築地市場で働いていた時、明治期から戦争の時までの漬物の歴史を知らない人たちの文章が誤っていることに気が付いていたが、仕事が人手不足でさらに漬物に関しての根拠ある文献が少ないと感じていた。多くの食品関係の学者も明治期の状態が詳しく研究している人が少なく誤った評論でも根拠が薄く反論できないでいた。それでも機会があって入手した文献を忘れないためにネットにあげておいた。
人工甘味料サッカリンの日本での戦前の歴史は単なる甘味料の歴史でないと知って驚いた。サッカリンに関して多くの添加物批判家は漬物に一番サッカリンの使用が多いと思われている。それは使用基準が0.02%となっていて、他の許可されているサッカリン入り食品に比べて圧倒的に使用許可量が多い。以前は漬物の購入頻度も比較的高く、食品添加物を批判している人たちの標的となっていた。さらにサッカリン入り漬物の批判論に反論する漬物業界人で皆無で今に至っている。
サッカリンが近代日本の漬物にどのように使用されたかの研究もなかった。この問題を研究した食品学者の著書はまだ見当たらない。さらにタクワン漬でも缶詰入りは今も過去もサッカリンは使用できないことになっている。戦前には普通にあったタクワンの缶詰は手に入らないが最近復活させた漬物業者がある。宮崎県田野町の道本食品が3種類の味付けのタクワン缶詰を通販で販売している。添加物・保存料は当然不使用でサッカリンも使用していない。以前タクワン缶詰を作っていた大分の業者が自衛隊納品(今は防衛省)のたくわん漬缶詰が作っていたが、自衛隊員の漬物離れかどうか廃業してしまった。
厚生労働省のサッカリン使用基準の内容やその他の食品添加物本にもどうして缶詰がサッカリンが漬物に関して除外しているか納得いく説明がある本はなかった。戦争前の漬物の缶詰に関しては軍隊需要が大きく、さらに不当競争も激しく、陸軍糧秣廠が規格を制定し監督していたので、サッカリン使用の缶詰は認められなかった。しかし軍隊納入の樽詰め沢庵漬は明治33年制定された、人工甘味質取締規則の例外扱いだったが軍隊には先に昭和16年ににサッカリンが今の使用基準と同じだけ公認となった。昭和の初めには台湾の砂糖で自給していたが日中戦争拡大し、サッカリン入り沢庵でないと軍隊需要が賄えなかったと思われる。
平成23年(2011年)サッカリンの使用基準が改定された。
サッカリンナトリウム及びこれを含む製剤の使用出来る食品及び使用基準量(残存量)は下記の通りです。
サッカリンナトリウムとして、
サッカリンナトリウムとして、
食品名 | 使用基準量 |
こうじ漬、酢漬及びたくあん漬の漬物 | 2.0g/kg |
粉末清涼飲料 | 1.5g/kg |
かす漬、みそ漬及びしょう油漬の漬物並びに魚介加工品(魚肉ねり製品、つくだ煮、漬物及び缶詰又は瓶詰食品を除く。) | 1.2 g/kg |
海藻加工品、しょう油、つくだ煮及び煮豆 | 0.50 g/kg |
魚肉ねり製品、シロップ、酢、清涼飲料水、ソース、乳飲料、乳酸菌飲料及び氷菓 | 0.30 g/kg |
(5倍以上に希釈して飲用に供する清涼飲料水及び乳酸菌飲料の原料に供する乳酸菌飲料又ははっ酵乳) | 1.5 g/kg |
(3倍以上に希釈して使用する酢) | 0.90 g/kg |
アイスクリーム類、あん類、ジャム、漬物(かす漬、こうじ漬、しょう油漬、酢漬、たくあん漬又はみそ漬を除く。)、はっ酵乳(乳酸菌飲料の原料に供するはっ酵乳を除く。)、フラワーペースト類及びみそ | 0.20 g/kg |
菓子 | 0.10 g/kg |
これらの食品以外の食品及び魚介加工品の缶詰又は瓶詰 | 0.20 g/kg |
上記に定められた基準量以上残存しないように使用してください。
ただし、特別用途表示の許可又は承認を受けた場合は、この限りではありません。
ただし、特別用途表示の許可又は承認を受けた場合は、この限りではありません。
●食品への食品添加物表示例
甘味料(サッカリンNa)
この基準を見ると多くの食品がサッカリンを使用しているように見えるが、これは戦前と戦後の食糧難の時,砂糖が不足していたため、サッカリンを使用した名残である。今では大部分の食品がサッカリンを使用していない。特に漬物は冷蔵庫管理や加熱殺菌処理等の進歩とサッカリン等の添加物検出機器の精度の向上で、ごく微量の添加物が検知され、商品表示の違反と指摘されことが目立ったため、一つの工場でサッカリンを使用した機械を洗浄して、別のサッカリン不使用の漬物を作ることが出来なくなった。工場の床にサッカリン含む水を流した排水で靴や手がサッカリンで汚染され、漬物の商品から微量の検出があった。このようなことから食品表示を取り締まる食品衛生機関(保健所)と漬物業界の指導で同一工場でのサッカリンの使用が激減した。
今でも漬物にはサッカリンが使用されているが多くは中国からの輸入漬物で無料で提供する食堂等の需要があって消えることはない。一度制定された規格は安全性が否定されない限り、使用している国産漬物がなくても、規制の法令は消えない。時代に合わないブッラク学校規則と同じで誰かが声をあげない限り消えない。
今はサッカリンの安全性の問題は解明されてきて、製造時の発がん性のあるタ―ル系不純物がガンをもたらすと考えられていて、今後もサッカリン規制は残る。今はサッカリンは中国で世界中の需要を賄っていて、発がんの可能性のある物質から製造していない。
戦後砂糖が不足していて、多くの子供がサッカリン入りの飲食物を食べた。つまりサッカリンの安全性確認は日本人の団塊の世代だった子供時代に人体実験したことになる。多くの駄菓子の甘味料はサッカリン入りだった。サッカリンは分析しなくとも口の中から食べ物が胃に移動しても、甘みが口内に残る。砂糖の300倍に甘さで、多すぎると苦く感じる。
いま添加物不使用という宣伝が多いが、しっかりした定義がない。EVで電動自動車開発が加速されているが、その電気が石炭を燃焼して作っている方が多いという。目先のごまかしで消費者はごまかされている。