南都銀行の社内報「なんと」299号(2022夏・秋合併号)の「巻頭言」では、川上村(奈良県吉野郡)くらし定住課の辰巳龍三課長が、同村の移住・定住への取り組みを紹介されていた。地道に活動を行ってきた同村では子育て世代の移住者が増え、子どもの人数は5年間で17%増えたというから、すごい。以下に全文を紹介する。
日本一人口が減る村でのベビーラッシュ
執筆者:川上村くらし定住課
課 長 辰巳龍三(たつみ・りゅうぞう)さん
川上村は、県南東部に位置し、山林が面積の95%を占める「吉野林業」の発祥の地です。また、奈良県では「吉野川」、和歌山県に入ると「紀の川」と呼ばれる川の源流に位置し、「水源地の村」として、奈良県の多くの市町村へきれいな水を供給し続けています。
川上村の人口は、1955年には8000人を超えていましたが、ダムの建設や林業の衰退等により、人口は大きく減っており、2015年には約1300人まで減少しました。
国立社会保障・人口問題研究所が2018年に発表した「地域別将来推計人口」では、2045年までの人口減少率が「全国ワースト1」と位置付けられ、2045年には村の人口が5分の1になるという予測が発表されました。
しかし、この予測が発表されるより前の2013年から、人口減少の状況をなんとかしようと、村の若手職員が声を掛け合ってチームを作り勉強会を始めていました。
当初は、村営住宅を建てて移住者を呼べばいいと考えていました。しかしながら、スーパーマーケットやガソリンスタンドの生活インフラが少なくなる村では、移住や定住は望めないと気付きました。
村営住宅を建てるだけでなく、どうやったら村に来てもらえるのか、役場職員が課を横断して村民の暮らしを支えることを幅広く考えるようになりました。
結果として、今住んでいる村民が安心して住み続けられるように、“住み心地”を整えることを意識し、まずは、今住んでいる村民を大切にする方針に変わりました。今の村民が暮らしやすい村づくりが、結果的に外から人を呼び込む魅力につながっています。
住民の“住み心地”を整えつつ、移住推進に取り組むなか、移住を希望する人たちから「働く場所が見つかるかが不安である」という声を聞く機会が多かったので、移住希望者に働く場所を紹介するために、村内の事業所を調査しました。
そのなかで、事業所の「従業員の確保が大変」「後継者がいない」という課題が浮き彫りになってきました。移住希望者の中には村内で働く場所を探したい人がいる一方で、村内の事業者は人材確保・後継者不足を課題としていました。
「村に住み働きたい人」と「働き手を求めている事業者」をマッチングするために、村内にある複数の事業者が協力し合い、「事業協同組合かわかみワーク(以下かわかみワーク)」を2021年に設立しました。
「かわかみワーク」がいわば派遣会社のような役割を果たし、村内で住み仕事を求める人と雇用契約を結び、「かわかみワーク」がきめ細かいマッチングを行い、職員を事業者へ派遣しています。
また、川上村への移住を検討しているが、「どんな人が住んでいるのか?」「どんな生活をしているか?」と不安に感じられる方に向けて、移住体験ツアーを実施しています。
空き家の紹介や小学校等子育て環境の紹介、求人募集している事業所の紹介等川上村の『今』が分かる移住体験ツアーとなっており、移住検討者の不安を解消しています。
このように、移住・定住への取り組みを地道に行ってきた結果、子育て世代の移住者が増え、子どもの人数は5年間で17%増加しベビーラッシュとなっています。
今年度より、『子育て』・『教育』・『暮らし』・『仕事』・『住まい』の5つの施策をワンセットとして、子育て世帯に向けて情報発信を強化しています。
令和6年度には、9年間のシームレスな教育を行うことができる新築木造3階建ての義務教育学校が開校します。子育て世帯にはどんどん来てほしいです。
これからも、住民の方の“住み心地”を整えつつ、“新しい出会い”を求め、現状に満足せずに、常に新しい取り組みを打ち出していきたいです。
日本一人口が減る村でのベビーラッシュ
執筆者:川上村くらし定住課
課 長 辰巳龍三(たつみ・りゅうぞう)さん
川上村は、県南東部に位置し、山林が面積の95%を占める「吉野林業」の発祥の地です。また、奈良県では「吉野川」、和歌山県に入ると「紀の川」と呼ばれる川の源流に位置し、「水源地の村」として、奈良県の多くの市町村へきれいな水を供給し続けています。
川上村の人口は、1955年には8000人を超えていましたが、ダムの建設や林業の衰退等により、人口は大きく減っており、2015年には約1300人まで減少しました。
国立社会保障・人口問題研究所が2018年に発表した「地域別将来推計人口」では、2045年までの人口減少率が「全国ワースト1」と位置付けられ、2045年には村の人口が5分の1になるという予測が発表されました。
しかし、この予測が発表されるより前の2013年から、人口減少の状況をなんとかしようと、村の若手職員が声を掛け合ってチームを作り勉強会を始めていました。
当初は、村営住宅を建てて移住者を呼べばいいと考えていました。しかしながら、スーパーマーケットやガソリンスタンドの生活インフラが少なくなる村では、移住や定住は望めないと気付きました。
村営住宅を建てるだけでなく、どうやったら村に来てもらえるのか、役場職員が課を横断して村民の暮らしを支えることを幅広く考えるようになりました。
結果として、今住んでいる村民が安心して住み続けられるように、“住み心地”を整えることを意識し、まずは、今住んでいる村民を大切にする方針に変わりました。今の村民が暮らしやすい村づくりが、結果的に外から人を呼び込む魅力につながっています。
住民の“住み心地”を整えつつ、移住推進に取り組むなか、移住を希望する人たちから「働く場所が見つかるかが不安である」という声を聞く機会が多かったので、移住希望者に働く場所を紹介するために、村内の事業所を調査しました。
そのなかで、事業所の「従業員の確保が大変」「後継者がいない」という課題が浮き彫りになってきました。移住希望者の中には村内で働く場所を探したい人がいる一方で、村内の事業者は人材確保・後継者不足を課題としていました。
「村に住み働きたい人」と「働き手を求めている事業者」をマッチングするために、村内にある複数の事業者が協力し合い、「事業協同組合かわかみワーク(以下かわかみワーク)」を2021年に設立しました。
「かわかみワーク」がいわば派遣会社のような役割を果たし、村内で住み仕事を求める人と雇用契約を結び、「かわかみワーク」がきめ細かいマッチングを行い、職員を事業者へ派遣しています。
また、川上村への移住を検討しているが、「どんな人が住んでいるのか?」「どんな生活をしているか?」と不安に感じられる方に向けて、移住体験ツアーを実施しています。
空き家の紹介や小学校等子育て環境の紹介、求人募集している事業所の紹介等川上村の『今』が分かる移住体験ツアーとなっており、移住検討者の不安を解消しています。
このように、移住・定住への取り組みを地道に行ってきた結果、子育て世代の移住者が増え、子どもの人数は5年間で17%増加しベビーラッシュとなっています。
今年度より、『子育て』・『教育』・『暮らし』・『仕事』・『住まい』の5つの施策をワンセットとして、子育て世帯に向けて情報発信を強化しています。
令和6年度には、9年間のシームレスな教育を行うことができる新築木造3階建ての義務教育学校が開校します。子育て世帯にはどんどん来てほしいです。
これからも、住民の方の“住み心地”を整えつつ、“新しい出会い”を求め、現状に満足せずに、常に新しい取り組みを打ち出していきたいです。