もう何度か霜が降り、数日前は積雪もあった。
今年最後のヒメシロの里を訪ねた。周囲の雑草はすでに枯れていたが、ツルフジバカマは未だ初々しい緑のままだった。
この広い草原、雑草が生い茂る中、幼虫や蛹を見つけることは不可能と思っていた。
見つかるはずはないと思いながらも、ヒメシロの幼虫の食痕の残るツルフジバカマの株を一つ一つ丹念に見て回った。小一時間、どのように保護活動を進めたらいいかを考えながら、じきに雪に埋もれる初冬の草原を歩いた。
神の導きか偶然か、蛹化態勢にあるヒメシロチョウの前蛹態を見つけた。
撮影しやすく周りの草や葉を取り除き、接写した。体をくくりつける細い糸が輝いて見えた。明日には蛹になるだろう。
今朝も氷点下に下がった。明日も下がるだろう。何とかもう一日がんばって蛹になって欲しいと願った。近いうちもう一度観察に来てみたい。
日だまりに可憐なオオイヌノフグリが咲いている。その花を求めてヒメアカタテハ、モンキチョウが吸蜜に訪れた。
そこには、あとわずかな穏やかな秋の陽の恵みを受けながら、愛おしいチョウやトンボの楽園があった。
静かに舞い降りたアキアカネに、ご苦労さん、また来年会おうねと言葉をかけた。
小さな虫たちをながめながら一抹の寂しさが込み上げてきた。