都月満夫の絵手紙ひろば💖一語一絵💖
都月満夫の短編小説集
「出雲の神様の縁結び」
「ケンちゃんが惚れた女」
「惚れた女が死んだ夜」
「羆撃ち(くまうち)・私の爺さんの話」
「郭公の家」
「クラスメイト」
「白い女」
「逢縁機縁」
「人殺し」
「春の大雪」
「人魚を食った女」
「叫夢 -SCREAM-」
「ヤメ検弁護士」
「十八年目の恋」
「特別失踪者殺人事件」(退屈刑事2)
「ママは外国人」
「タクシーで…」(ドーナツ屋3)
「寿司屋で…」(ドーナツ屋2)
「退屈刑事(たいくつでか)」
「愛が牙を剥く」
「恋愛詐欺師」
「ドーナツ屋で…」>
「桜の木」
「潤子のパンツ」
「出産請負会社」
「闇の中」
「桜・咲爛(さくら・さくらん)」
「しあわせと云う名の猫」
「蜃気楼の時計」
「鰯雲が流れる午後」
「イヴが微笑んだ日」
「桜の花が咲いた夜」
「紅葉のように燃えた夜」
「草原の対決」【児童】
「おとうさんのただいま」【児童】
「七夕・隣の客」(第一部)
「七夕・隣の客」(第二部)
「桜の花が散った夜」
「目黒の秋刀魚」という話は誰もが聞いたことはあると思います。
これは落語の中でも有名な噺に出てくるお殿様の言葉なのです。
ある日、お殿様が武芸鍛錬のため馬を駆って遠乗りに出かけました。
このお殿様、性格はいいのですけれど、少々そそっかしいところがございまして、家来は毎日ヒヤヒヤしております。今日の遠出も、思い立った途端に出かけてしまったものですから、家来は大慌て。目黒に到着し、昼食をと思ったものの、あまりにも突然の遠出だったので、だれもお弁当を持ってきておりません。
そこへ、サンマを焼くいい匂いが……。当時、サンマは下魚として、身分のある人が食べるものではないといわれていました。しかし、お殿様は空腹にたえられず、家来に申しつけて、サンマを農家から買い受け、一口食べてみると、これがうまい。
空腹ということもあったのでしょうが、脂が十分にのり、焼きたての旬のサンマ。これがまずいわけございません。
さて、屋敷に帰ると、またいつものように鯛などの高級魚が食前に出てくることになるわけですが、お殿様はどうしてもサンマの味が忘れられません。お殿様は駄々をこねて、サンマを食べたいと言い出します。
家来が日本橋の魚河岸に仕入れにいって、極上のサンマをあつらえてきましたが、料理番が、脂の強い魚だから、もし体にでも障ったら一大事とサンマを開いて蒸し器にかけ、すっかり脂を抜いてしまった。それでもって、小骨も毛抜きで1本1歩丁寧に抜いたから、形が崩れてしまい、そのままでは出せないから、お椀にして、おつゆの中に入れて出した。
お殿様、出されたサンマを一口食してみたが、蒸して脂が抜いてあるからパサパサ。おいしいはずがありません。
「これこれ、このサンマ、いずかたより取り寄せた?」
「は、日本橋の魚河岸にございます。」
「それはいかん。サンマは目黒に限る・・・」
お後がよろしいようで・・・。
当時のお殿様が美味しいものを食べていたかというとそうでもない。調理に気を使い、火傷をしないよう熱いものは出さない、何度もお毒見役の侍が食べた後で、お殿様の口に入るころには、美味しいものも美味しくなくなっているという、風刺をこめた噺です。人間何が幸せなのか、考えさせられます。
したっけ。