澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

ショスタコーヴィチの「信じるな!」

2008年05月24日 21時57分26秒 | 音楽・映画

NHK・TVで放送されている「悲劇のロシア」は実に興味深い。

ロシア文学者の亀山郁夫氏が、ドストエフスキー、エイゼンステイン、ショスタコーヴィチなどの芸術家、音楽家を毎回採り上げて、ロシアの悲劇の実相に迫る。

ショスタコーヴィチを採り上げた第8回を見る。
交響曲第5番(1937年)は、ショスタコーヴィチが批判を受けた後、名誉を挽回するためにつくられた。社会主義を賛美し、スターリンを満足させるために作曲されたと言われる。
だが、「ショスタコーヴィチの遺言」などの書物によって、その社会主義礼賛については、大きな疑問符がつけられてきた。

交響曲第5番の第4楽章の冒頭は、「ソ・ド・レ・ミ♭」で始まる。これは、ビゼーの「カルメン」の「ハバネラ」から借用したパロディで、「カルメン」では「信じるな!」というセリフが割り当てられている部分である。だとすれば、「社会主義を信じるな!」「私は社会主義を信じない」というメッセージが込められていることになる。ショスタコーヴィチは、生命をかけて、このメッセージを遺そうとしたのだ。


このようにこの番組は、ロシア知識人の底知れぬ深さを教えてくれる。


スターリン時代にも匹敵する毛沢東の圧制下で、中国の知識人はこういう記録を残したのだろうか?文革時代の隠されたエピソードが明らかになれば、実に興味深いことなのだが…。