著者の稲垣栄洋氏の植物本は、面白い。
以前ここで紹介した「雑草キャラクター図鑑」は、楽しかった。
今回見かけたこの「子どもと楽しむ草花のひみつ」(稲垣栄洋著;エクスナレッジ)は、「子どもと楽しむ」と書いてあった。
なるほど、中のページをめくると、イラストやコママンガなどかわいい絵が豊富だ。
おまけに、文章が分かりやすいうえに、漢字にはルビがふってある。
読む前から親子で楽しんで読んでほしいという工夫がいっぱいだと思える本だった。
読んでみると、1つの植物をあげながら、その植物の秘密を紹介する構成となっていた。
草花遊びに関して書いてあるページもあった。
シロツメクサの冠作りやオオバコでの引き比べなど、草花を使っての遊び方なども載っていた。
子どもも楽しいし、大人にとっても童心に帰る懐かしさがあった。
だが、この本の本当のよさは、親にとってとてもよい家庭教育本になっている、 ということだった。
その草花の秘密と子育ての大切なポイントを関連付けて紹介しているのだが、説得力があった。
例えば、このイノコヅチ。
「早く大人になるということ」がテーマ。
イノコヅチの葉には成長を促進する作用があるのだが、実は、幼虫をさっさと成虫にして自らの葉が食われるのを少なくしようとするのだとか。
だから、イノコヅチの葉で育った成虫は、他より小さくなってしまうのだそうだ。
ことほどさように、早く大人になることばかり求めていると、子ども時代に必要な大切な経験や素養が足りないままの中途半端な人間になりかねない、というようなことが述べられていた。
また、上方向ではなく、横に伸びていくコニシキソウと関連して、「それぞれの伸び方」をテーマに、子どもに個性があることを言っていた。
このように、様々な草花の個性同様に、一人一人の子どもに多様性があり、それを大切にして子育てすることが大事だよね、と著者は示唆している。
いや、明言している。
大人が勝手に決めつけた価値観を押し付けたり選択肢を与えなかったりしてはいけないよ、と教えてくれている。
好きだな、こういう考え方。
個々の草花の特性も楽しめたし、子育ての本としても楽しめた。
この本、気に入った!