「日韓併合百年に関する首相談話」が、下記のとおり発表された。「産経新聞」のよれば、菅内閣の中でも玄葉大臣などは、この談話の内容に対して異議を唱えたようだ。
「菅談話をめぐっては、これまで与野党から異論が続出していた。民主党国会対策委員会の笠浩史筆頭副委員長と松原仁副委員長らは「与党の政策調査会できちんと議論すべきだ」と仙谷由人官房長官に申し入れた。民主党国対でも首相談話への反対論が相次いだ。玄葉政調会長も「補償の話が蒸し返されてはならない」と慎重論を唱えていたのに残念だ。。」(「産経新聞」8月10日)
インタビューで松原仁議員は、「内閣が替わるたびに、謝罪の表示をすることは、日本の国益にそぐわない」と述べていた。民主党の中にさえ、このような反対意見があったのに、なぜ菅総理は「謝罪」を強行したのか。
よく言われることだが、村山・元首相、菅首相には、「市民」を持ち上げ、「国家」を蔑む、あるいは、まるで人ごとにように自国を貶すという共通点がある。GHQ作成の日本国憲法を従順に学んだ二人は、「国益」という言葉さえも遠慮がちに使う首相となってしまった。
菅首相は、次のように言う。
「本年は、日韓関係にとって大きな節目の年です。ちょうど百年前の八月、日韓併合条約が締結され、以後三十六年に及ぶ植民地支配が始まりました。三・一独立運動などの激しい抵抗にも示されたとおり、政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられました。」
この表現は、日本側の一方的懺悔のように聞こえる。しかし、「…政治的・軍事的背景の下…」と言う言葉でぼやかされているものの内実こそが、問われなければならない。当時、まさにロシアは朝鮮半島を植民地化しようと虎視眈々と狙っていた。朝鮮内部の政治状況も、四分五裂の状態で国家の態を為していなかった。西欧列強による「中国分割」(Cutting the China)が進む中で、次は朝鮮半島だという緊迫した政治状況があったことを確認しておかなければならない。そうでなければ、100対ゼロで日本は間違っていた、日本はその存在そのものが「邪悪」なのだという結論にいたってしまう。
要するに、この談話は、不正確な内容に過ぎず、日本の国益にとってプラスになることは皆無などころか、将来的に禍根を遺すことになるのは間違いない。
また、お詫びの文言にも不適切な表現がある。菅首相は、こう謝罪する。
「私は、歴史に対して誠実に向き合いたいと思います。歴史の事実を直視する勇気とそれを受け止める謙虚さを持ち、自らの過ちを省みることに率直でありたいと思います。痛みを与えた側は忘れやすく、与えられた側はそれを容易に忘れることは出来ないものです。この植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします。」
「歴史に対して誠実に向き合いたい」「歴史の事実を直視する勇気とそれを受け止める謙虚さを持ち、自らの過ちを省みるこちに率直でありたい」という表現は、極めて情緒的で危険な言い方だ。日本人にとって、歴史は謝罪すべき対象であるかのような表現ではないか。あたかも神の如き「歴史」なるものがあり、ことあるごとに、それを正しく「認識」できない邪悪な民族として日本人は永遠に蔑まれ続ける…極論すれば、そういうことになりはしないか。
また、「日本が統治していた期間に朝鮮総督府を経由してもたらされ、日本政府が保管している朝鮮王朝儀軌等の朝鮮半島由来の貴重な図書について、韓国の人々の期待に応えて近くこれらをお渡ししたいと思います」として、韓国に文化財を返却するとしている。これだけでは、日本側の不法行為を謝罪するような印象を与えるが、これは歴史的に見て事実ではない。
朝鮮総督府が適正に管理していたが故に、現在まできちんと保管されてきたのである。そうでなければ、きっと朝鮮戦争で焼かれていただろう…とまではさすがに言うつもりはないが…。
あたかも「盗品」を本来の持ち主に返還するというような言い方はいかがなものか。このことで、韓国がさらに新たな賠償請求を言い出すかも知れないのに…・。朝鮮総督府は、朝鮮の近代化に大きな役割を果たした。それは決して全面否定されるべき筋合いのもではない。
次回の謝罪では、「竹島」の領有権放棄文書をプレゼントして、友好関係を築きましょうなどと言うのだろうか。際限ない謝罪と足元を見た賠償請求の連鎖。民主党政権がこれほど愚かだったとは…。世襲議員ばかりの自民党と五十歩百歩ということなのか。
【日韓併合首相談話】全文「韓国は誇り傷付けられた」…
政府は10日午前、日韓併合100年に併せた首相談話を閣議決定し発表した。首相談話では、日本による韓国の植民地支配に対し「多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします」と明記した。談話の全文は以下の通り。
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本年は、
閣議に臨む菅直人首相=10日午前、首相官邸(酒巻俊介撮影)
日韓関係にとって大きな節目の年です。ちょうど百年前の八月、日韓併合条約が締結され、以後三十六年に及ぶ植民地支配が始まりました。三・一独立運動などの激しい抵抗にも示されたとおり、政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられました。
私は、歴史に対して誠実に向き合いたいと思います。歴史の事実を直視する勇気とそれを受け止める謙虚さを持ち、自らの過ちを省みることに率直でありたいと思います。痛みを与えた側は忘れやすく、与えられた側はそれを容易に忘れることは出来ないものです。この植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします。
このような認識の下、これからの百年を見据え、未来志向の日韓関係を構築していきます。また、これまで行ってきたいわゆる在サハリン韓国人支援、朝鮮半島出身者の遺骨返還支援といった人道的な協力を今後とも誠実に実施していきます。さらに、日本が統治していた期間に朝鮮総督府を経由してもたらされ、日本政府が保管している朝鮮王朝儀軌等の朝鮮半島由来の貴重な図書について、韓国の人々の期待に応えて近くこれらをお渡ししたいと思います。
日本と韓国は、二千年来の活発な文化の交流や人の往来を通じ、世界に誇る素晴らしい文化と伝統を深く共有しています。さらに、今日の両国の交流は極めて重層的かつ広範多岐にわたり、両国の国民が互いに抱く親近感と友情はかつてないほど強くなっております。また、両国の経済関係や人的交流の規模は国交正常化以来飛躍的に拡大し、互いに切磋琢磨しながら、その結び付きは極めて強固なものとなっています。
日韓両国は、今この二十一世紀において、民主主義や自由、市場経済といった価値を共有する最も重要で緊密な隣国同士となっています。それは、二国間関係にとどまらず、将来の東アジア共同体の構築をも念頭に置いたこの地域の平和と安定、世界経済の成長と発展、そして、核軍縮や気候変動、貧困や平和構築といった地球規模の課題まで、幅広く地域と世界の平和と繁栄のために協力してリーダーシップを発揮するパートナーの関係です。
私は、この大きな歴史の節目に、日韓両国の絆がより深く、より固いものとなることを強く希求するとともに、両国間の未来をひらくために不断の努力を惜しまない決意を表明いたします。
菅“売国外交”に批判噴出 支持派もソッポで代表選ピンチ
左傾化路線を突き進む菅首相だが、党内支持基盤は大きく揺らぎ始めた【拡大】
菅直人首相(63)は10日、日韓併合100年を迎えるに当たり、韓国の植民地支配などへの「反省とおわび」を盛り込んだ首相談話を発表したが、朝鮮学校の無償化問題など、ここ一連の左傾化路線が9月の民主党代表選に大きな影響を与えそうな気配となってきた。菅首相と距離を置く、小沢一郎前幹事長(68)と鳩山由紀夫前首相(63)のグループ連合に着々と外堀を埋められつつあるが、菅支持を打ち出しているグループからも離反者が出かねない事態となっているのだ。
政府は10日午前の閣議で、首相談話を決定。談話は1995年の「村山首相談話」を踏襲し、「植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明する」と明記。朝鮮王朝時代の祭礼や主要行事を絵や文で記録した書物「朝鮮王室儀軌」を近く引き渡すと表明した。
菅首相は閣議決定後、韓国の李明博大統領と電話会談し、談話を伝達。大統領は謝意を表明した。
文化財引き渡しに関しては、日本の旧朝鮮総督府から宮内庁に直接移管された文物が対象となる。1965年の日韓基本条約締結時に結んだ関連協定に基づき、日韓双方は財産・請求権を互いに放棄しており、実現すれば事実上の返還に相当する特例措置。仙谷由人官房長官(64)は同日午前の会見で、「速やかに手続きを進めたい。長くかかる話ではない」と述べた。
ただ、今回の談話発表に関し、自民党内はもとより民主党内からも「謝罪外交だ」「韓国内で補償問題が再燃する」と懸念する声が噴出している。
鳩山グループに属する松原仁議員(54)が、「内閣が代わる度に談話を出すのはいかがなものか。党内手続きもきちんと経ておらず、(戦後補償は)法律的に解決済みなので、談話を出す必要はない。国益に反する」と反対論をブチ上げれば、玄葉光一郎公務員制度改革担当相(46、党政調会長)も10日午前の閣議後の閣僚懇談会で、「党内にはさまざまな意見がある。準備の早い段階で政調会長に相談があってしかるべきではなかったか」と述べ、菅首相と仙谷氏に不満を表明。さらに、「今回は(閣議で)サインするが、今後はもっと早く相談してほしい」とまで述べたのだ。
玄葉氏は反小沢色が強い「民主党七奉行」の1人で、代表選での菅首相の再選支持を打ち出している野田佳彦財務相(53)のグループに所属しているだけに、この姿勢は看過できない。
実際、菅首相はリベラル色が強いが、今回の首相談話を主導したのは、「影の宰相」と呼ばれる仙谷氏であるのは間違いない。
仙谷氏は同日午前の記者会見で反対派に配慮するためか、首相談話について「日韓基本条約で確認されているように個人補償、請求権の問題は解決済みという前提だ」と述べた。
しかし、これに先立つ7日の会見では、韓国への戦後処理に対する日本政府の対応は不十分だったという認識を披露。政府として新たに個人補償を検討していく考えを示唆しているのだ。
さらに、菅内閣の左傾化には、北朝鮮問題も絡む。
現在、北朝鮮の指導下にある「朝鮮学校」を、高校無償化法に基づく就学支援金の支給対象に含めるか否かについて、文科省が専門家会議を設置して検討しているが、ここに来て、朝鮮学校を支給対象にする方向に傾きつつあるという。
これにも党内から批判が噴出しており、小沢グループの重鎮でもある中井洽拉致問題担当相(68)は文科省に対し、「無償化の対象から除外するように」と強く要請。保守系中堅も「無償化は北朝鮮礼賛の教育内容の容認で耐えられない」と吐き捨てる。
この背景にも、やはり仙谷氏の影響力が指摘されている。
民主党の国会議員は衆参413人。現時点で、小沢グループ(約150人)と鳩山グループ(約50人)の合計は、菅首相の再選を支持する菅グループ(約30人)、前原誠司国交相(48)のグループ(約30人)、野田グループ(約30人)の合計を上回る。
野田、前原両グループは「反小沢」色が強いが保守系議員が多く、菅内閣の左傾化は、両グループからの離反者を呼び、代表選でのマイナスになりかねない。
政治評論家の小林吉弥氏は「菅首相が何をしたいのかが分からない。こんな首相は初めてだ」とあきれ、こう続ける。
「朝鮮学校も難題だが、首相談話の方が影響は大きい。村山談話より踏み込まないと出す意味がないが、反対派の保守系議員は猛批判するのは必至。よほど慎重にやらないと、政権がひっくり返りかねない。代表選に向けて幅広い支持を集めるべき時に、批判勢力を勢いづかせ、支持派に亀裂を生んでどうするのか。世論調査では、国民が菅内閣に求めているのはデフレ脱却などの経済対策。国民の気持ちが分からないようでは、代表選で勝つのは簡単ではない」 (「夕刊フジ」2010.8.10)