今週きいていくのは、コリン・ティルニーの「Bach: Partitas for Harpsichord」です。このアルバムは2019年5月に録音されており、1933年10月生まれのティルニーは録音時85歳ということに。ティルニーはロンドン生まれで、アーノルド・ドルメッチ(1858年生-1940年没)の弟子メアリー・ポッツ(1905年生-1982年没)にチェンバロを学び、のちにグスタフ・レオンハルトにも学ぶ機会があったようです。1979年にはトロント(カナダ)に移住。さらに2002年には同国ビクトリアに移っており、この録音も当地でおこなわれています。
録音での使用楽器は、クリスティアン・ツェルの1728年製にもとづく、コリン・ブースの1984年製チェンバロ。アルバムは第1番(BWV825)から番号順に収録されており、ここのその順に楽しみます。演奏は巧緻ながら、技巧的だと感じさせないさりげなさ。これはティルニーの近年の境地を示しているのかもしれません。また、響きもじつに柔らかです。なお、第1番はケーテン侯レーオポルトの長子誕生祝いとして献呈されており、かつての主人、ケーテン侯への「音楽の捧げもの」ということになります。
CD : CD-1301(Music & Arts)