さきほど予告したとおり、YouTube - Broadcast Yourselfにアップロードされている「ヨハネ受難曲」の感想です。今朝ちょっと早起きして鑑賞したのは、ガーディナーによるバッハの「ヨハネ受難曲」で、おそらく、2008年(8月24日)のプロムスで演奏されたものです(演奏者などについてはBBC - Proms - 24 August 2008でどうぞ)。
このガーディナー指揮、イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、モンテヴェルディ合唱団による「ヨハネ受難曲」、まさに圧倒される演奏です。おどろくほどの推進力で、音楽を怒涛のようにすすめ、まるで大河が滝に流れこんでいくような感じ。貧弱な画と音で鑑賞していてもそうなのですから、じっさいに会場できいたら、どんなことになるやら。
しかし、いっぽう「あっけない」と感じてしまう演奏です。来日時のベートーヴェンでも感じたのですが、とにかくあっというまにおわってしまう感じなのです。その感じかたというのは、熱演ゆえに時がたつのが早いというのではなく、「もうおわってしまった」というもの。時間を歪める魔力があるのではないかというぐらい、おわってしまうのが早いのです。
ガーディナーがアルヒーフに録音しはじめたころから、ガーディナーは古楽のカラヤン、だと思っていたのですが、最近、ますます、その感が強くなってきました。ロイヤル・アルバート・ホールでの演奏は、まさにガーディナー劇場とでもいうべきもので、極論すれば、「ヨハネ受難曲」は自己表現の素材に過ぎなくなってしまっているような。
編成が大きめなのは、会場の問題もあるでしょうが、たとえば第1曲(以下番号は新全集)などは、アルヒーフでの録音(ARCHIV PRODUKTION 419 324-2)にくらべてほぼ1分も速くなっています。また、ダイナミクスの振幅も大きくなり(これも会場ゆえの表現かもしれませんが)、第40曲(終曲)のコラールもおどろくほど劇的です。
きいてみて、まぎれもなく秀演であることはたしかなのですが、これでいいのか、という疑問がわいてくることもたしか。すぐれた演奏ながらも、個人的な趣味からはずいぶん遠ざかったというのが、この「ヨハネ受難曲」の印象です。
[追記]記事末に掲載していましたYouTubeの映像へのリンクは、リンク切れとなったため削除しました。