夜更かしするとたまにはいいこともある。
NHK BS HiでA.トスカニーニ指揮NBC交響楽団による演奏が放送されていて、たまたま見てしまった。
そのなかで、ヴェルディ「諸国民の賛歌」が興味深かった。トスカニーニは、ファシズムに反対して米国に亡命したのだが、1944年、ムッソリーニが打倒され、イタリアがファシスト戦線から離脱したのを記念して、この曲を演奏した。ヴェルディのオリジナル曲の他に、何と「インターナショナル」と米国国歌である「星条旗」が加えられている。
1944年、すなわち第2次世界大戦が終結する前年の時点では、ソ連邦を「労働者階級の祖国」と謳う「インターナショナル」(国際歌)を米国では「友邦の歌」として受け入れていたことが分かる。今から考えれば、「インターナショナル」はコミンテルンの陰謀歌のようなものだったことが分かるが、当時の認識は、ともかく友邦・ソ連の国民歌だったのだ。
「帝国主義国家」を否定し、労働者階級の「国際連帯」を謳うこの歌は、結局、ソ連邦を「労働者の祖国」と仰ぐ一国社会主義賛美に変質していった。そのことを知るものにとっては、あのトスカニーニが、この曲を演奏していたとは驚きに違いない。
左翼イデオロギーは国民国家をぶち壊すことなどできない…「インターナショナル」を聴くと、いつもそう思う。だが現実には、「地球市民」などという、新たな怪し気なイデオロギーをふりまき、人をたぶらかす人達も出現している。その多くは、昔、「インターナショナル」を歌っていた連中だが…。
Arturo Toscanini Hymn of the Nations 2