これからきくのは、ウィンサム・エヴァンスのチェンバロ編曲・演奏で、無伴奏チェロ組曲第6番(BWV1012)です。無伴奏チェロ組曲のチェンバロ編曲版というと、ルトガー・レミーやグスタフ・レオンハルトの録音があり、それぞれおもしろくきくことができます。エヴァンスには、1995年録音の無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータのチェンバロ編曲版もあるのですが、それとくらべると、無伴奏チェロ組曲は困惑させられるところが多々ありました。無伴奏ヴァイオリンで感じられたスマートさが、無伴奏チェロのほうでは後退し、ギクシャクした感じなのです。無伴奏チェロの録音年ははっきりしないのですが、2016年をさほどさかのぼることのない年代だと思われるので、エヴァンスが70歳のころの録音と推測されます。無伴奏ヴァイオリンの録音時は53歳でしたので、2者の録音の変化は、失礼ながら加齢によるものなのかもしれません。もちろん、明瞭な意図と、たしかな技術による録音なのかもしれませんが、個人的には評価に困る録音のひとつです。なお、ここできく第6番の編曲にあたっては、原曲のニ長調からハ長調に移調されています。
CD : 481 2901(ABC Classics)