これから楽しむのは、ヴィルヘルム・ケンプによる「ゴルトベルク変奏曲」(ポリグラム株式会社 POCG-90104)です。これをはじめてきいたときに驚かされたのが、装飾のかなりがないということ。前打音のないアリアはさらさらと流れるようで、ききなれない旋律に衝撃が走ります。これがケンプの解釈なのか、それとも使用している楽譜(たしかにヨーゼフ・ラインベルガー編もアリアの前打音がありません)のとおりなのか、わかりかねるところですが、すべての装飾が無視されているというわけではなく、装飾記号は取捨選択しているようです。そうしためずらしさをのぞけば、これはなかなか楽しめるバッハで、ピアノ美もじゅうぶんです。録音は1969年と半世紀もまえですが、古さはあまり感じさせません。