『奄美八月踊り唄の宇宙』 (南島叢書 94) [単行本]
清 眞人 (著), 富島 甫 (著)
図書館 郷土コーナー 7月の新着図書
これは読了から、少し時間が経ってしまいました。(やはり感想は読了直後に書くのがよさそうだ。
後日若干追記したいコメント欄に追記)
二人の著者の出会いそのものが、タイトルの『奄美八月踊り唄の宇宙』のように思える。
人生をかけて八月踊りとその唄を保存してきた島在住の著者(90歳)と、
もう一人の著者の哲学者が出会う。
大学のゼミの学生達を連れて訪れた父方の祖父の出身地(奄美瀬戸内町)での出会い。
今を取り逃がしたら二度とできないという思いで、ふたりは本書を作る。
軍事訓練に明け暮れながらも命がけで古仁屋の八月踊りとその唄を残そうと努めてきた90歳の著者の記録。
その「記録への意思」に感銘をうけ、何度も彼の元を訪れた教授が、歌詞に徹底した民俗学的、文学的考察を付ける。
二人の「掛け合い」は、類書に例をみないほど徹底されていて、「対象」ではない「主体」としての八月踊りとそれを担ってきた奄美人が躍動感のある文章でつづられている。とても知的な刺激を受けたる。
いままでの正確な対訳だけでは、今ひとつわからなかったシマ唄のすごさが浮き彫りになる。シマ唄に特に興味のない人でも十分刺激的だとう思う。
対訳以外の八月踊り唄論 探訪記にも多くの頁が割かれ、読ませてくれる。
奄美八月唄はいかに本州(ヤマト)の近世民謡と異なるか~~赤松啓介と折口信夫を手掛かりに p161
amazonのページには、まだ画像も、内容紹介も、カスタマーブックレビューもないのだが、タイトルで検索すれば、著者のウェブサイトや出版社の紹介記事など、立ち読みのできるページもあり、わりと詳しく読むことができる。
八月踊りでyoutube検索しても最新の映像を見ることができる。
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古代日本でおこなわれていたといわれる「歌垣」は本州ヤマトでは既に平安朝末期には姿を消してしまったといわれるが奄美全島では、それが昭和三八年頃までは、正月にも勝る秋の豊年祭の集落挙げての中心行事として生きていたのだ。
奄美の八月踊りと唄が、いまでも私たち現代人のこころを強く打ち、私たちの生活に欠けているものと痛烈に教えてくれる力をもっているのはなぜか。
薩摩からも、そして琉球沖縄にもない、地理的に権力から遠く離れた奄美の比類なき八月踊りの伝統。
奄美群島全体が世界自然遺産に登録される機運が高まるなか、
万葉時代の「歌垣」=相聞歌の魂をそのままに永らく生きつづけてきた奄美八月踊り唄の伝統は、奄美の自然と一体なのではないだろうか、と考えさせる。
amazon 登録情報
単行本: 250ページ
出版社: 海風社 (2013/06)
ISBN-10: 4876160244
ISBN-13: 978-4876160242
発売日: 2013/06
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奄美八月踊り唄の宇宙 (南島叢書 94) 価格:¥ 2,100(税込) 発売日:2013-06 |