今週後半はイタリアのオルガン奏者、ロレンツォ・ギエルミが2023年に録音した「Bach Fragments」から、オルガン自由曲をきいてきました(同アルバムはバッハの断片オルガン曲をすべて収録しています)。今日きくのはハ短調のファンタジーとフーガ(BWV53)。同曲はヨーハン・トビーアスとヨーハン・ルートヴィヒのクレープス父子の筆写譜で伝承されており、いちおう完成されたもので断片ではありません。ただし、フーガのおわりの部分はヨーハン・ルートヴィヒの手が入っているとみられています。
フーガでのバッハの企図について、ギエルミは2重フーガの可能性を指摘していますが、筆写譜はフーガのはじめの部分をダ・カーポしておわっており、ギエルミはそれにもとづき演奏しています。できれば、ギエルミによる2重フーガ版をきたいところですが、父子ともにバッハの弟子であった同時代人の筆写譜がある以上、補完行為を競うことは不遜として回避したのかもしれません。弟子によって完成されていながらも、なんだかんだで補筆版の多いモーツァルトの「レクイエム」は、ちょっと不遜なのではと思ってしまいます。
CD : PAS 1140(Passacaille)