2019年の聖金曜日にきくのは、ジョルディ・サヴァールたちによる「マルコ受難曲」(BWV247)です。1731年3月23日に初演された「マルコ受難曲」は、ピカンダーの台本(1732年出版の『まじめな詩・諧謔的な詩・風刺的な詩』第3部所収)のみ伝承され、バッハの音楽はすべて失われました。したがって、その上演にさいしては、音楽を再構成する必要があります。再構成の試みはすでに多数おこなわれており、このブログでもトン・コープマン、サイモン・ヘイズの再構成にもとづく録音をきいています。
これからきくサヴァールたちの「マルコ受難曲」は、2008年、サンクトペテルブルクで発見されたピカンダーによる印刷歌詞本によっています。これは1744年3月27日に再演されたさいのもので、1731年初演稿とくらべるとアリアが2曲追加されるなど、バッハの改訂の手がくわえられています。この再演稿による再構成において、その原則をサヴァールは解説で簡潔に説明しています。
たとえば、再構成にあたってほかの作曲家の曲をパスティッチョのようにもちいたり、また新規に作曲したりすることを回避。つまり、バッハの既存曲を最大限利用しての再構成ということです。そのため、じっさいに再構成された音楽をきき進めていくと、聖句の部分も、どこかできいたことがある音楽(「マタイ受難曲」や「ヨハネ受難曲など)で埋めつくされています。
録音に参加しているのは、コンセール・デ・ナシオン、ラ・カペラ・レイアル・ディ・カタルーニャというサヴァール手兵の団体と独奏者たち。ただし、合唱のソプラノとアルト声部は、ヴェウ(コル・インファンティリ・アミーチ・デ・ラ・ウニオ)の少女たちの若い声によっています。録音は、2018年3月26日、ヴェルサイユ宮殿王立礼拝堂でのライブ収録です。
CD : AVSA 9931(ALIA VOX)