【まくら】
「芝浜」は、幕末の頃、三遊亭圓朝が客から「酔っ払い・芝浜・財布」の三つの題をもらってまとめた三題噺(お客様から三つお題を頂いて、噺家が20分ほどのオチのある落語をつくるというも)が原形、その後多数の演者によって手が加えられ、磨かれて、すぐれた人情噺になった。
良い腕を持ちながら、酒ばかり飲んでいる男が芝浜で大金の財布を拾うが、妻の言葉によってこれを夢と諦めて改心、懸命に働き、後に妻から事の真相を知らされるという筋。
夫婦の愛情を暖かく描き、古典落語の中でも屈指の人情劇として知られる。
噺のヤマが大晦日であることから、年の暮れに演じられることが多い。
落語家の三遊亭円楽さん(74)がこの3月25日、国立演芸場(東京都千代田区)で行われた「国立名人会」出演後に記者会見し、引退を表明し、50年以上にわたる落語家人生に自らピリオドを打つことを明らかにしたが、この日、トリを務め、40分あまり口演したのがこの「芝浜」。
【あらすじ】
魚屋の勝は酒におぼれ、仕事に身が入らぬ日々が続く。
ある朝早く、女房に叩き起こされ、嫌々ながら芝の魚市場に向かう。
しかし時間が早過ぎたため市場がまだ開いていない。
誰も居ない芝浜の美しい浜辺で顔を洗って煙管を吹かしていると、そこで偶然に財布を見つける。
開けると中には目を剥く程の大金。
有頂天の魚屋は自宅に飛び帰り、仲間を呼んで浮かれ気分で大酒を呑む。
翌日、二日酔いで起き出た魚屋に女房、こんなに呑んで酒代をどうするのか、とおかんむり。
魚屋は拾った財布の件を躍起になって訴えるが、女房は、そんなものは知らない、と言う。
焦った魚屋は家中を引っ繰り返して財布を探すが、何処にも無い。
魚屋は愕然として、ついに財布の件を夢と諦める。
以来、魚屋は酒を断ち、心を入れ替えて真剣に働き出す。
懸命に働いた末、生活も安定し、身代も増え、やがていっぱしの定店を構えることが出来た三年後の大晦日の夜、魚屋は妻に対してその献身をねぎらい、頭を下げる。
ここで、女房は魚屋に例の財布を見せ、告白をはじめる。
あの日、夫から拾った大金を見せられた妻は困惑した。
横領すれば当時でも窃盗罪にあたる。
江戸時代では10両(後期は7両2分)盗むと死罪だ。
長屋の大家と相談した結果、大家は財布を拾得物として役所に届け、妻は夫の大酔に乗じて「財布なぞ最初から拾ってない」と言い切る事にした。
時が経っても遂に落とし主が現れなかったため、役所から拾い主の魚屋に財布の大金が下げ渡されたのであった。
この真相を知った魚屋はしかし、妻の背信を責めることはなく、道を踏外しそうになった自分を助け、真人間へと立直らせてくれた妻の機転に強く感謝する。
妻は懸命に頑張ってきた夫の労をねぎらい、久し振りに酒でも、と勧める。
はじめは拒んだ魚屋だったが、やがておずおずと杯を手にする。「うん、そうだな、じゃあ、呑むとするか」
しかし思い立った魚屋、次には杯を置く。「よそう。また夢になるといけねぇ」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
【オチ・サゲ】 途端落
落語は「落とし話」の略から来ていると言われるように、最後の落ちの部分に笑いのポイントを集約している。その中でも特に最後の一言で「あっ!」と思わせるのが、「途端落」。「地口落」、「間抜落」と並んでポピュラーな落ちの一つ。
【語句豆辞典】
【白魚】春先に産卵のために隅田川をさかのぼる頃がもっとも美味とされ、とくに二月二十六日には初網を入れて将軍家に献上した。
【盤台】魚を入れる桶。昔、魚屋はこの桶を天秤棒で担いで商いをした。
【ばにゅう】盤台の上に重ねて載せる、木製の容器。棒手振の魚屋は、これに庖丁などの商売道具をいれる。
【噺の中の川柳・譬(たとえ)・都都逸(どどいつ)
『佃育ちの白魚さえも花に浮かれ隅田川』
『初鰹飛ぶや江戸橋日本橋』
『町々の時計になれや小商人』
『油断せぬ心の花が暮れに咲き』
【この噺を得意とした落語家】
・五代目 古今亭志ん生
・三代目 古今亭志ん朝
・三代目 桂 三木助
・七代目 立川談志
・八代目 三笑亭可楽
【落語豆知識】 トリ
締めくくりの高座を勤める芸人。「主任」ともいう。「トリを取る」という。
人気・力量のある噺家がつとめることになっている。
とくにトリを取る事を「真を打つ」といい、トリを取れるような実力のある噺家を真打ちという。
トリの前にでる芸人を膝がわりといい、通常色物(=落語・講談以外の寄席演芸)の芸人がつとめる。
膝がわりの芸は真打ちの芸を引き立てるためのものであるとされている。
【新宿末広亭3月下席(3/21~30)夜の部の番組】
落 語 春 風 亭 べ ん 橋
交替出演 笑 福 亭 里 光
コ ン ト コ ン ト D 5 1
落 語 桂 米 福
落 語 三 遊 亭 春 馬
奇 術 松 旭 斉 小 天 華
6時
落 語 三 遊 亭 遊 吉
落 語 三 笑 亭 夢 丸
似 顔 絵 晴 乃 ピーチク
落 語 三 笑 亭 笑 三
7時
落 語 春 風 亭 小 柳 枝
- お 仲 入 り -
落 語 三 遊 亭 笑 遊
漫 才 新 山 ひ で や
や す こ
8時
落 語 桂 歌 春
落 語 昔 昔 亭 桃 太 郎
紙 切 り 林 家 今 丸 (→膝がわり)
主 任 三 遊 亭 円 雀 (→トリ)