今週レギュラーできいている、フランチェスコ・コルティのチェンバロをはなれ、しばしのあいだ楽しむのはコレクティフ・トリトーネの「バック・トウ・バッハ」(PARATY 72019)です。コレクティフ・トリトーネは、ピアノと編曲のリュシー・ド・サン・ヴァンサン、ソプラノのリュシー・シャルタン、サックスのジョアン・ドリーセ、ベースのミハイル・イワノフ、ドラムスのジョアン・テロル・アミーゴによるグループ。時代、ジャンルを超えたクロスオーバーな音楽が魅力で、このCDではバッハがおもしろく料理されています。
たとえば、CD第1曲の「Prélude 999」は、リュートのためのハ短調のプレリュード(BWV999)にもとづく編曲。切迫したピアノ・ソロにはじまり、やがてシャルタンがスキャットで入ってきます。とちゅう、「心と口と行いと生きざまもて(Herz und Mund und Tat und Leben)」が歌われ、前後との鋭いコントラストがじつに効果的です。ほかの曲は主にカンタータや受難曲にもとづく編曲で、あえていうなら、スウィングル・シンガーズとジャック・ルーシェ・トリオを新しい感覚で混合したような感じがあります。録音は2019年です。