである。

「民宿あおば」はその後、楽天トラベルで5つ星を獲得し、今、ネットを見ると、楽天トラベルの「全国 人気ホテル・旅館ランキング(総合)」で5位、「全国 一人旅向け 人気ホテル・旅館ランキング(総合)」では3位、そして「全国 一人旅向け 人気民宿・ペンションランキング(総合)」では、堂々の全国1位!なのである。ご夫婦は今に至るまで、毎年「朴(ほお)の葉寿司」を送ってくださるし、先日は久々に奈良市内で再会した。バスで奈良市に来られた折、スケジュールの途中でわざわざ足を運んでくださったのである。

あまり書かない方が良いのかも知れないが、「民宿あおば」には堂本剛が泊まりに来たそうで、今でもステージトークで「天川村の民宿では、よくしゃべるおばさんがいてね…」などとネタにしているそうである。よほど印象に残ったのだろう。天河大辨財天社(天河神社)は、芸能の神さま・市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)をお祀りするので、芸能人には縁が深いのだ。

最後にもう一度、要点を掲げておく。
Step1.着地での情報収集の充実度が旅の満足度を左右する
Step2.すきま時間の活用、旬な体験、想定外の楽しみが差をつける
Step3.有効なツールは「紙」と「人」勝負タイムは「ついで」のひととき


「リピーターの増加」が、観光地活性化のカギである。県下の宿泊施設は、ぜひこの3点を励行し、リピーターを引きつけていただきたいと思う。
長岡さん、貴重な情報をご提供いただき、有難うございました!

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