20世紀後半の、もっともすぐれたバッハ音楽(だけではないですが)の伝道者であったレオンハルト。求道者というか賢者というか、そうふう風貌もあって、禁欲的な印象をうけますが、音楽そのものは必ずしも禁欲的ではなく、外形的な派手さはなくても、秘めた情熱を感じさせるものでした。もちろん、華麗な音楽では、演奏も華麗そのものでした。演奏会や録音で感動させられ、いろいろ考えさせられもしました。
訃報をふれたとき(17日だったか18日だったかTelegraphでぐうぜんにも。亡くなったのは1月16日)、なぜか、まっさきに思いうかんだのがジョスカンの「御身のみ、奇蹟をなす者」(先日はこれをききながらレオンハルトを偲びました。記事は「ジョスカン・デ・プレ『御身のみ、奇蹟をなす者』」)。レオンハルトゆえになしえたことを思うとき、ジョスカンのモテトゥスとかさなってしまったのです。レオンハルトは苦笑するでしょうね。
昨年の引退表明からわずか一月で亡くなるとは思ってもみなかったので、訃報を読んだときはちょっと信じられないような(レオンハルトは死を予期していたかもしれません)。しばし呆然としたあとにうかんだのは、ひとつの時代がおわった、という感慨。もちろん、弟子たちや、師弟関係はなくても心の師として敬愛していた音楽家をとおして、これからもなお、影響をあたえ続けていくのでしょうが……。