『バロック音楽を読み解く252のキーワード ア・カペッラからサルスエラまで』は、音楽之友社から発刊(2012年)された「バロック音楽に関係する基本的な用語の解説集」です。著者はシルヴィ・ブイスー、訳者は小穴晶子で、ともにフランス・バロック音楽の研究者。原書はとうぜんながら、フランスの読者にむけられており、やはりフランス・バロック音楽関係の用語に精彩があります。
「エール」などは関連用語として、「愛のエール」「イタリアのエール」「エール・ド・クール」「酒のエール」「宗教的なエール」「真面目なエール」が項目としてあげられています(原書はアルファベット順でしょうから、これらがまとまっているはずですが、日本語は50音順なのでバラバラになっているのはざんねんです)。項目の解説では音楽の実例が示されていて、その気になれば音としてきくことも可能です。
「エール」のほかにもバッハをきくさいに有用な解説もあり、一例として「舞曲」をあげることができます。この項目ではさまざまな舞曲の拍の表示、テンポと演奏法、構造、リズムの性格、時代、背景が一覧表にまとめられており、バッハをきくうえで、とても役にたつかと思います。なお、訳者は「最初から最後まで通読する人は少ないだろう」と述べていますが、この事典、通読してもけっこう楽しめます。