父は三人の子供達それぞれに数冊のアルバムを残してくれた。アルバムを整理しながら自分の小学校時代の一冊に見入った。
その見返しには、父の字で「十年、二十年、あるいは三十年を過ぎた暁にこのアルバムは価値あるものになるであろう。何も贈り物らしい贈り物を出来ない貧しいお父さんの残す唯一の記念品です。幼き日の思い出が成人ののちに何らかの詩情を併せてほのかに浮かぶとき、人間の美しい魂がよみがえる。歌を忘れたカナリヤにはなりたくないね。いつの時代にも永遠にロマンチストであることが大切だよ。」と書かれてあった。
一枚一枚の写真の傍らには、父のコメントが書かれていた。セピア色の写真を見ながらその文字をたどると、清らかに精一杯に生きた少年の日々が、また、それらを見つめる在りし日の父の姿が想像され胸が熱くなった。
人生をさりげなく歌う陽水の歌「人生が二度あれば」をCDで聴きながら、ふと父の人生を、そして自分の人生を思った。