昨夜の日付変更直前から、とちゅう中断をはさみ未明までかかりきいた「クリスマス・オラトリオ」。四半世紀まえの制作なので、音も絵も鮮明とはいえませんが、アーノンクールの指揮ぶりなど、みどころ、ききどころが多彩です。いまはあまりみられなくなった、ソロ、合唱がすべて男声という演奏もそのひとつで、とくにテルツ少年合唱団の4人のソリストたちは、シュライヤーやホルといった名歌手たちを食う歌唱をみせています。
テルツ少年合唱団の美質は、とにかくディクションの美しさにあります。ソロでも合唱でも、歌詞が明瞭で、これは創設者ゲルハルト・シュミット=ガーデン(クルト・トーマスの弟子)の指導のたまものといえるかもしれません。シュミット=ガーデンがみずから指揮した「クリスマス・オラトリオ」でもそうだったのですが、楽譜と歌詞の整合性がとれないとき、楽譜にまかせてしまう指揮者が多いなか、シュミット=ガーデンは歌詞を優先させます。
一例が第6部の最初の合唱(第54曲)。Herr(8分音符), wenn(4分音符) die(8分音符) stol(4分音符)-zen(8分音符)という歌いだしですが、よくあるのが、「ヘル・ヴェーン・ディー・シュトールツェン」と歌わせる指揮者。シュミット=ガーデンはこれを、「ヘル・ヴェン・ディー・シュトールツェン」と歌わせます。アーノンクールのもとでは、成人はややのばしていますが、少年たちはシュミット=ガーデンの指導どおり、「ヴェン」と読みのとおりに歌っています。
と、なんだか些末な話しになってしまいましたが、ほんらいは、この映像作品、挿入されるプレゼピオ(降誕の情景を人形で再現した飾りつけ)などを賞でながら、心をおおらかにして楽しむ作品なのでしょう。