これからきくのは、小糸恵のオルガンで、ニ長調のプレリュードとフーガ(BWV532)。このプレリュードとフーガは、2018年録音の「Back to Bach」に収録されたもので、「若きバッハの代表作のひとつ」(『バッハ事典』)です。湧き上がるようにはじまるプレリュードは、若々しく勢いがあります。フーガは、めまぐるしく旋回をくり返すような主題からなり、こちらも勢いを感じさせます。
キレのあるアーティキュレーション、冴え冴えとしたレジストレーションなど、じつにすばらしい演奏をきかせてくれる小糸は、京都生まれのオルガン奏者。もはや日本の奏者というより、スイスの奏者といったほうがしっくりくるのですが、知名度のほうは日本ではなぜかまだまだです。ケルンでラインハルト・ゲーベルにバロック音楽を学んだようで、演奏をきくととなるほどと思わせるところがありますね。
ここで小糸が弾くのは、アルプ・シュニットガーが1691年から1692年にかけて建造した、フローニンゲン(オランダ)のマルティニ教会のオルガン(1983年から1984年にかけて修復)。なお、「Back to Bach」の収録曲中、未聴分の9曲(いずれもコラールにもとづく曲)は、またの機会に楽しむことにします。
CD : 19075863432(deutsche harmonia mundi)