評論家の佐々淳行氏(元・内閣安全保障室長)が、尖閣事件ビデオ流出について、当該保安官を逮捕せずに、事件の本質は何か、真に責任を負うべきは誰かを問いかけている。
佐々淳行氏のHPでは、当該保安官を処罰しないように要請する署名活動を呼びかけ、次のように述べている。
「…大まじめな、このままでは日本はダメになる、尖閣諸島ばかりか沖縄もいずれ五星紅旗が立ってしまうと真剣に憂いた、憂国の士だと思います。この行為の動機については、純粋で、私利私欲や私怨私憤が感じられず、煮えたぎる公憤にかられ身に降りかかるかも知れない社会的制裁を恐れず、国益のため決断をして行動した「正義の味方 月光仮面」なのだと思います。」
賛同する方は、ぜひ、次のHPにアクセスを。
なお、佐々淳行氏は「You Tubeビデオ流出者については弁護側に立ちます」と明言している。
アクセスは、こちらへ…
【佐々淳行氏のホームページ】
http://www.sassaoffice.com/
尖閣事件ビデオ流出について(2010.11.8)
佐々淳行
尖閣諸島中国漁船体当たりのビデオが流出した件で、内閣も国会もマスコミも、国家の秘密に当たるビデオ映像が流出したことは、警視庁公安部の国際テロ資料がインターネットに流出した問題に続く大失態で、危機管理上の大問題だと大騒ぎし、「どうしてこんなことが起きたのか?(Why did it?)」ではなく「誰がやったのか(=犯人捜し、Who did it?)」に狂奔しています。
しかし、国家危機管理上の問題としては筋違いだと思うのです。
尖閣問題が示す日本国家危機管理上の最大の教訓は、四面海に囲まれた海洋国日本の海の守り、すなわち「海防」が戦後65年間なおざりにされ、日本の領土である離島が次々と外国に奪われている事実に鑑みて、大急ぎで領土・領海の守りを強化すべきだということではないでしょうか。
この犯人捜しの大騒ぎは、菅内閣が初動措置で犯した危機管理上の大失敗、つまり逮捕した船長を中国側からの恫喝に屈して超法規釈放したこと、そして中国側の理不尽な圧力に媚態を示して、中国漁船の不法性を立証するビデオ映像を情報統制して不公表とした菅総理、仙谷官房長官の判断ミスの責任こそが問われるべき事件でした。
マスコミもいけません。
国民が等しく見たいと思っているビデオ映像を、「国民には知る権利があり、マスコミには知らせる義務がある」と菅内閣に迫り、ビデオ公開を強く要求するべきでした。
事件当初、前原国交相(当時)が「中国漁船が『体当たり』してきたことは、ビデオを見れば一目瞭然」と記者会見で言いました。
海上保安庁もビデオ公表の準備をしていたわけです。
この前原国交相の危機管理姿勢は正しかったですし、もしその時にビデオを公表していれば、中国の反日暴動も防げたかも知れません。
この事件は、10対0で中国側の責任です。
しかし、菅・仙谷両氏は中国に対する過剰な気遣いと保身のため、刑事訴訟法を持ち出し、「裁判まで資料は不公表が原則」としたのです。
そして本来なら速やかに公開して日本国民だけでなく国際世論、そして硬化しはじめた中国の反日運動家に真実を示すべきであったのに、このビデオを「秘」扱いにしてしまいました。
しかも、前原国交相の「体当たり」を「衝突」と言葉で誤魔化し、日本にも非があるような弱腰を示したのは大失敗でした。
「公判維持上必要」と言っていた仙谷官房長官は、菅総理、前原外相がニューヨーク出張で不在の間に船長を超法規で釈放し、しかもその政治責任を「検察庁」に、それも那覇地検次席検事に押しつけ、この外交を「柳腰外交」と説明しました。
本来は、「柳」と言いたければ、この場合は「柳に雪折れなし」が正解です。
「柳腰」とは、楊貴妃、虞美人のような美女の美しい姿態を褒める言葉です。
約1年前、140余人の新人議員を含む700人で前代未聞の朝貢訪中団で訪中し、胡錦涛国家主席と1人1秒ずつ握手させてはその記念写真を撮らせた小沢一郎氏の姿、そして今回、中国の恫喝に屈して船長を釈放し、ビデオ映像の公開を禁じ、しかも反日暴動と中国政府の謝罪、賠償要求を誘発してしまった菅・仙谷外交。
もし、仙谷官房長官が腰をくねらせ低頭する遊女のごとき民主党の対中外交姿勢を表現したとすれば、それはまさにピッタリな言葉です。
ビデオ流出の「犯人捜し」の狂態は、危機管理措置を誤って尖閣諸島に中国の間接侵略を許容した形になった菅総理、仙谷官房長官が、国民の非難を国家機密漏洩の内部告発者に転じ、自分たちの責任を隠そうとする卑怯な作戦だと思います。
この作戦は、危機管理の手法として「セント・オフ(Scent off)」と呼ばれる高等戦術です。
英国では数年前まで「狐狩り」という伝統的狩猟スポーツが行われていました。
一匹の狐を荒野に逃がし、馬上の紳士淑女が多くの猟犬とともにそれを追うスポーツですが、主催者側はゲームをおもしろくするため、本物のキツネの他に、キツネの臭い(Scent)をしみこませた囮の人形(Decoy)を引きずって走らせ、「追っ手を欺く」係を設けます。
このビデオを流出させた「犯人捜し」は、国民の目を欺く囮なのです。
仙谷官房長官の老獪さを感じさせます。
「海防」を永年おろそかにしていたことについては、自民党にも責任があります。
民主党の批判ばかりしていないで、「海防」強化の具体的な政策をこそ国会で論じるべきでしょう。
「海防」強化こそ、政府、与野党、マスコミが直ちに取り組むべき優先課題です。
この点については、11月8日付産経新聞朝刊「正論」欄に一文を寄稿しましたのでお読みいただくとして、この情報漏洩者の人物像について一言述べます。
このYou Tubeへの投稿者は、大まじめな、このままでは日本はダメになる、尖閣諸島ばかりか沖縄もいずれ五星紅旗が立ってしまうと真剣に憂いた、憂国の士だと思います。
この行為の動機については、純粋で、私利私欲や私怨私憤が感じられず、煮えたぎる公憤にかられ身に降りかかるかも知れない社会的制裁を恐れず、国益のため決断をして行動した「正義の味方 月光仮面」なのだと思います。
例示が古すぎるかも知れませんが、少なくともこの人物は破廉恥罪は犯していません。
久々に登場した「国事犯」です。
菅・仙谷氏の誤れる国家危機管理上の判断は、ロシアのメドベージェフ大統領を北方四島初訪問に踏み切らせ、メドベージェフ=胡錦涛会談で中ロは対日共同強硬姿勢をとることに合意、ロシアは中国の尖閣を、中国はロシアの北方四島をそれぞれ支援し合う約束をしました。
韓国も「独島(竹島)」防衛のために鬱陵島に韓国海軍基地建設をと国会で討議し始めましたし、中国の反日暴動はプラカードなどに「沖縄は中国領土」と呼号し始めました。
韓国は次は対馬の併合を目指します。
菅総理は仙谷官房長官の責任を問い、解任すべきです。
ハンドル・ネームは「sengoku38」なっていて、中国語で「バカ」「アホ」という蔑称だとか「左派」という意味だとか、憶測が花盛りですが、「ガヴァナビリティー(被統治能力)」に秀でた賢明な日本国民は、菅・仙谷市民運動家・全共闘内閣の「ガヴァナンス(統治能力)」に重大な不信感を抱き、海上保安庁には「犯人捜しをやめよ」との電話やメールなどが100件以上きているようです。
筆者のところにも「逃がしてあげて」とか「犯人捜しばかりやって」などといったメールや電話がたくさん来ています。
菅内閣は世論に応えて犯人捜しをやめるのが賢明です。
仙谷官房長官は、調査を刑事事件の捜査に切り替えると言いましたが、世論の80%は犯人捜しを望んでいません。
だがもし、刑事捜査につながったときには、国益のため、正義のためと決意してビデオ映像を流出させた平成の「林子平」は、破廉恥犯でも世を騒がせる愉快犯でもないのですから、胸を張って堂々と潔く自首してください。
何らかの法的制裁はあるでしょうが、「なぜ?」という国民の質問に真剣に答え、国民の審判を受け、そして国防、とくに「海防」の重要性を、平和ボケの日本国民に説いて覚醒させる「国事犯」として名乗り出てほしいと思います。
私は、警視庁公安部の国際テロ情報漏洩者に対しては検察側に立ちますが、You Tubeビデオ流出者については弁護側に立ちます。