アルビレックス新潟の最終戦セレモニー。
毎年のように参戦してきたが、今までこんなに泣ける最終戦セレモニーはなかった。
それは、やはり去って行く人たちの思いと、思いを受け止めた人たちの思いが集まっていたからだろう。
去って行く人。
まず、吉永一明監督。
サポーター、スポンサーなどへ礼を言った後、選手、スタッフたちが必死になって支えてくれたことへの感謝を口にした。
「それなのに、J1昇格に導けなかったのは、自分の力不足。
この悔しさを忘れずに。
このクラブは、絶対に強くなる。
これだけ多くのファン・サポーターが支えてくれている。
それを忘れずに、これからまた前に進んでほしい、と思っています。」
…こう言った言葉の内容は、ファン・サポーター向けというよりも、選手たちに向けて言っていたような気がした。
その後テレビで放送されたインタビューでも、
「途中からの就任は、マイナスからのスタートだった。人生で一番しんどい時期だったとも言える。」
「それでも、本当にしんどかったとき、選手たちと向き合うと覚悟が決まった。」
「選手たちの成長があったからやって来られた。」
「(選手を前にした退任のあいさつでは)、『お前らがいたから、やって来られた。』と言った」
などという言葉を口にしていた。
それらの言葉を聞きながら、本当に選手たちのことを考えていてくれた監督だったのだということを確認した思いだ。
かつて私も組織のトップとしてリーダーシップを取らなければいけない時期があった。
リーダーとしての思いをメンバーに分かってもらうとともに、メンバー一人一人のことやよさを十分に理解し、そのよさを生かさなければ、様々な成果は生み出せなかった。
Nスタンドからは、
「先頭に立ちチームを引っ張ってくれた吉永監督 ありがとうございました」
の横断幕が掲げられていた。
吉永監督は、J1昇格という一番の課題は解決できなかった。
しかし、攻撃力の向上という課題は、明らかにクリアした。
その成果は、レオナルドの得点王、リーグ2位の得点力などに見ることができる。
アルビレックス新潟シンガポールの監督時代での多くのタイトルの獲得や連覇などの実績は、だてではなかったのだ。
今後、さらなる経験によって、名将の地位を築けるかもしれない、と思ったりもした。
とにかく、吉永監督のこのセレモニーのあいさつで、選手たちへの信頼と期待を感じた。
可能なら、シーズン当初から1シーズンを通してのチームづくりを見てみたかったなと、改めて思ったのであった。
監督だけでなく、去り行く選手たちのあいさつもまた、感動的であった。(つづく)