ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

読後さわやか「仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ」(川上徹也著;ポプラ社)

2023-11-30 20:16:40 | 読む

読後さわやか、という言葉がぴったりの小説だった。

小説というが、実話がかなりの部分、入り込んでいる。

真実だからこそ、話が現実味をもって、主人公の活躍が生き生きと描かれることにつながっている。

 

主人公は、東京に生まれ育ち、中学からエスカレーターで東京の私立大学を卒業したばかりの若い女の子、大森理香。

なんとなく受けた大手出版取次「大販」に就職したが、いきなり縁もゆかりもない大阪勤務を命じられる。

関西弁も、関西風の人間関係も大の苦手で、失敗も冒した理香が、上司に連れていかれたのは、尼崎のある小さな書店。

「書店のオバチャン」と出会う。

この、町の小さな書店のオバちゃんとの出会い、話を聞いたことをきっかけに、理香の仕事と人生への考え方が少しずつ変わり、社会人として、職業人として成長していく。

 

この尼崎の小さな本屋のオバチャンは、実際に存在している方。

ストーリーの中で、オバチャンが自ら主人公理香に話すページは、「エピソード」としてグレーに彩られていて、何ページか続く。

初めに語られているエピソードが、本屋なのに本屋しながら傘を250本売った話。

それっていったい、どういうこと!?
と、まずは驚いた。

それ以降、エピソードのページは、オバチャンの語りがどれも楽しかった。

全体で、エピソードは、№8まであった。

それがすべてオバチャンの実体験に基づく実話なのだ。

押し付けがましくなく、聞いていて(正確には読んでいて)心地よい話ばかりであった。

それは、主人公だけでなく、読む私もそうであった。

主人公理香は、オバチャンの話を聞くたびに元気を出して、仕事に対する姿勢も前向きになっていくのだった。

 

「実在する書店をモデルにした感動のノンフィクション&ノベル」と書いてあったが、本当にそのとおりだった。

生きていくうえで、仕事をしていくうえで、何が大切かを教えてくれた。

仕事をする上でかかわっている方々はたくさんいる。

そういう方々に対して「誠意」や「真心」をもって取り組むこと。

そういう方々との一つ一つのつながりを大切にしていくこと。

自分が現職時代に大切にしてきたことと重なって、オバチャンの話や主人公の行動に、うなずきながら読んでいた。

 

尼崎の小さな本屋のオバチャンは、尼崎市「小林書店」の小林由美子さん。

今も健在である。

インターネットで検索して、いくつかのぞいてみても楽しかった。

その後も相変わらず元気に活躍しているのが分かって、うれしく感じた。

 

小説の主人公の成長も、小林さんの生き方も、とても素敵だった。

読んでいて、爽やかな風を感じた一冊だった。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする