今年の秋はこほろぎの声が例年より長く楽しめた感じがしました。日暮れが早くなりどこかへ出かけた帰り道。暗くなった道から何ともよい声のコオロギが聞こえます。ほっとする秋の瞬間です。思わず耳を傾けます。
郁子さん:やさしくいたわるように鳴くこおろぎの音は、肩の荷がおりて素の自分に戻る帰り道に似合うように思います。エンマコオロギ。閻魔というおそろしげな漢字が不似合いですね。
晴代さん:宵闇の道、耳をすまして聴き入っている様子。
★★★
コオロギの声に秋灯が似合う気がしました。続いては兼題の容子さんの句。
秋燈やあれがわたしの帰る場所
遠くから自分の帰る家の灯りが見えます。「ああ、あそこが私の帰る場所なのだ」と安心するような心持ち。
一人暮らしの亜子さんは、灯りのついていない自宅に帰るのが辛いと先日のお茶会でおっしゃっていました。心に染みる一句だったようです。
夕暮れの家路。秋の夕暮れはさみしさが増します。それだけに人のやさしさや家の灯りに癒されるのでしょう。おのずと心が温かくなるものを求めているのですね。 麗子