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続・続 西郷どん第25回「生かされた命」 芥川龍之介 歴史感 昇曙夢 『奄美大島と大西郷』 安達 征一郎の西郷本

2018年07月07日 | 歴史 民俗

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きのうの記事の連想のつづき

西郷隆盛論は、福沢諭吉 内村鑑三 頭山満三 島由紀夫 江藤淳 橋川文三 司馬遼太郎など数多くあるが、

西郷論といえるかどうか芥川龍之介の短編にも不死伝説めいた『西郷隆盛』(大正6,7年)がある。
この作品は検索して、青空文庫で読める。

芥川の作品にはよく列車の中が登場するが、この作品も
列車に西郷隆盛そっくりの人物が乗っているという話だ。
維新史を研究する学生にその人物の寝ている姿を見せた老紳士が
最後にこういう。

ネタバレになるといけないので少しだけコピーすると

老紳士は「嘘のない歴史なぞを書こうとは思わない」中略「美しい歴史さえ書ければ、それで満足する」と言うのだった。

この小説は歴史好き、西郷好きというより芥川ファンに受けそうだが、芥川龍之介の歴史感、芸術感が表れている。研究者の間でも評価が高いという。

「嘘のない歴史なぞを書こうとは思わない」というところで、フェイクてんこ盛りとかいわれるドラマ「西郷(せご)どん」を思い出した、という次第である。

「美しい歴史」とは?、天才のいうことなのでちょっと理解には苦しむところだが、
(フェイクでない)史実とは何か?ということもまた簡単には答えられない。

歴史は勝者の側によって書かれると言われるが、勝者の中でもエリートが書くのだろう。
それに証拠(おもに文書)がなければ通説にはならない。
たとえば、西郷が終生いたいていたと思われる、斉興派による「斉彬毒殺(置毒)」説も
確たる証拠など残ろうはずもないのである。海音寺潮五郎が支持しても通説というわけにはならない。
それいがいにも通説として残るには、様々な要因も考えられる。

あ、話が少しそれたところで、実は、西郷論は、われらが奄美大島の昇曙夢(のぼり しょむ、1878年7月17日 - 1958年11月22日、ロシア文学者。正教会の信徒 晩年には奄美群島の本土復帰運動に尽力したwiwi)も書いている。

『奄美大島と大西郷』 春陽堂, 1927 ほか

そして昇曙夢(のぼり しょむ)が芥川龍之介におおきな影響を与えたということは、あまりにも知られていない。

この事実も「歴史」を考えるうえでも考えてもよいことだろう。
歴史に通説として残るには、様々な要因も考えられること例として。

昇曙夢 芥川 で検索すると、『ロシア文学者 昇曙夢&芥川龍之介論考』 単行本 – 2001/11
がヒットする。これは名瀬の図書館でも読める。

amazon 内容(「BOOK」データベースより)
ロシア文学が近代日本文学に重要な役割を果した事は学界の定説である。二葉亭四迷なきあと、明治末から大正時代には武者小路実篤が語るように「昇曙夢」の時代が確かにあったのである。宇野浩二や広津和郎・芥川龍之介等、大正・昭和の作家達に芸術家魂を吹き込み深甚な影響を与えている。更に魯迅も曙夢の著・訳書を購入し、重訳している。本書は奄美郷党は勿論、国文学者・ロシア文学者・比較文学者・スラヴ史研究者必携の基本図書となるであろう

 

関連このブログ 『ロシア文学者昇曙夢&芥川竜之介論考』和田芳英/著と『原郷の奄美―ロシア文学者 昇曙夢とその時代』

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他に奄美大島生まれで小説家の安達 征一郎(あだち せいいちろう、1926年 - 2015年、日本の小説家、児童文学作家)の西郷本もあります。
私はまだ読んでいませんが、これらは図書館にもありますし、最近名瀬の書店の西郷どんコーナーでみかけました。

『私本西郷隆盛と千代香 沖永良部島編』海風社 南島叢書 1998
『私本西郷隆盛と千代香 薩長同盟編』海風社 南島叢書 1999
『私本西郷隆盛と千代香 鳥羽伏見の戦さ編』海風社 南島叢書 2001
『私本西郷隆盛と千代香 江戸無血開城編』海風社 南島叢書 2002

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西郷どんネタ、続く。かも