著者 藤原正彦氏
【一口紹介】
日本は世界で唯一の「情緒と形の文明」である。国際化という名のアメリカ化に踊らされてきた日本人は、この誇るべき「国柄」を長らく忘れてきた。「論理」と「合理性」頼みの「改革」では、社会の荒廃を食い止めることはできない。いま日本に必要なのは、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神であり、「国家の品格」を取り戻すことである。すべての日本人に誇りと自信を与える画期的日本論。
【読んだ理由】
話題の書。Amazon.co.jpトップセラー総合第13位(2006/1/23現在)
【印象に残った一行】
『会社は株主のもの?
市場原理から生まれた株主中心主義だって同じことです。会社は、言うまでもなくそこで働く従業員のもので、株主は多くの関係者の一つくらいの存在でしかない。株主によっては一週間とか一ヶ月とか一年とかいう短期間で株を売り買いします。ほとんどの株主は値上がりによるキャピタルゲインを狙っているのであり、その会社に何の愛情も持たない人々です。一方、多くの日本企業の従業員はそこで長く働きますから、いつも会社のことを考えて一生懸命やっています。「会社は株主のもの」は恐ろしい論理なのです。』
『初等教育で、英語に費やす時間はありません。とにかく国語です。一生懸命本を読ませ、日本の歴史や伝統文化を教え込む。活字文化を復活させ、読書文化を復活させる。』
『民主主義の本質は主権在民ですが、主権在民とは「世論がすべて」ということです。そして、国民の判断材料はほぼマスコミだけですから、事実上、世論とはマスコミです。言い方をかえると、日本やアメリカにおいては、マスコミが第一権力になっているということです。ロックやモンテスキューの言い始めた「三権分立」は、近代民主主義の基本となっていますが、現実にはこの立法・行政・司法の三権すら、今では第一権力となったマスコミの下にある。民主主義がそんな事態に陥るとことは、誰も想像していなかったのでしょうか。』
『新渡戸稲造は武士道の最高の美徳として、「敗者への共感」「劣者への同情」「弱者への愛情」と書いております。まさに「惻隠」をもっとも重要視しているのです。これはキリスト教徒には受け入れ易い。「慈悲の心」に近いですから。惻隠は現在のような市場経済による弱肉強食の世界においては、特に重要な徳目だと思います。』
『世界を救うのは日本人
日本は、金銭至上主義をなんとも思わない野卑な国々とは、一線を画す必要があります。国家の品格をひたすら守ることです。経済的斜陽が一世紀ほど続こうと、孤高を保つべきと思います。たかが経済なのです。
大正末期から昭和の初めにかけて駐日フランス大使を務めた詩人のポール・クローデルは、大東亜戦争の帰趨のはっきりした昭和十八年にパリでこう言いました。
「日本人は貧しい。しかし高貴だ。世界でただ一つどうしても生き残って欲しい民族をあげるとしたら、それは日本人だ」
日本人一人一人が美しい情緒と形を身につけ、品格のある国家を保つことは、日本人として生まれた真の意味であり、人類の責務と思うのです。ここ四半紀ほど世界を支配した欧米の教養は、ようやく破綻を見せ始めました。世界は途方に暮れています。時間はかかりますが、この世界を本格的に救えるのは、日本人しかいないと私は思うのです。』
【コメント】
講演記録を大幅に加筆されたもので、読みやすく、分かりやすく書かれている。
共感を覚えることが多く、今の社会にたいする「モヤモヤ」感が払拭されたような気がする、日本人として一読の価値あり。
もう一回じっくり読んでみたい本だ。また著者の 処女作『若き数学者のアメリカ』と『祖国とは国語』も読んでみよう。
著者のご両親は有名作家・新田次郎氏と藤原てい氏。