季節柄、戦争回顧ものが目立つTV界だが、今夜の「報道ステーション」には違和感だけが残った。「神の医師 101歳の戦後」という特集で、山崎宏という101歳になる「医師」が紹介された。
この山崎宏という人は、1937年に徴兵され、中国大陸に行く。ある日、日本兵が中国人の母親から幼子を取り上げ絞め殺すのを見て、「日本軍は悪い」と思い、軍を逃げ出したという。逃亡の果て、中国人に食料をあたえられ、助けてもらい、中国人と生活を共にする。敗戦後、山崎さんは日本に帰国せず、「中国人に恩返しするために」医師になろうと決心する。ただし、小学校しかでていなかったので、「数年間の猛勉強の結果」医師になったという。
「医師」にはなったものの、文化大革命などの政治暴風の中、日本人であることでずいぶんと苦労したという。いまでは、家族に囲まれ、診療活動も続けているという話だった。
ここまで書くと、誰もが疑問に思うことがある。山崎さんは「脱走兵」であったという事実だ。北朝鮮に”逃亡”したジェンキンスさんが、祖国である米国に帰れば、軍法会議にかけられるというので、その政治的処理が問題になったことは記憶に新しい。山崎さんの場合も基本的には同じことだ。
「日本軍が幼児を絞め殺した」のを見たから、中国側に逃亡したというのも、にわかには信じられない話だ。当時、日本が敗戦することなど考えられなかったし、中国側とはいったい誰を指すのだろうか? きっと語ることが出来ない「真実」が別にあるのだろう。
「報道ステーション」では、ジェンキンスさん問題で、脱走兵のことを散々語ったはずだ。だが、山崎さんに関しては、「悪の日本軍から逃れて、医療活動で中国に一生を捧げた人」という描き方をしている。20年ほど前だったら、こんな描き方は決して出来なかったはずだ。現在、軍隊経験者は80歳代半ばになってしまった。「脱走兵」の意味や、旧・日本軍の規律について、もう文句を言う人はあるまい…こういう読みでこの特集が作られたのではなかったか。 そう考えると、腹話術人形のような古舘のコメントに、余計、腹が立ってくる。
要するに、テレ朝はでっち上げの「美談」を放送したということだ。 さすが「媚中」の総本山と言われる朝日だけあって、山崎さんのような人まで「日中友好」のシンボルとして担ぎ出そうとするのか?
8月上旬は、さまざまな「戦争回顧」番組が放送される予定だが、中にはこんな番組が他にもあるかも知れない。歴史的検証も示さずに、感情に訴えるような番組は要注意だろう。
蛇足だが、中国の医師養成制度は、一体どうなっているのだろうか? 文革期、「裸足の医者」というのが喧伝されたが、今は聞かない。しかし、この山崎さんのような経歴の人が、「医師」として今なお診療活動を続けている。たとえ、漢方医だとしても、診療行為をさせて大丈夫なのだろうか。私には、中国という国が本当に得体の知れない、不気味な国に思えてくるのだが、どうだろう? 医師の資格を相互認定などしたら最期、日本は中国人のニセ医者で溢れてしまうに違いない。
テレ朝は、「東アジア共同体」を支持し、「日中の医師資格相互認定」までも推進しようとする立場だ。その意味では、山崎さんの美談は、かえってマイナスだった。 馬脚をあらわした…と言っておこう。
この山崎という人の正体は、次の映像を見ると氷解する。「報道ステーション」の元ネタはこれのようだ。
http://v.ifeng.com/society/200907/76dbcaca-a9bd-47ee-a47e-069cb7aabd2a.shtml (山崎宏当日?逃兵 留在中国七十年)