tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

田中利典師の『吉野薫風抄』白馬社刊(2)/「青の吉野山、青の蔵王権現」

2022年05月31日 | 田中利典師曰く
田中利典師の処女作にして最高傑作という『吉野薫風抄 修験道に想う』(白馬社刊)を、師ご自身の抜粋により紹介するというぜいたくなシリーズ。第2回の今回は「青の吉野山、青の蔵王権現」。師のFacebook(4/23付)から転載する。
※トップ写真は、風薫る吉野山の「一目千本」(吉水神社境内からの眺め、2022.5.20撮影)

なお、文中に登場する金峯山寺のご本尊・蔵王権現像の春の特別開帳は終了した。秋は2022.11.1~11.30に開催される。Amazonで「修験道あるがままに シリーズ」〈電子版〉を検索すると、Kindle版『吉野薫風抄』が無料で読める。

シリーズ『吉野薫風抄』(2)
私の処女作『吉野薫風抄』は平成4年に金峯山時報社から上梓され、平成15年に白馬社から改定新装版が再版されました。また令和元年には電子版「修験道あるがままに シリーズ」(特定非営利活動法人ハーモニーライフ出版部)として電子書籍化されたという、私のとっておきの書籍です。

「祈りのシリーズ」の第3弾は、本著の中から不定期にですが、いくつかの内容を紹介して再開しました。なにせ若書きの文章ですので、いささか稚拙ではずかしいものばかりですが、よろしければご覧下さい。 

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「青の吉野山、青の蔵王権現」
吉野といえば日本一の桜の名勝。「一度は行ってみたいものです…」などと言われる。もちろん桜花爛漫(おうからんまん)の吉野山の絶景は素晴らしい。しかし、桜が散って新緑の時期を迎え、心地よい爽やかな風が渡る吉野山が、私は一年中で一番好きである。

新緑なのだから、正確には「緑」なのだが、私にとってはこの時期の吉野山のイメージは青である。朝靄(あさもや)の中、あるいは暮れなずむ夕闇のひととき、一瞬、新緑の全山が薄青色に染まり、修験の聖地にふさわしい佇まいを見せてくれるのだ。

第一、桜花爛漫の時期と違って、山には、人の姿がまばらである。桜の頃の喧噪(けんそう)がまるで夢だったかように、しーんと静まりかえる町並みには、俗世から抜け出たような爽やかな時間が流れている。



今年のこの5月、吉野山のシンボル金峯山寺蔵王堂で、秘仏本尊金剛蔵王権現の特別ご開帳が行われている。蔵王堂の秘仏本尊はお肌の色が普通ではない。鮮やかな青黒色である。何年か前に放送されたNHK仏像ベスト10で、「色の鮮やかな仏第1位」にも選ばれたことがあるほど、その鮮やかな青黒色は、拝む人の心を奪ってはなさない。

青の吉野山と、青の蔵王権現。まさに新緑の季節にこそ、ベストマッチな風景と言えるであろう。加えて、蔵王権現の青は、ただの青ではない。深い意味がある。「青黒は慈悲を表す」と仏典に記されるとおり、お肌の色に、仏の慈悲が示されている。

お参りされた方はご存じだと思うが、蔵王権現は怒髪(どはつ)天をつくばかりの、忿怒の形相をなさっている。それは悪魔降伏の姿なのだが、ただし、単に怖いというだけではなく、仏の慈悲で人々を救い導く、大きな願いを持った怒りの現れなのだ。

内なる悪魔を封じ、外なる悪魔を破る力、とも言えようか。親が子を叱る。叱って導く。その怒りは常に深い親の愛、親の心を奥に秘めているが、そういう親の情愛のような、慈悲の導きを青黒は表している。

新緑から深緑へと移ろい行く季節の中で、一度、青い吉野に訪れてみてはどうだろう。青の慈悲に癒やされ、心が清らかになること、請け合いである。
*写真は今年(2022年)の秘仏御開帳ポスター。

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本文はもう何度もいろんなところで紹介している。電子版編集に当たって再録した分でもある。そうそう、ずいぶん前にJR東海キャンペーンの「青の吉野山、青の蔵王権現」のテーマにもなった一文であった。今年も5月8日まで、御開帳は行われている。是非、ご参拝いただければ幸いである。なお、Amazonにて修験道あるがままに シリーズ〈電子版〉を検索いただければ、Kindle版が無料で読めます。
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甦る万葉衣装展、県立万葉文化館で6月18日(土)~7月8日(金)開催!(2022 Topic)

2022年05月29日 | お知らせ
奈良県立万葉文化館(高市郡明日香村飛鳥10)で、「甦(よみがえ)る万葉衣装展~飛鳥時代から奈良時代・平安初期までの200年間の衣装変遷~」という展示が2022年6月18日(土)から7月8日(金)まで開催される。
※写真は、すべて平城京天平祭で撮影した(2022.5.3)



山口千代子さん(古代衣装研究家)が制作された古代衣装を展示する催しで、山口さんのトークショーもある。館蔵品展「装いと意匠からひもとく万葉日本画」も同時開催される。ぜひ県立万葉文化館をお訪ねください!同館のHPによると、



展覧会 甦る万葉衣装展~飛鳥時代から奈良時代・平安初期までの200年間の衣装変遷~
令和4年6月18日~7月8日

古代衣装研究家である山口千代子氏が制作した古代衣装を展示し、飛鳥時代から平安時代までの衣装の変遷をたどります。身分別の衣服も展示し、服飾文化をより深く理解できる内容となっています。館蔵品展「装いと意匠からひもとく万葉日本画」とあわせてお楽しみください。



日 時: 令和4年6月18日(土)~7月8日(金)
場 所: 奈良県立万葉文化館 企画展示室
観覧料:無料



♦関連イベント♦
①古代衣装ファッションショー&トーク (要申込・無料)
日 時:令和4年6月12日(日) 午後2時~午後3時30分
場 所:奈良県立万葉文化館 企画展示室
講 師:山口千代子(古代衣装研究家)
定 員:100名 (応募者多数の場合抽選)
<申込方法>
万葉文化館ホームページの講演会申込フォームから、
郵便番号・住所・氏名・電話番号・メールアドレスを明記の上、
5月31日(火)午後5時までにお申し込みください。
お申込みはこちらから

②山口千代子先生よるギャラリートーク (申込不要・無料)
日 時:令和4年6月26日(日)午前11時~、午後2時~(各回1時間程度、同内容)
場 所:奈良県立万葉文化館 企画展示室




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田中利典師の『吉野薫風抄』白馬社刊(1)/「心が変われば態度が変わる、態度が変われば人格が変わる、人格が変われば人生が変わる」

2022年05月28日 | 田中利典師曰く
田中利典師の処女作にして最高傑作という『吉野薫風抄 修験道に想う』(白馬社刊)を、師ご自身の抜粋により紹介するというぜいたくなシリーズである。本書は、当ブログでも紹介させていただいたことがある。
※トップ写真は風薫る吉野山・蔵王堂前(2022.5.20撮影)、この連載のために撮りに行った

初回の今回は「心を変える」。師のFacebook(4/22付)から転載する。なおAmazonで「修験道あるがままに シリーズ」〈電子版〉を検索すると、Kindle版が無料で読める。

シリーズ「吉野薫風抄」(1)
私の処女作『吉野薫風抄』は平成4年に金峯山時報社から上梓され、平成15年に白馬社から改定新装版が再版されました。また令和元年には電子版「修験道あるがままに シリーズ」(特定非営利活動法人ハーモニーライフ出版部)として電子書籍化されたという、私のとっておきの書籍です。

長らくお休みしていました「祈りのシリーズ」の第3弾は、本著の中から不定期にですが、いくつかの内容を紹介して再開いたします。なにせ若書きの文章ですので、いささか稚拙ではずかしいものばかりですが、よろしければご覧下さい。 

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「心を変える」
信仰とはなかなか難しいものである。多くの人々は何か困ったことが起きた場合にのみ、慌てて神仏の力を頂こうと信仰をする。これは欲深い私たち凡夫にとっては、大変当たり前の心持ちであるが、これでは困るわけで、常日頃から、近しく神仏に親しんでいることが大切なのである。

信仰の目的には様々なものがあるけれど、今の生活をより以上に良くしていきたいと願って信仰するのがその一つ。先に述べたように、困った時の神頼みも含めて、おおかたの人がこういった動機から信仰を始めるようである。

これに応えるための一つの方法として私は、御本尊への帰依(きえ)を説くかたわらで、数霊学という簡単にいうなら一種の気学を用いて、その人の運気の流れを読んで、自然の摂理、自然の法にかなう生活を説いている。もちろんこれは信仰本来の目的からするなら、補助的であるということは十分承知している。

具体的にいうと、稲作は春先に苗付けをするから秋に刈り入れができるわけで、冬の寒中に種を播いたのでは、決して成長はしないであろう。同様に、人間もまた、 その人その人の置かれている状況や、持って生まれた運気に応じた形で、人生の種を播いていかないことには、何事についても良い実を得ることは難しい。

そこのところの、法(法則)にかなう生活が大切なのであり、それを指導させて頂いているのである。ただ神仏におすがりさえすれば、不治の病も立ちどころに治るというような、夢のような話を期待するのは少々虫が良すぎるし、所謂(いわゆる)そういった現世利益には限界があるのである。



もう一つ大きな信仰の目的は、今の生活の中でよりよく生きようとする信仰。これが実はたいへん大切なことであり、 こちらの方が信仰本来の目的であるといえる。

人間はみな平等であるとはいうものの、実際は一人一人それぞれ違っていて、千差万別の差別がある。生れつき身体の弱い人、顔の美しい人、不器用な人、恵まれた家庭に生まれた人、運の強い人。それは人間のはからいを超えた、何とも仕方の無いことであり、大切なことは、人それぞれに違いがあるこの与えられた条件の中で、如何によりよく生きていくかということに尽きるわけである。

そのためにどうするかというと、 それはもう一にも二にも、心のあり方次第なのである。心のあり方さえ正しく定まっていれば、自分を取り囲む状況も、よりよい方向に巡っていくし、自分自身がよくなっていくのである。

「心が変われば態度が変わる、態度が変われば人格が変わる、人格が変われば人生が変わる」と説かれる所である。そしてこの、自分の置かれた状況の中でよりよく生きる、心を高めて生きるためにこそ、神仏に親しく交わり、 正しい法に生きることが、大切な信仰の道と言えるのではなかろうか。こういう信仰心こそを日頃から培っていくべきであろう。

たった一度の人生を、ぐちばかり言って、後悔を繰り返して生きることはあまりにもったいないことである。信仰の道に極まった楽しい日々を暮らしたいものである。

*写真は平成15年版の『吉野薫風抄』(白馬社刊)。一時期、Amazonで、一冊25000円の高値がついたときがありましたが、いまは普通に買えます。

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なお、Amazonにて修験道あるがままに シリーズ〈電子版〉を検索いただければ、Kindle版が無料で読めます。
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神武天皇の皇后祭る、奈良市内最古の神社 率川(いさがわ)神社/毎日新聞「やまとの神さま」第6回

2022年05月27日 | やまとの神さま(毎日新聞)
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は毎週木曜日、毎日新聞奈良版に「やまとの神さま」を連載している。昨日(2022.5.26)掲載されたのは〈安産育児 市内最古の神社/率川神社(奈良市)〉、執筆されたのは奈良市出身、木津川市在住の松田雅善(まさよし)さんだった。
※トップ写真は、三枝祭(さいくさのまつり)神楽=奈良市本子守町で、大神神社提供

同神社の例祭「ゆりまつり」(毎年6/16~17)では、可憐なササユリの花が奉納される。大神神社境内の「ささゆり園」ではそのササユリが咲き始めたと今朝(5/27)の奈良新聞が報じていたが、残念ながら今年のゆり祭りは〈6月16日のささゆり奉献神事は、行列は中止で神事のみ実施、また、17日の三枝祭も神事のみで七媛女百合姫稚児巡行は中止。いずれも、一般の参列はできない〉(5/27付奈良新聞)となった。では、記事全文を紹介する。

安産育児 市内最古の神社
率川(いさがわ)神社は593(推古天皇元)年、大三輪君白堤(おおみわのきみしらつつみ)が勅命により創祀(そうし)した奈良市内で最古の神社(大神神社摂社)で、正式名称は率川坐大神御子(いさがわにますおおみわのみこ)神社です。

本殿正面に祭られる祭神の媛蹈韛五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめのみこと)は、初代神武天皇の皇后です。本殿左側には父神の狭井大神(さいのおおかみ)、右側には母神の玉櫛姫命(たまくしひめのみこと)を祭り、御子神を両側から見守るように鎮座していることから「子守明神」と称えられ、安産、育児、息災延命の神さまとして信仰を集めています。皇后を主祭神とした神社は全国でも珍しく、周辺の町名やバス停名も「本子守(ほんこもり)町」で、その由来がうかがえます。

毎年6月17日、前日の「ささゆり奉献奉告祭」「宵宮祭」に続き、例祭「三枝祭(さいくさのまつり)」が斎行されます。701年、大宝令に国家の祭祀(さいし)として定められた神事で「ゆりまつり」の名で知られており、ササユリの花で黒酒(くろき)・白酒(しろき)の酒樽を飾って神前にお供えしたあと、4人の巫女(みこ)がヒカゲノカズラを頭につけ、ササユリを手に「うま酒みわの舞」を舞います。

本殿の祭りのあと7人の七媛女(ななおとめ)、ゆり姫、ゆり車を引く稚児らの行列が市内を巡ります。本殿は一間社春日造檜皮葺(ひわだぶき)の建物が3棟並び、創建は江戸時代前期と考えられ、県指定有形文化財となっています。(奈良まほろばソムリエの会会員 松田雅善)

(住 所)奈良市本子守町18
(祭 神)媛蹈韛五十鈴姫命、狭井大神、玉櫛姫命
(交 通)近鉄奈良駅から徒歩約5分
(拝 観)境内自由。6月17日の祭典中は境内立ち入り不可。今年の行列はコロナ対策のため中止
(駐車場)無


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吉野に生まれ育ち、吉野を愛し吉野を詠み続けた俳人 岩田まさこ/奈良新聞「明風清音」第73回

2022年05月26日 | 明風清音(奈良新聞)
知人を介し、宮川美枝子さんのご著書『惜春の大地』出版のお手伝いをさせていただいた(2022年5月3日発行)。本書は俳人・岩田まさこさんの評伝である。しかもそのご縁で、私は帯に短い書評も書かせていただいた。〈吉野に生まれ、吉野を詠みつづけた俳人、岩田まさこ。この評伝は、その魅力にほれこんだ筆者が愛情こめて書きあげた労作です〉。
※表紙の絵は、まさこさんの娘さんの岩田洋子さんの作品

本書の評判は上々で、下市町と大淀町の図書館が置いてくれるほか、吉野町も支援してくれるそうだ。「俳句関係の本は売れない」といわれるが、吉野の風土を読み込んだ句は、地元民の心を打つ。私が紹介した句のほか、「蔵王堂よぎりて羽根の舞ひ上がり」「下千本中千本の残花かな」「みよしのの流れに研(みが)く猫柳」など、吉野の地名などを織り込んだ句がたくさん載っている。この本のことは奈良新聞「明風清音」(2022.5.19)で紹介したので、以下、記事全文を貼っておく。

今月刊行された宮川美枝子著『惜春の大地~中村汀女(ていじょ)を師と仰いだ吉野人の軌跡~』(京阪奈情報教育出版刊)税別900円を読んだ。吉野町橋屋に生まれ育ち、吉野を愛し吉野を詠み続けた俳人・岩田まさこ(大正12―令和元年)の評伝である。筆者の宮川美枝子さんは吉野町出身・在住で、ノンフィクション作品や詩集も出されている。生前のまさことは5年間の親交があった。

まさこは職業俳人ではない。四女の母であり、夫の会社(大阪)や自宅(実家)の商店を手伝う家庭婦人として、俳句を詠んだ。本格的に俳句に打ち込むのは46歳のとき「主婦の友通信教室」の俳句講座で、当時すでに著名な俳人だった中村汀女(明治33―昭和63年)の添削指導を受けるようになってからである。まさこは日常生活を題材とし女性の心情を詠嘆した汀女の強い影響を受ける。以下、まさこの俳句(太字)と宮川さんの解説(〈 〉書き)を句の詠まれた年代順に紹介する。

▼由緒ある檜(ひ)はだの屋根の苔の花
天理市への吟行(奈良探勝句会)で詠まれた句。〈梅雨の晴れ間に奈良盆地が見渡され、大和三山が島の如く浮かぶ展望を楽しんだ〉。

▼またしても己が値札倒す蟹
昭和56年4月の「第20回全国俳句大会」(俳人協会主催)で特選となった句。〈仕事帰りの夕刻、デパートの食品売り場で見た蟹は元気が良い。最後の抵抗であるかのように動いていた〉。

▼后陵(きさきりょう)拝む濠前(ほりまえ)夏あざみ
昭和56年『主婦の友』11月・12月号の優秀賞、選者は中村汀女だった。〈「陵と言い伝え守りあう土地の姿がすがすがしい。ここにふさわしい夏のあざみもまた朝露帯びた頃だろう」、と汀女の選評である〉。

▼なんとなく切なきときは草を刈る
〈良き妻、良き母の見本であるかのような彼女にもそんな時があった。彼女はそんな時、ひたすら草を刈ることにしていたのである。生命力の強い草は、刈っても刈っても直ぐに伸びてきた〉。

▼春寒の日の逃げやすき奥吉野
「主婦の友通信教室」俳句講座で詠まれた。〈「奥吉野がよく効いてひっそりとした雰囲気を出してゐます」と、汀女は褒めた。この言葉に、まさこは勇気を得たに違いない〉。

▼み吉野の川の豊かに初燕
昭和61年5月、日本経済新聞に掲載された句。〈「川もいつしか姿整えて『み吉野』との賛辞そのまま、燕も飛べばわが里に見ほるる作者もその一人」と汀女は言葉を添える〉。

▼ルルルルとフイフイフイと河鹿(かじか)鳴く
〈まさこはこの句が好きで、短冊にしてずっと自分の部屋に飾っていた。一雨ごとに若葉が成長し、木々がどんどん膨らんできた。歩数計をつけて散歩していてたまさこは新緑の下で一休みした〉。

▼山風に花の万朶(ばんだ)のもだえをり
「朶」は枝や花のこと。宮川さんはこの句をまさこの代表作とする。俳句結社「未央(びおう)」主宰者だった岩垣子鹿(いはがき・しろく)は「吉野山の花吹雪は、一山を揺るがし幾百の谷に舞い込む壮麗な舞である。その落下寸前の情景であろうか。万朶の花の枝が揺らぎ始めたのをもだえと感じとった感性は写生の真髄をつくしたものである」と絶賛する。

本書は書店の店頭には並ばないので、版元のサイトまたはアマゾンでお買い求めいただきたい。(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)


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