今朝、九時前、名瀬港~観光船バース入り口道路付近。
作業服姿のおじさんが釣り糸を垂れている。短い釣り竿の先は海面に向いている。
クーラーボックスとか、えさとか、仕掛け箱とか、腰掛る床几とか全くない。服装からして普通の”釣り人”らしくない。
しかし名瀬か名人の雰囲気が(島の名人は見かけじゃわからないのだ)。
そこへもう一人のおじさんもやって来た。同じような作業服を着ている。
そして三人目の散歩のおじさん、最年長。(それはカメラマンの私です。)
名人の釣り糸の先には一センチくらいの赤い玉が見える。
海面に七、八匹の黒い魚が寄り添ってゆらゆらと横に泳いでいるのが見える。
名人が釣り糸をしゃくりあげると、ぱっと散ったかに見えたが再びあつまった。
「あげ」と言って再び赤い玉を投入する名人。
どうやら赤い玉の先は三つまたのハリになっている。餌はない。
(これはフツウの釣りではないな・・)
と、その時だった。名人が竿をしゃくりあげると、海面に真っ黒な墨が広まった。
「たこ、あ、いやイカですか?」。
無言の名人、リールを巻きあげる。
カメラを向けると獲物を持ち上げポーズをとってくれた。
それを見ていたもうひとりのおじさん、あわてて道具を取りに行く様子。
海面にカメラを向けると
「もういないはずよ」と名人は言って「ふふ、刺身じゃ」といいながら
右手に竿、左手で糸の先の針にかかったままの獲物を持ちながら車へ戻る。笑顔の小走りだ。
海面には黒い墨がひろがている。
名人、一度自宅に戻り、奥さんに冷蔵庫に獲物をしまっておくよう命じ、ふたたび職場へと向かうのだろうか。
イカはお昼ごはんだろうか、それとも今夜の酒の肴( シューけぃ (名詞) 酒の肴。時によりいろいろな物を酒の肴とした。奄美方言デーテベース)になるのか。
それにしても名人、ここにイカがいることをどうやって知ったのだろうか。
と考えながら散歩に戻る。