都月満夫の絵手紙ひろば💖一語一絵💖
都月満夫の短編小説集
「出雲の神様の縁結び」
「ケンちゃんが惚れた女」
「惚れた女が死んだ夜」
「羆撃ち(くまうち)・私の爺さんの話」
「郭公の家」
「クラスメイト」
「白い女」
「逢縁機縁」
「人殺し」
「春の大雪」
「人魚を食った女」
「叫夢 -SCREAM-」
「ヤメ検弁護士」
「十八年目の恋」
「特別失踪者殺人事件」(退屈刑事2)
「ママは外国人」
「タクシーで…」(ドーナツ屋3)
「寿司屋で…」(ドーナツ屋2)
「退屈刑事(たいくつでか)」
「愛が牙を剥く」
「恋愛詐欺師」
「ドーナツ屋で…」>
「桜の木」
「潤子のパンツ」
「出産請負会社」
「闇の中」
「桜・咲爛(さくら・さくらん)」
「しあわせと云う名の猫」
「蜃気楼の時計」
「鰯雲が流れる午後」
「イヴが微笑んだ日」
「桜の花が咲いた夜」
「紅葉のように燃えた夜」
「草原の対決」【児童】
「おとうさんのただいま」【児童】
「七夕・隣の客」(第一部)
「七夕・隣の客」(第二部)
「桜の花が散った夜」
落語の好きな方は御存知だと思いますが、以下に抜粋を掲載いたしますので、お読み下さい。
和尚様が、お腹が張って苦しいので、お医者さんに相談します。様態を診た医者は、和尚に 転失気はあるかと尋ねます。和尚様は、医者の言う転失気の意味が分からない。ところが、この和尚さん、いたって負け惜しみ強い方でございまして、「わからない」と言うことができません。その場はなんとか取り繕ったものの、さて、「転失気」とはなんぞや。
「珍念、珍念はおらんか」
「へぇ、和尚様、呼ばれましたか?」
「お前は、てんしきというものを知っているか」
「いえ知りません」
「そんなことでどうする。もう14、5にもなれば一人前になりかかっているのじゃ」
「はぁ、和尚さん、てんしきというのはなんです?」
「わしが教えてもいいが、それでは修行にならん。前の花屋に行って、てんしきをちょっとお借り申したいとかなんとかいって聞いてきてみなさい」
小僧さんが、花屋で転失気を貸してくれというと、花屋の主人は先日ネズミが棚から落として壊してしまったと言います。
―和尚さんは方々に聞かせにやりますがだれもわかりません。-
その旨を和尚さんに報告すると、今度はお医者さんに聞いてこいと言います。
減るものでもなし、教えてくれればいいのにと小僧さんはブツブツ思いつつ、お医者さんに所に行き、てんしきとは何かとたずねると、医者は笑いながら、「転失気」というのは漢方の世界で「気を転(まろ)め失う」というところから転失気と書いて、「おなら」のことを言うのだと教えてくれます。
はは~ん、どうも和尚さんは転失気を知らないなと察した小僧さんは、素知らぬ顔をして、てんしきは盃のことだったと答えます。
「さかずき? 盃は酒を呑む器。呑む酒器、呑酒器(てんしゅき)、うむ! その通りじゃ! 二度と忘れるでないぞ!」
翌日、再びお医者さんが来て、
「具合はどうか・・・。」
と和尚さんに尋ねます。
「随分よくなりました。そうそう昨日聞かれた呑酒器(てんしき)ですが、うちにも三つ組みのものがありました。よければ見てください。」
と和尚さんが自慢げに言います。医者の方は、この和尚さんは何を言い出すのかときょとんとした顔をしています。小僧さんはニヤニヤしながら、言われたとおり、奥の部屋から盃を持ってきます。
盃を前にして、お医者さんは、
和尚さんは、ん? ち、珍念め……、騙しよったなと思いましたが、もう遅い。
お医者さんは
「どういうわけでお寺では盃のことを「てんしき」と言うのか。」
「寺方の事でございますから、さぞかし古い時代から転失気と呼んでおられたのでございましょ~な?」
しかし、そこは生来の負けん気の強い和尚さん。
「えぇ~そらもぉ、奈良平安の時代から・・・。」
お後がよろしいようで・・・。
下げはもうひとつありまして、「呑みすぎるとブーブー言うやつがいる。」
知った振りをすると大恥をかくという一席でした。
知らないことは知らないといったほうがいいですよ。「聞くは一時の恥じ、聞かぬは一生の恥」と言いますから。
したっけ。