もし民主党が唱える「地方主権」が実現したら、地方はどうなるのかを示唆する事例がある。
民主党は、「地方のことは地方に」などとキレイごとを言っているが、中央の権限を地方に委ねた場合、下記の鹿児島県阿久根市や東京都中野区のような事例が日常的に起きるのではないだろうか。
この二つの事例は、地方の政治家、公務員には、トンデモない人がたくさんいることを教えてくれる。
東京都中野区の場合、田中大輔区長が癌で入院した友人の出勤簿を代わって押印していたという、前代未聞の事件だ。当該職員は全く勤務をしていないのに、出勤扱いとなり、給与もボーナスも満額支給されていた。この区長が誰に対してもこのように「優しく親切」「温情あふれる」わけではない。それどころか、意見を異にする幹部職員はことごとく左遷して、側近を「お友達」職員で固めてきた。もちろん、癌になった幹部職員は、区長の「お友達」というわけだ。この区長は、日ごろ高邁な「地方自治」の理念を口にしているが、実態は専制君主そのものではないか。公私混同、不正行為、給与の不正支出等々、刑事事件にもなりうる犯罪行為を行いながら、それに関わった「お友達」は、それぞれ副区長、教育長に栄転したというのだから、真面目に働く一般職員は、たまったものではない。
たかが出勤簿押印のことで…というのは間違っている。どんな言い訳もできないはずのこの行為を、田中区長は裁判を続けることで強引に正当化してしまった。こんなあからさまな不正をする人が、地方行政のトップにいるなどと信じられるだろうか。
出勤簿押印を一緒に行った副区長は、出身地である千葉県の市長選に立候補するつもりらしい。東京で培った行政能力とやらを売り物にするそうだが、こういう人が田舎の市長になったら、その市行政がどうなるか日の目をみるより明らかだ。
東京のど真ん中にありながら、田舎芝居のようなこの事件。「地方主権」なるものが実現したら、地方行政の私物化がさらに進むのではないかという格好の見本だ。
東京都中野区の中野区役所内で起きた事件
区参事の無断欠勤に対し、石神正義総務部長(当時)と田辺裕子総務課長(当時)が、本人の職員カードを使用して出勤簿に打刻、出勤を装って給与の支給・昇給させた事件。
監査委員会より違法な処理として、中野区長に対し損害額(支払済給与)の補填と、関係者の処分・再発防止が勧告したが、田中大輔区長は、不服として東京地方裁判所(東京地裁)に提訴したが平成18年11月2日東京地方裁判所において区が敗訴した。しかし、その日のうちに臨時の部長会議が招聘され、「主張が入れられず認めがたい」と東京高等裁判所(東京高裁)に控訴、平成20年6月26日敗訴した。さらに、最高裁判所(最高裁)に上告したが平成21年7月10日不受理決定それにより原告住民側全面勝訴となった。
尚、石神正義総務部長は現在、副区長に就任。また田辺裕子総務課長は現在、教育長に就任と二人とも特別職となり、田中区長と共に中野区行政の中心を担っている。
阿久根市議会:25、26日開催 専決処分巡り紛糾必至 /鹿児島
阿久根市の竹原信一市長が招集しないため開かれなかった市議会が、25、26日の2日間、臨時会として開催されることが18日決まった。2月22日開会の3月定例会以来、半年ぶりとなる議会。市長が専決処分した副市長選任など19件の承認を求める市執行部と、職員らの賞与半減条例を元に戻す改正案など3件を提案する反市長派議員らの隔たりは大きく、紛糾は必至だ。
議会運営委員会で臨時会会期を2日間と決めた後、記者会見した櫁柑幸雄委員長は「市長が今まで議会を開かなかったことが問題。専決処分の件数が多いが、2日間で十分に審議したい」と語った。また、議会を開催しない市長への対抗策として、「議長にも臨時会の招集権を与えるべきだ」という意見書が臨時会で提案される可能性も明らかにした。
市議会(定数16)のうち12人と多数を占める反市長派議員らは、専決処分の違法性を追及する方針を変えていない。「違法に行われたものは無効だ」と、専決処分19件のうち国の制度改正関連5件を除く14件は承認しない考えを示している。
特に、仙波敏郎氏を副市長に選任した専決処分を巡る攻防が、最大の焦点とみられる。反市長派議員は、仙波氏の件が「副市町村長は議会の同意を得て選任する」と定めた地方自治法を無視して強行されたとして、その違法性を指摘。市長の責任を追及する構え。
一方の仙波氏は、副市長選任を「違法かどうか最終的には司法が判断すること」と、専決処分は妥当だと主張。さらに議会が同意しない場合も「自ら辞めることはない」と続投する意思を明らかにしている。【馬場茂】