こっそりと置かれた梅の花。
花は見えませんが、たしかに匂っています。
それを未練を置いた、と表現しました。
あるいは、置いたのは文だったかも。
梅の花に託した思い。恋の句ですね。
春の夜の闇はあやなし梅の花 色こそ見えね香やは隠るる
春の夜の闇によって梅の花の姿は見ることは出来ない。
しかし香りまで隠すことは出来ない。
闇のなかにも梅の花は咲いているのだ、という歌。
作者は凡河内躬恒。
夜の梅を詠んだ歌は近代にも。
ひとまおきてをりをりもれし君がいきその夜しら梅だくと夢みし
与謝野晶子の恋の歌です。
この句は、こうした恋の歌の伝統のうえに詠まれています。
遅足