何処も今年は紅葉が遅いだろうと、先を急いでいたので、石山寺にお参りするのを、もっとゆっくりした時にと、瀬田川を右に見て通り過ぎようとしていた。
築地塀からせり出している楓と公孫樹の木の色づきに、目が留まって、行き過ぎた場所の無料駐車場に空きを見つけて、車を置いて門前まで歩いて戻った。
境内の参詣道の両脇に、源氏物語灯籠が一帖から順に並んでいる。
その帖の場面が描かれているのを観ながら散策するのも楽しい。
きっと夜には、紅葉のライトアップと共に、足元には源氏絵の世界が優雅に広がってひときわ境内を美しくするのだろうと想像する。
ユルキャラの名前は知らないが、お公家さんの衣装の紫が訪れる人を出迎えている。
受付を通って岩山の横の石段を登るごとに、ここはまさに「錦秋」の景観の中にいる風情をじっくり楽しみながら歩むことができる。
紅葉の木を見つけては切り撮ってきた今までと違って、境内の紅葉にすっかり染まってしまいそうである。
石山寺で源氏物語の構想を練ってあの長編を書いたと言われている、源氏の間が本堂の横にありそこで筆を持つ紫式部の人形が、少し憂いを含んだ表情で語りかけているように見える。
周りの紅葉が、朱色ではなく、いくらか紫がかっているのが、内掛けとと同じような日本画的な色調で面白い。
気温が低くきりっとした気持ちで散策する境内の何処も、この秋の最後を全山紅葉の自然の装飾が素晴らしい。
足元の落ち葉も、空に向かう細い枝先も、水面に映る木の影さえ、みんなみんな美しい。
「帰り道」と書かれた石段を紅葉の下をくぐるように降りていった。
通り過ぎないで、観音様にお参りできたことが、この美しい時のご縁をいただけたようで嬉しい1日の始まりだった。
20日・21日 19108歩