これからきくのは嬰ヘ短調のトッカータ(BWV910)。鈴木雅明が2018年に録音した「Bach Toccatas」には、7曲のトッカータが収録されており、このBWV910はそのおわりにおかれています。BWV910はおおきく4部分からなり、そのはじまりはまさにトッカータというべき鮮烈さ。これに勢いのあるフーガ、焦燥感のあるプレスト・エ・スタッカート、そしてトッカータ風のパッセージが挿入されるフーガへとつながっていきます。終曲のフーガはのちのバッハにはない破格な魅力があります。鈴木が若いころだと、もっと前のめりに弾いたと思うのですが、そこは年輪ということなのでしょう。もっとも、師のトン・コープマンは、勢いのある曲だといまでも前のめりですが。
CD : BIS-2221(BIS Records)